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かんぽ生命保険に「データサイエンス」の新組織を―日本郵政グループの『戦略的副業』プロジェクト事例に迫る【3】

副業活用ポジション:

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日本郵政グループは、グループ内外で人事交流を行い、新たな企業価値とサービスの創造に着手。外部の副業人材を積極的に受け入れることで社内にイノベーションを起こし、組織風土を改革していくため、2022年度から『戦略的副業』を開始しています。

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lotsfulでは日本郵政グループが取り組む『戦略的副業』を支援しており、2期目となる2023年度では日本郵政・日本郵便・ゆうちょ銀行・かんぽ生命保険という4社・計19件の副業プロジェクトをサポートしてきました。そこで今回、4社のプロジェクト事例を取材し、その内容を紹介していきます。本記事では、かんぽ生命保険が取り組む副業・兼業人材活用の事例として、同社のデジタルサービス推進部におけるデータサイエンス/データ分析を推進する新組織の立ち上げプロジェクトを取り上げます。

全国に広がる拠点(623のかんぽサービス部、82のかんぽ生命支店)を通じて、約1,938万人の個人・法人のお客様にサービスを提供している同社。大企業の殻を破り、正しいデータ分析の力で企業価値を向上させていくためには、データ分析専門の組織発足が必要でした。

組織発足にあたり、かんぽ生命保険は副業・兼業人材の活用に着手。実際に、どのように取り組みを進め、どのような成果を得たのでしょうか。かんぽ生命保険 デジタルサービス推進部の庭本康治氏と山本佑氏から話を伺いました。

会社情報

株式会社かんぽ生命保険 生命保険業
設立年 2007年10月1日
社員数 19,148名(2023年3月31日現在)
副業活用ポジション 組織開発(DX推進)

株式会社かんぽ生命保険 デジタルサービス推進部 データサイエンス担当 課長 
庭本康治 氏

京都大学大学院医学研究科博士前期課程修了後、株式会社かんぽ生命保険に入社。東京新契約サービスセンターでの医的審査業務などを経て、本社事務部門にて企画業務、デジタル部門にてデータ分析業務などを経験。日本アクチュアリー会正会員。

株式会社かんぽ生命保険 
デジタルサービス推進部 データサイエンス担当 専門役
山本佑 氏

大阪大学大学院経済学研究科博士前期課程修了後、株式会社かんぽ生命保険に入社。仙台保険金サービスセンターでの保険金支払業務などを経て、本社事務部門にて支払漏れ及び請求勧奨漏れの保険金未払解消施策、営業部門にて営業むけシステム導入、更改などを経験。

新組織を立ち上げ、データ分析の力で企業価値を高める

かんぽ生命保険では、どのような課題があり副業・兼業人材の活用に着手したのでしょうか

庭本氏

もともと私は、アクチュアリーと呼ばれる生命保険会社で確率統計を専門とする業務を担当しており、データ分析結果を活用して経営判断の際のアドバイスや提言を行ってきました。ですが、社内全体で見ると必ずしも数字やデータに基づいた新企画が立ち上がっているわけではないという課題を感じており、データ分析結果の正しい活用を社内浸透させたいと思ったのがきっかけです

山本氏

デジタルサービス推進部はCX向上のためのDX推進を行っています。これまで紙で行ってきた業務をデジタル化すれば、当然データがたまります。それを捨てるのではなく、有効活用できるかどうかで今後の事業戦略は大きく変わると思っています。

当社は大企業でありながら、離職率がとても低く、良くも悪くも社内におけるデータ活用の成功事例が多いとは言い切れませんでした。そのため、前例を持った立場からの具体的なアドバイスや金融業界でのユースケースを持つ副業・兼業人材を活用できれば、経営陣への説得力も高まると考えたのです。

今回、大手金融機関にてデジタル戦略部門のシニアマネージャーを務めるSさんを副業・兼業人材として採用しました。決め手はどこにありましたか。

山本氏

これまでもコンサルの方から助言やアドバイスをいただく機会は多かったので、それとは異なる新たな視点に期待していました。Sさんは事業会社側で実際に手を動かしたご経験があり、さらに金融機関でのキャリアがあるという点も当社との親和性が高いのではと感じました。定性面では、ただアドバイスをするのではなく、ディスカッションしながらSさんご自身でも資料をアウトプットしてくれるスタンスがあり、とても助かりました。

庭本氏

Sさんとの面談の場で印象的だったのは「経営陣が課題に感じているのはどこですか?」と質問してくださったこと。これまでも、社長や役員に直接プレゼンされてきたご経験があるからこそ、経営陣を説得できない原因はどこにあるかを一緒に探ってくれる姿勢が心強く、決め手になりました。

では、組織立ち上げの必要性もSさんからの提言だったのでしょうか。

山本氏

はい。データドリブンな社内文化の醸成や、データ分析を活用して組織全体でお客さまの理解を深めるとともに、社内での意思決定環境を整えて、施策を支援することで企業価値を向上するためには、今以上に決裁権限を持つ「データサイエンスの新組織の立ち上げが必要不可欠である」とアドバイスをいただいたのです。

ゴールに向けて伴走する心強いパートナーだからこそ、目線合わせはしっかりと

Sさんには、実際にはどのような業務をお任せしたのでしょうか?

庭本氏

最初に当社のビジョンや経営理念などの基本情報をお伝えし、そこに対しデータサイエンスはどう貢献していけるか?という課題を抽出するところから一緒にスタートしました。それだけでなく、業務執行計画や役員陣のキャラクターに至るまでディテールを伝え、どういった社内手続きを踏めば、新組織立ち上げが合意されやすいかを情報として提供し戦略を練っていきました。

山本氏

実際の業務としては、データサイエンス部門の必要性や社内でどうデータを活用できるかを説得するための資料作成に際してのアドバイザリー業務をメインにお願いしました。その他にも、いきなりキーマンにアプローチするのではなく、関連する役員の方の中から徐々に協力者(仲間)を増やしたり、営業など協業する部署の賛同を得たり、地道な活動をコツコツ積み重ねていく動き方のアドバイスもいただきました。

庭本氏

最初の目線合わせをしっかりとできたことで、いいスタートを切れたのではないかと思っています。

そのような中、副業・兼業人材がジョインしたことによる具体的な仕事の成果はどのようなものがありましたか。

庭本氏

最も大きな成果としてあげられるのは、新組織立ち上げの一歩である「データサイエンスライン」が誕生したことです。今年の4月に私をヘッドとし、山本も含め総勢12名の組織として既にいくつかの新プロジェクトが動き始めているところです。当社でデータサイエンスの専門部署ができるのは初めてのことであり、会社としてもかなりインパクトの大きなことです。実際に役員からGOサインが出たのは2月のことですが、それまでSさんには粘り強く伴走いただいたと思っています。

山本氏

役員陣もデータの有効活用に一定の課題意識を持ってくれてはいましたが、人材を確保したり組織化するといった具体的な重要性を説得するシーンでは、一筋縄ではいかないこともこれまで多々ありました。Sさんにはご自身のユースケースを用いながら、経験者ならではの視点で一緒に役員陣へプレゼンしていただき、リアルな社外状況を情報として役員の方々にお伝えできたことも組織発足の決定打の一つになりました。ですので、期待を大きく上回るパフォーマンスを発揮いただいたと感じています。

副業・兼業人材活用に当たって工夫した点はありますか。

庭本氏

当初、社外の方と仕事を進めていくにあたり、コミュニケーションギャップが生まれることを不安に感じていました。そこで、毎週月曜日の夕方に定例ミーティングを実施。また、思い付いたアイデアや疑問点を一週間先までそのままにするのではなく、Slackをつないでリアルタイムでいつでもコンタクトが取れるように意識しましたね。

事業会社の経験者ならではの視点が加わることで、プロジェクトが加速した

副業・兼業人材を活用してみて、気づきなどあれば教えてください。

山本氏

Sさんは事業会社での経験が十分にある方だったので、プロジェクトを絵に描いた餅で終わらせるのではなく、説得力を持ってゴールまで伴走いただけたのだと思います。

また、コンサルのように高単価で短いスパンのみプロジェクトを共にすると成果に対してのコスパが重くなりがちです。かと言って正社員を雇用するとなるとさらにコストに負荷がかかってしまいます。Sさんのような優秀な副業・兼業人材を、自分たちが面談の場で見て採用できた点は、本当によかったと思っています。

庭本氏

金融業界で実績を持つ方を副業・兼業人材として活用できた点こそ、プロジェクトが加速した一番の鍵となったのではないでしょうか。今後もデータサイエンスラインの新組織の中で活用領域を拡大していきますが、スポット課題の検討においてご活躍いただけたら良いなと思っています。

それでは最後にlotsfulを利用した感想を、一言お願いします。

庭本氏

まずSさんのような素晴らしい人材を紹介してもらい、成果にもつながったことを非常に感謝しています。新しい挑戦をするときは、どうしても社内の人間だけでは限界が生じてしまいます。今回のように、スポットで経験のある方が専門家として入ってくれるのは非常によかったと感じています。

山本氏

正直、いただいた履歴書を見た際に「こんな凄い経歴の人をどう引っ張ってきたのだろう?」と驚いたのを覚えています。さらに万が一問題が起こった際には間に入りますよと都度フォローいただけた点も安心感がありましたね。

(編集・取材・文:眞田幸剛)

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