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人事ノウハウ

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嘱託社員とは?正社員やパートとの違い、5年ルールの特例と注意点を徹底解説

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「嘱託社員」は、多くの企業で活用されている雇用形態ですが、その定義が法律により明確に定められているわけではありません。一般的には、正社員とは異なる特定の条件のもと、有期の労働契約を結ぶ社員を指す呼称として広く用いられております。

とりわけ、定年退職後の従業員を再雇用する形態として「嘱託社員」の制度を導入する企業が多く存在し、これは高年齢者雇用安定法への対応という側面も備えております。

しかしながら、この「嘱託社員」の運用を法的な理解が不十分なまま実施すると、「無期転換ルール(5年ルール)」の適用や、「同一労働同一賃金」の原則への抵触など、重大な労務リスクを招くおそれがあります。

本記事では、人事労務の担当者が知っておくべき嘱託社員の基本的な特徴から、他の雇用形態との違い、企業側のメリット、そして最も重要な法的注意点について解説いたします。

嘱託社員とは?その主な特徴

嘱託社員は、法律上の用語ではなく、企業が独自に定める呼称です。法的には、契約社員やパートタイマーなどと同様に「有期契約労働者」に分類されます。

一般的に、嘱託社員が該当するのは以下の2つのケースが多いです。

1.定年退職後の再雇用者

最も典型的なケースです。正社員が定年(多くの場合は60歳)に達した後、引き続き雇用を希望する場合に、有期雇用契約(たとえば1年契約)を結び直し、嘱託社員として再雇用されます。

2.特定の専門業務に従事する専門家

弁護士、医師、コンサルタントなど、高度な専門知識や特殊なスキルを有する人材を、顧問やアドバイザーなどの特定業務のために有期契約で雇用する場合です。

本記事では、特に実務上の論点が多い前者、すなわち「定年後再雇用者」としての嘱託社員に焦点を当て、以下の内容を中心に解説いたします。

この場合の主な特徴は、以下のとおりです。

有期労働契約

契約期間は「1年間」とされることが多く、更新の可否および更新回数の上限は、個別契約や就業規則により定められています。

労働条件の変更

正社員時代とは異なる労働条件(給与体系、職務内容、責任の範囲、勤務日数・勤務時間など)が新たに設定されるのが一般的です。多くの場合、給与水準は引き下げられ、勤務日数や勤務時間が短縮されます。

嘱託社員と他の雇用形態との違い

嘱託社員の位置づけを正確に理解するためには、他の主要な雇用形態や契約形態との違いを明確に整理しておくことが不可欠です。

正社員(無期雇用労働者)との違い

正社員と嘱託社員の最大の違いは、「契約期間の定めの有無」にあります。

  嘱託社員(有期雇用) 正社員(無期雇用)
契約期間 定めあり(例:1年契約) 定めなし(原則、定年まで)
給与体系 年俸制や時給制など多様。定年再雇用の場合、正社員時より減額されることが多い。 主に月給制。昇給、賞与、退職金制度が整備されていることが一般的。
職務内容 専門業務や定型業務、後進の指導など、担当範囲が限定されることが多い。 基幹業務を含む広範な業務に従事。配置転換や昇進・昇格がある。
法的安定性 契約期間満了による雇止めの可能性がある。 労働契約法に基づき、解雇権の濫用は厳しく制限され、高い雇用安定性が確保される。

パートタイマーとの違い

嘱託社員とパートタイマーは、どちらも有期契約であるケースが多く、法的な区分が曖昧なことがあります。実務上では、「雇用の背景や目的」が異なる点で使い分けられることが一般的です。

  • 嘱託社員:定年後の再雇用や高度な専門性を背景として活用されることが多い。
  • パートタイマー:パートタイム・有期雇用労働法における短時間労働者を指し、正社員の所定労働時間よりも短い時間ではたらくことを主眼としている。

そのため、定年後に再雇用された嘱託社員が短時間勤務(例:週4日勤務)である場合、呼称は「嘱託社員」であっても、法律上は「短時間労働者(パートタイマー)」かつ「有期契約労働者」とされます。

業務委託(フリーランス)との違い

これは最も本質的な違いであり、絶対に混同すべきではありません。

嘱託社員は企業と「雇用契約」を結ぶ労働者です。一方、業務委託は「(準)委任契約」または「請負契約」を締結する事業者です。

  嘱託社員(雇用契約) 業務委託(委任・請負契約)
適用法規 労働基準法、労働契約法などが適用される。 民法などが適用され、労働法規は適用されない。
指揮命令権 使用者である企業に指揮命令権があり、業務遂行の方法や時間配分を指示できる。 企業に指揮命令権はなく、仕事の進め方は受託者に委ねられる。
社会保険 労災、雇用、健康、厚生年金の加入要件を満たす場合、企業が手続きと保険料負担を行う。 原則として企業に加入義務はなく、受託者本人が国民健康保険・国民年金に加入する。

企業が業務委託契約を締結しながら、実態として勤務時間や場所を拘束し、業務の進め方を細かく指示している場合、「偽装請負」とみなされ、労働基準法違反の重大なリスクが生じます。

企業が嘱託社員(定年後再雇用)を活用するメリット

企業が定年退職者を嘱託社員として再雇用することには、主に3つの大きなメリットがあります。

メリット①:経験豊富な人材のノウハウ活用と技術承継

最大のメリットは、長年培われた高度な専門知識やスキル、人脈、さらに暗黙知として組織に蓄積されてきたノウハウを企業内に留められる点です。

また、若手や中堅社員のメンターとしての役割や、技術・技能の承継を担ってもらうことで、組織全体の能力向上を図り、人材育成を円滑に進めることができます。

メリット②:高年齢者雇用安定法の遵守

高年齢者雇用安定法」(※)により、企業は希望する従業員全員を65歳まで雇用する義務を負っています(高年齢者雇用確保措置)。

この義務を果たすための最も一般的な方法が「継続雇用制度(再雇用制度)」の導入であり、嘱託社員制度は、当該措置の受け皿として重要な役割を果たします。

メリット③:人件費の最適化と柔軟な人員配置

正社員時代と同一の職務や責任のまま再雇用することは難しい場合もありますが、職務内容や責任の範囲を見直したうえで、正社員時代とは異なる給与体系(多くの場合は低い水準)で再契約することが一般的です。

これにより、企業は総額人件費を最適化しつつ、必要な労働力を確保できます。

※出典:e-GOV法令検索「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」

嘱託社員の「5年ルール」(無期転換ルール)と重要な特例

嘱託社員(有期契約労働者)の運用において、人事担当者が最も注意すべき法律の一つが、いわゆる「無期転換ルール(5年ルール)」です。

原則:無期転換ルールとは

労働契約法第18条(※1)に基づき、同一企業との間で有期労働契約が繰り返し更新されて通算5年を超えた場合、労働者から申し込みがあれば、企業は「期間の定めのない労働契約(無期雇用)」へ転換しなければなりません。

この規定は嘱託社員にも適用されます。たとえば、60歳で定年再雇用された嘱託社員が1年契約を5回更新し、通算5年を超えて6年目の契約を結ぶ前に「無期転換を希望する」と申し出た場合、企業はその申し出を拒めません。

定年後再雇用者の「特例」

しかし、この原則を定年退職者にそのまま適用すると、企業が65歳以降も本人が希望する限り無期雇用を継続せざるを得なくなり、柔軟な高年齢者雇用の運用が難しくなるおそれがあります。

そこで、「有期雇用特別措置法」(※2)により、5年ルールの特例が設けられています。

適切な雇用管理に関する計画を作成し、都道府県労働局長の認定を受けた事業主のもとで定年後に引き続き雇用される有期契約労働者(嘱託社員)については、無期転換申込権は発生しません。

すなわち、企業が「第二種計画認定」の手続きを適切に行っていれば、定年後再雇用の嘱託社員が通算5年を超えてはたらいた場合であっても、無期転換ルールは適用除外となります。

一方、この認定を受けていない場合は原則どおり5年ルールが適用されるため、人事担当者は自社が認定を取得しているかを必ず確認する必要があります。

※1 出典:労働契約法第18条「無期労働契約への転換」
※2 出典:e-GOV法令検索「専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法」

嘱託社員の雇用・運用における法的注意点

嘱託社員の運用は、メリットがある一方で法的リスクも伴います。そのため、以下の点に細心の注意を払う必要があります。

注意点①:同一労働同一賃金(不合理な待遇差の禁止)

最大の法的リスクは「同一労働同一賃金」の原則です。

パートタイム・有期雇用労働法に基づき、正社員と嘱託社員との間で、基本給、賞与、各種手当、福利厚生など、あらゆる待遇について不合理な待遇差を設けることは禁止されています。

特に、定年後再雇用の嘱託社員において、「定年再雇用だから」という理由だけで、正社員時代と全く同じ業務内容や責任を担っているにもかかわらず、賃金のみを大幅に引き下げることは、不合理な待遇差として違法と判断されるリスクが極めて高いです。

注意点②:雇止め法理(安易な契約更新の拒否は不可)

有期契約であっても、企業が自由に契約終了(雇止め)を決定できるわけではありません。

労働契約法第19条※(雇止め法理)により、以下のような嘱託社員の雇止めは、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合には無効となります。

  1. 過去に契約が反復継続され、実質的に無期契約と変わらない状態である場合
  2. 労働者が「更新されるだろう」と期待することに合理的な理由がある場合

契約更新を拒否(雇止め)する場合は、正社員の解雇に準ずるような、客観的かつ合理的な理由が求められるため、安易な運用は避けるべきです。

注意点③:労働条件の明確な明示

嘱託社員として再契約する際には、必ず「労働条件通知書」を交付する必要があります。
特に、以下の項目を明確に書面で示すことが求められます。

  • 契約期間(例:1年間)
  • 契約更新の有無(「更新する場合がある」または「更新しない」など)
  • 更新の判断基準(例:勤務成績、会社の経営状況、従事業務の進捗状況など)

※出典:労働契約法第19条「「雇止め法理」の法定化」

嘱託社員は「法的リスク管理」が鍵

嘱託社員、特に定年後再雇用制度は、企業の活力を維持し、ベテラン人材の知見を活かすうえで極めて有効な仕組みです。しかし、その運用は「無期転換ルールの特例申請」「同一労働同一賃金」「雇止め法理」という3つの大きな法的論点と常に隣り合わせです。

「昔からの慣習だから」「他社も実施しているから」といった理由で、職務内容を変更せずに賃金のみを大幅に削減するような運用は、現在では許容されません。

嘱託社員一人ひとりの職務内容と責任を丁寧に再設計し、その貢献度に見合う公正な待遇を設定すること、そして必要な法的手続(5年ルールの特例申請)を確実に実施すること。

この「攻め(人材活用)」と「守り(リスク管理)」の両立こそが、これからの嘱託社員制度を成功へ導く鍵となります。

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嘱託社員制度は、経験豊富な人材が柔軟なはたらき方で組織を支える仕組みです。
一方で、契約更新や業務分担の最適化など、運用面での課題も少なくありません。

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