
労働組合とは?役割や種類、日本独自の「企業別組合」の特徴から人事労務上の留意点まで徹底解説
現代のビジネス環境において、はたらき方の多様化や雇用形態の変化が進む一方で、労使関係の基礎となる「労働組合」の存在意義が改めて問われています。
ニュースで「春闘」や「ストライキ」という言葉を耳にすることはあっても、その法的な位置づけや具体的な活動内容、そして日本特有の組合構造について、正確に理解しているビジネスパーソンは意外に少ないでしょう。
労働組合は、決して企業と対立するためだけの組織ではありません。健全な労使関係は、企業の持続的な成長やコンプライアンスの遵守、そして従業員のエンゲージメント向上に不可欠な要素です。
本記事では、人事労務担当者が知っておくべき労働組合の基本的な定義から、主な種類、活動内容、そして欧米とは大きく異なる日本の労働組合の特徴について解説します。
労働組合とは何か
労働組合とは、労働者が主体となり、自主的に労働条件の維持・改善や経済的地位の向上を図るために組織する団体です。
労働組合法第2条(※1)において、その定義が明確に定められています。
個々の労働者は、巨大な組織である企業(使用者)に対して、経済的にも立場的にも弱い存在です。一人で「給料を上げてほしい」「労働時間を短くしてほしい」と交渉しても、なかなか聞き入れられず、最悪の場合は解雇される恐れさえあります。
そこで、労働者が集団(組合)として団結し、使用者と対等な立場で交渉を行うための枠組みが労働組合です。
憲法で保障された「労働三権」
労働組合の活動は、日本国憲法第28条(※2)によって強力に保障されています。これを「労働三権」と呼びます。
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団結権 |
労働者が労働組合を結成する権利、および組合に加入する権利です。 |
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団体交渉権 |
労働組合が使用者と労働条件などについて交渉する権利です。使用者は正当な理由なくこの交渉を拒否できません(誠実交渉義務)。 |
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団体行動権(争議権) |
交渉が行き詰まった際に、要求を実現するためにストライキなどの争議行為を行う権利です。 |
労働組合法による保護と「不当労働行為」の禁止
憲法の権利を具体化するために「労働組合法」(※3)が存在します。この法律は、労働組合の結成や活動を妨害する使用者側の行為を「不当労働行為」として禁止しています。
- 不利益取り扱いの禁止:組合員であることや正当な組合活動をしたことを理由に解雇や減給をすること
- 団交拒否の禁止:正当な理由なく団体交渉を拒否すること
- 支配介入の禁止:組合の結成や運営に経営側が介入したり、経費援助を行ったりすること
※1 出典:e-GOV法令検索「労働組合法第2条」
※2 出典:e-GOV法令検索「日本国憲法第28条」
※3 出典:e-GOV法令検索「労働組合法」
労働組合の主な活動内容
労働組合は、組合員の生活と権利を守るために多岐にわたる活動を行っていますが、その核となるのは「対話」と「交渉」です。
団体交渉(労使交渉)
労働組合の最も重要な機能です。賃金、労働時間、人事制度、安全衛生、福利厚生といった労働条件について、経営側と協議し、書面による協定(労働協約)の締結を目指します。
特に毎年春に行われる賃金交渉は「春闘(春季生活闘争)」と呼ばれ、日本の賃金相場を形成する重要なイベントとなっています。
労使協議制の活用
団体交渉が「対立を前提とした交渉(分配の議論)」であるのに対し、労使協議は「協調を前提とした話し合い(生産性の議論)」です。
経営方針、生産計画、福利厚生の充実など、経営全般について労使で情報を共有し、意見交換を行います。これにより、経営の透明性を高め、従業員の経営参画意識を醸成する役割を果たします。日本の多くの企業では、団体交渉の前にこの労使協議を充実させることで、深刻な対立を回避する運用が定着しています。
組合員へのサポートと相談活動
職場で発生したハラスメント、不当な配置転換、過重労働などの問題について、組合員からの相談を受け付け、解決に向けて会社側にはたらきかけます。労働組合は、従業員にとっての「駆け込み寺」としての機能も担っています。
また、組合員同士の親睦を深めるレクリエーション活動や、自己啓発のための研修会などを開催することもあります。
労働組合の種類と組織形態
「労働組合」と一口に言っても、その組織形態にはいくつかの種類があります。どの単位で団結するかによって、その性格や交渉力は大きく異なります。
企業別組合
日本の労働組合の約9割以上がこの形態です。
特定の「企業」ごとに組織され、その企業の正規雇用従業員(正社員)を中心に構成されます。
<特徴>
企業の経営状況をよく理解しているため、現実的で柔軟な交渉が可能です。一方で、会社との癒着が起きやすく(御用組合化)、企業の枠を超えた労働市場全体の底上げには繋がりにくい側面があります。
産業別組合
「自動車産業」「電機産業」「繊維産業」といった産業ごとに組織される組合です。
個々の企業別組合が加盟する「連合体(単産)」として存在することが一般的です(例:自動車総連、UAゼンセンなど)。
<特徴>
産業全体の労働条件の統一や、産業政策への提言を行います。企業別組合では対応できない業界全体の課題解決に取り組むことが可能です。
職能別組合
「大工」「医師」「パイロット」など、特定の「職種・職業」ごとに組織される組合です。欧米では歴史的にこの形態が主流でした。
<特徴>
職種ごとのスキルや熟練度に応じた賃金相場(横断的賃率)の確立を目指します。高い専門性を持つ労働者の地位向上に強い力を持ちます。
合同労組・ユニオン
企業の枠を超えて、一定の地域(コミュニティ)の労働者が個人単位で加入できる組合です。「地域ユニオン」とも呼ばれます。
<特徴>
労働組合のない中小企業の従業員や、パート・アルバイト・派遣社員などの非正規雇用労働者が、解雇や雇い止めなどのトラブルに直面した際に駆け込むケースが多いです。企業内に組合がなくても、外部の合同労組に加入した従業員がいれば、企業はその組合との団体交渉に応じる義務があります。
日本の労働組合の特徴と「企業別組合」
日本の労働組合を理解する上で最も重要なのが、「企業別組合」を中心とした独自のシステムです。これは欧米諸国の労働組合とは根本的に異なる構造を持っています。
欧米型との比較
欧米(特に欧州)では、産業別組合や職能別組合が主流です。そこでは「Aという仕事をするなら、どの会社ではたらいても時給はB円」というように、産業や職種全体で統一された労働条件を決定する権限を組合が持っています。
対して日本では、あくまで「その会社の中での労働条件」を決めることが主眼となります。そのため、同じ仕事をしていても、勤める会社の支払い能力によって給与が大きく異なる現象が生じます。
ユニオン・ショップ協定
日本の企業別組合の多くは、会社と「ユニオン・ショップ協定」を結んでいます。
これは、「その会社に入社した従業員は、必ず労働組合に加入しなければならない(加入しない場合は解雇される)」という強力な取り決めです。
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メリット |
組合は自動的に全従業員を組織化でき、組織率と財政基盤が安定します。会社側にとっても、組合との交渉が全従業員との合意となるため、労務管理が安定します。 |
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デメリット |
従業員の「組合に入らない自由」が制限されます。組合が会社の人事部に依存しがちになり、経営側に対して弱腰になるリスクがあります。 |
日本型システムの功罪
企業別組合は、高度経済成長期において、企業の成長と従業員の賃上げを両立させる「労使協調路線」を支えるエンジンとして機能しました。「会社の利益が増えれば、自分たちの給料も増える」という運命共同体的な意識が、日本の高い生産性(特に製造業)の源泉となりました。
しかし、バブル崩壊以降、このシステムには限界も見え始めています。
・非正規雇用の拡大への対応遅れ
正社員中心の組織であるため、増加するパートや派遣社員の利害を十分に代弁できていないという批判があります。
・組織率の低下
若者の組合離れや、組合のないIT・サービス系新興企業の増加により、日本の推定組織率は16%台(2023年時点)まで低下し、過去最低水準を更新し続けています。
これからの労働組合と人事労務の関わり方
労働組合の組織率は低下傾向にありますが、その重要性が失われたわけではありません。むしろ、人的資本経営やESG投資が重視される現代において、労働組合の役割は再評価されています。
従業員エンゲージメントのバロメーター
労働組合との対話は、現場のリアルな声を吸い上げる貴重なチャネルです。
経営側にとって耳の痛い要求であっても、それは現場の不満や疲弊のサインと受け止めるべきです。健全な労働組合が存在し、活発な議論が行われる企業では、自浄作用がはたらき、コンプライアンス違反や不正のリスクが低い傾向があります。
多様なはたらき方への対応
近年では、企業別組合でもパートタイマーや契約社員の加入を認めるケースが増えています。また、フリーランスやギグワーカーを組織化する新しい形の組合も登場しています。
「正社員の既得権益を守る組織」から、「すべてのはたらく人の権利を守るプラットフォーム」へと、労働組合自身も変革を迫られています。
合同労組(外部ユニオン)への対応
自社に労働組合がない企業の人事担当者であっても、油断はできません。
ある日突然、従業員が外部の合同労組(ユニオン)に加入し、団体交渉を申し入れる可能性があります。この場合、企業は「うちに組合はないから」と無視することはできず、誠実に対応しなければ不当労働行為となります。
日頃から就業規則を整備し、法令を遵守し、従業員との信頼関係を構築しておくことが、最大のリスクヘッジとなります。
労働組合とは、単なる「要求団体」ではなく、民主的な職場環境を構築するための「パートナー」です。その歴史的背景と日本特有の構造を理解した上で、対立ではなく対話を軸とした建設的な労使関係を築くことこそ、企業と従業員双方の幸福につながる道と言えるでしょう。
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今回は、HR担当者が押さえておきたいテーマとして、労働組合との関係性や、労使間のコミュニケーションを円滑に進めるための視点についても解説しました。
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