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【セミナーレポート】TURNING POINT2023<vol.2>”戦略的副業”に挑む日本郵政グループ。半年を経て見えてきた成果とは?

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個人と企業が共に成長できる「キャリア副業」の実現を目指してきたlotsfulは、サービスローンチから4周年を迎えました。これを記念して、時代の転換点に挑む先駆者たちとトークセッションを行うオンラインセミナー「TURNING POINT2023 〜副業活用の先駆者に学ぶ、新時代の人材戦略〜」を全4回開催。副業のこれからのあり方はもちろん、社内のイノベーション推進やキャリア開発、人材育成・活用といった幅広いテーマを取り上げていきます。

7月12日に開催した2回目のテーマは、「日本郵政グループ初の副業募集から半年~人事部が語る、導入後の振り返りと今後の展望〜」です。日本郵政株式会社 人事部の安瀬龍一氏と佐藤和記氏をパネルリストに招き、モデレーターのlotsful・富田が、日本郵政グループが取り組む副業制度についてお聞きしました。

日本郵政グループでは、社員による社外副業、外部の副業人材の活用などを推進する「戦略的副業」を2022年よりスタート。この制度によって、どのような気づきや成果が生まれたのでしょうか?本記事ではこのセミナーの模様を、ダイジェストでお届けします。

【画面右上】 登壇者/日本郵政株式会社 人事部 部付部長 安瀬 龍一 氏
1991年旧郵政省入省、郵政民営化を経て、2007年から日本郵政株式会社に所属。主に人事・労務関係業務に従事し、日本郵政グループ全体の人事諸制度の改善・見直しを担当。あわせて、現在、人的資本経営の推進や働き方の見直しを推進、職場風土改革と社員自らのキャリア形成を後押しする「戦略的副業」をグループ全体に展開している。

【画面右下】 登壇者/日本郵政株式会社 人事部 人事企画担当 グループリーダー 佐藤 和記 氏
2010年に日本郵政株式会社に新卒入社。連結決算業務を通算で約5年担当。その他、上場準備、中期経営計画作成業務等のプロジェクトにも従事。2018年に人事部(現職)に異動。人事評価、人事制度の企画・立案、ダイバーシティ推進、非財務情報開示を担当。「戦略的副業」の日本郵政グループでの試行実施に向けた実務を担当しつつ、自身も社外副業を経験。

【画面左上】 モデレーター/パーソルイノベーション株式会社『lotsful』 Account Consultant 富田 太樹モデレーター
大手不動産上場企業へ新卒入社。個人顧客に対する仲介営業に従事。その後、HR系スタートアップにて両面型コンサルタント(企業/個人)として従事し、直近では、web系スタートアップで、営業組織の立ち上げ・部門責任者を兼任。lotsfulでは、法人のプロジェクトサポートを幅広く実施。

【画面左下】 司会/パーソルイノベーション株式会社『lotsful』 Account Consultant 能代 峻佑
看護師専門の人材派遣会社へ新卒入社。病院やクリニック、介護施設を中心とした医療機関に対しての法人営業に従事。東京、横浜、名古屋の3拠点で新規営業成績1位を達成し、最年少かつ新卒初のリーダーに昇格。lotsfulでは、法人のプロジェクトサポートを幅広く実施。

約1000名が参加した説明会を通し、副業活用のメリットを伝える

lotsful・富田

はじめに、日本郵政グループが「戦略的副業」をスタートさせたきっかけを教えてください。

日本郵政・安瀬氏

日本郵政グループは事業の転換期を迎え、これからは社員だけでなく、積極的に外部の力も借りながら新しいサービスを作っていこうと考えています。現状、郵便局におけるサービス改善は順次進められていますが、新しいサービスの開発に関しては従来のやり方では厳しい。社内にイノベーションを起こすためにも、多様な人材のアイデアを必要としていました。

そこで、社員を副業人材として積極的に送り出し、外で経験したことを社内に還元してもらう。また、外部の副業人材を積極的に受け入れて、新しい発想や専門知識を得ていく。こうして人の出入りを多くし、多彩なアイデアを集め、会社の風土を盛り上げていくために「戦略的副業」をスタートさせました。

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lotsful・富田

社員が外で経験を積める機会を増やしながら、外部人材も積極的に活用していくわけですね。まずは、副業人材を受け入れる側としてのお話を聞きたいと思います。副業人材を受け入れるにあたって、苦労した点などはありましたか。

日本郵政・佐藤氏

昨年から副業人材の受け入れをしていますが、まずは社員に対して副業人材の活用の仕方を説明していきました。しかし、社員に理解してもらうのは、とても苦労しましたね。世の中的には副業は注目されていますが、いざ自分のチームに副業人材をアサインするとなると話は変わってきますので。

lotsful・富田

社員に理解してもらうために、社内で勉強会を複数回開催したと聞いています。

日本郵政・安瀬氏

そうですね。日本郵政グループの社員に向けて説明会を実施し、1000名ほどの社員が参加。そうした場で、副業人材を受け入れるメリットなどを伝えていきました。

lotsful・富田

実際に副業人材を受け入れてみて良かった点はどこにありましたか。

日本郵政・佐藤氏

本業でも活躍されている方からのアウトプットは、非常に役に立ちましたね。不安を持っていた部署からも、「副業人材はいいね」と言ってもらえましたから。最初の打ち合わせなどは探り探りな部分もあったようですが、プロジェクトが進むうちにそういったこともなくなっていきました。

lotsful・富田

副業人材を受け入れる部署との調整などはあったのですか。

日本郵政・佐藤氏

先ほどもお伝えした通り、副業人材を受け入れるプロジェクトは新しいサービスを作るなど、変革が必要なものになります。その実現のためには、副業人材の力が必要であることを周知しました。業務の切り離しは難しい部分もありましたが、そこは丁寧に興味持っていただいた部署へ説明していきました。

lotsful・能代

視聴者からも質問がきていますのでご紹介します。「副業人材とのコミュニケーションにおいて、気をつけた点などはありましたか?」という内容ですが、いかがでしょうか。

日本郵政・佐藤氏

社員とは毎日話しますが、副業人材の場合はオンラインでの週1回の定例ミーティングがメインになります。そのため、1週間で進捗したことはしっかり共有するようにコミュニケーションしました。それ以外は、メールベースでやり取りしていましたね。

採用のポイントは、「何を実現できる人材か」

lotsful・富田

lotsfulで日本郵政グループの副業人材を募集しました(※)。非常に多くの応募がありましたが、応募者のどのような点を見ながら採用を進めていったのですか。

※2022年11〜12月に、日本郵政・日本郵便・ゆうちょ銀行・かんぽ生命保険のグループ4社で副業募集を実施した。(募集は終了しています) https://lotsful.jp/specials/japanpost 

日本郵政・佐藤氏

あんなに多くの応募がくるとは実は思っていなかったのですが(笑)、採用を進めるにあたって人柄などの部分はバランス良く見させていただきました。その中でも注視したのが、その人の実績ですね。どういったアウトプットが出せるのか、何を実現できるのか、そこは面談で話してもらいました。

lotsful・富田

実際に10名ほどの副業人材を受け入れられましたが、ギャップなどは無かったのでしょうか?

日本郵政・佐藤氏

みなさん活躍しており、期待値とのギャップはありませんでしたね。選考の段階では「日本郵政グループの社内ルールなどにマッチするのか」という不安があったのですが、みなさん協調性があり、全体を見ながら判断してくれました。「教科書的にはこうだが、運用するならこう使った方がいい」など、実務的なアドバイスをもらえたのも助かりました。

lotsful・富田

やはり協調性は大事ですよね。反対に苦労した点などはありましたか。

日本郵政・佐藤氏

今回募集したのは3ヵ月間のプロジェクトだったのですが、「最終的にこうしたアウトプットを出す」といった、明確なゴールを決めておかないと厳しいなと実感しました。もちろん、伴走しながらゴールを決めていく場合もあると思いますが、今回に関しては期間が決まっていたので、何をゴールにするかは最初に決めておいた方がよかったですね。

lotsful・富田

副業人材とは具体的にはどのようなプロジェクトを進めていったのですか。

日本郵政・佐藤氏

郵便局を活用した新たなビジネスを検討する0→1の新規事業的なものもありましたが、他にも就業規則の改正業務といった、既存の運用をより良くしていくプロジェクトもお任せしました。

副業を経験し、”外”を知ることで視野が広がる

lotsful・富田

ここからは、日本郵政グループ社員の副業についてお話を聞いていきます。佐藤さんも副業人材として、外部の企業で業務を行ったと聞いています。

日本郵政・佐藤氏

日本郵政グループでは人事部に所属しているのですが、昨年アルムナイ関連の業務を担当しました。ちょうど副業募集の中にもアルムナイ立ち上げの案件があったので、経験を活かせると思い挑戦しました。社会人経験は14年ありますが、副業に取り組むのは初めてのことでしたね。

lotsful・富田

実際に副業に取り組んでみた感想を教えてください。

日本郵政・佐藤氏

最初は大変でしたね(笑)。ちょうど年度末の繁忙期と重なっていたので、本業との両立、どのように時間を作るかは苦労しました。同じチームの社員が本業で頑張っている間に、副業をしていいのかという葛藤は正直ありました。しかし副業は、日本郵政グループが推進していることであり、自分の能力開発のためだと、割り切って進めました。

lotsful・富田

副業に取り組んでみて良かった点についてもお聞かせください。

日本郵政・佐藤氏

本業だと社内ルールに沿って判断することが多々ありますが、副業はそういったしがらみがないため、自分がいいと思った考えを素直に伝えられることですね。自分の意見や能力を純粋に試すことができると感じました。

lotsful・富田

佐藤さんは副業人材を受け入れる側も、副業人材として働くことも経験しました。両方をやってみて感じたことはありますか。

日本郵政・佐藤氏

確実に視野が広がりました。長年同じ組織にいると、組織内の考え方が知らず知らず染み付いてしまうといいますか。外の目を入れたり、自分自身が外を見ることで、これまでとは違った視点や意見が生まれますね。

lotsful・能代

佐藤さんが副業人材として働いたことについての質問がきています。「副業をするにあたり、どんなスキルが有効か」という点に関してはどうお考えですか。

日本郵政・佐藤氏

いろいろな資格、いわゆるスキルといったものももちろん重要な要素ではありますが、本業で手掛けていたことや実際にどんなアウトプットが出せるのかをきちんと言語化することが、高い評価に結びつくと思います。

lotsful・能代

「地方在住者ですが、地方向けの副業募集もあるか」という質問もきています。

日本郵政・安瀬氏

郵便局は全国各地にありますので、将来的には地方をターゲットにした副業も検討していきたいと思っています。しかし、当面は新たなサービス作りを考えていく方向なので、本社での企画立ち上げなどでの副業人材活用を1年ほどは続けていく予定です。ただし、当社の副業に関しては、基本的にリモートでの対応になりますので、地方在住の方でもご参加いただけると思います。

lotsful・富田

ぜひ、次回の日本郵政グループの副業募集に期待していただければと思います。最後に、「戦略的副業」をスタートさせてみての感想や今後の取り組みについて教えてください。

日本郵政・安瀬氏

今回、約10名の副業人材を受け入れましたが、外部の知見を活かしながら、新しい発想を得ることができたと思っています。専門人材の仕事の進め方や、アプローチの仕方も学べましたし、社員のモチベーションアップ、キャリア開発においてもいい刺激になりました。今後も副業人材を積極的に受け入れていきたいですね。

日本郵政・佐藤氏

日本郵政グループで「戦略的副業」をさらに広げていきます。副業人材受け入れの成功体験を、もっと多くの社員に届けながら、副業が当たり前の組織にしていきます。

lotsful・富田

日本郵政グループの「戦略的副業」を、視聴者のみなさんもぜひ注目いただけたらと思います。本日はありがとうございました!

(編集・取材・文:眞田幸剛)

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