
大田区商店街のインバウンド向け体験プログラム創出に挑む!副業人材2名が導いた成果とは?
2024年9月、lotsfulは大田区商店街連合会と連携し、「外国人・団体向け体験プログラム造成及び販売戦略支援事業」において副業人材の募集を行いました(※)。今回は、本事業における副業人材活用事例をご紹介します。
この事業の狙いは、インバウンド旅行者が多い羽田空港を擁する大田区において、日本文化が体験できるようなインバウンド向け体験プログラムの企画と実行、モデルケースとなった商店街の店舗以外にも広げられるよう、汎用的なマニュアルを作成すること。その支援ができる副業人材をlotsfulで募った結果、地方創生や地域プロモーションなどの豊富な経験を持つ副業者2名(S氏・U氏)を採用。
2024年10月〜2025年1月という限られた期間の中、副業人材がジョインしたことでどのような成果が得られたのでしょうか?本事業を推進した大田区及び大田区商店街連合会の4名に話を伺いました。
※関連プレスリリース:副業マッチングサービス『lotsful』と大田区商店街連合会が連携 「外国人・団体向け体験プログラム造成及び販売戦略支援事業」で 副業者を『lotsful』で独占募集

大田区 産業経済部 産業振興課 商業振興担当 主査
吉原瑞恵 氏
新卒で人材サービス会社に入社し、法人営業を担当。2011年、中途採用で大田区に入庁。
福祉部、教育委員会事務局を経て、現在は産業経済部に在籍。商店街支援に6年間携わったのち、現在は観光担当として区の魅力を発信している。

大田区商店街連合会 事務局長
河野玄 氏
2011年、コンサルティング業界から中途採用で大田区商店街連合会へ。
連合会事務局の体制見直しと、大田区への様々な施策提言を通して、商店街支援改革を推進する。近年は商業に留まらず、観光、福祉、健康等の様々な分野に活動領域を広げながら官民連携のコーディネート等の支援も行う。

大田区商店街連合会 主任
加藤氏
今回の「外国人・団体向け体験プログラム造成及び販売戦略支援事業」のプロジェクトを担当している。
今回のプロジェクトでは、羽田穴守エリアの2店舗(「YOICHI」/「和菓子処 清野」)を副業人材・S氏と共に支援。

大田区商店街連合会 主任
武田氏
加藤氏と同じく、「外国人・団体向け体験プログラム造成及び販売戦略支援事業」のプロジェクト担当者として、商店街会員店舗が副業人材を活用できるようにさまざまなサポートを行っている。
今回のプロジェクトでは、池上エリアの2店舗(「にぎり処 道そ神」/「駿河屋商店」)を副業人材・U氏と共に支援。
インバウンド向けの体験プログラムを体系化し、大田区の地域活性化を図る
大田区・吉原氏
大田区には羽田空港がありますので、その立地をいかして急増するインバウンド客を区内に誘客するため、本事業を立ち上げました。
大田区は旅行の目的になるような有名観光地ではないですが、空港の周辺に宿泊施設や飲食店が立ち並ぶエリアがとても近接しているという利便性が強みです。「飛行機の離発着の合間の時間やレイオーバー待ちの旅行客は多いのでは?」という仮説を立て、彼らに向けて地域ならではのローカルな体験、人との交流を創出できれば、地域活性化につながると考えたのです。そうした活動を推進すべく、まずはインバウンド向けの体験プログラムを提供できないかと考えました。
大田区商連・河野氏
本事業に親和性のある区内の店舗をリストアップし、ヒアリングを行い選定しました。商品の高付加価値化とインバウンド需要を取り込んでいきたいというマインド部分については、重点的に見させていただきましたね。また、必ずしも自店舗内で体験プログラムをやるわけではないという仮説のもと、実店舗型の体験プログラムだけでなく出張型も検討していたので、そういった視点からも参加店舗を検討しました。
限られた期間内で成果を出すためには、その道のプロが必要
大田区商連・河野氏
私たちは店舗周りのサポートは得意ですが、外国人観光客をターゲットにした商品の高付加価値化を、短期間で仕上げるにはその道のプロが必要だと考えました。さらに、インバウンド向け体験プログラムを他店舗に展開するにはマニュアルが必要になりますので、資料化スキルを持った方をアサインするには副業人材が適切だと思っています。
大田区商連・河野氏
豊富なインバウンドやマーケティングの知識があることや、店舗オペレーションのブラッシュアップを現地で行えること、さらに体験プログラムの型化に向けて資料作成ができる方に絞りました。さらに今回は短期間の事業だったため、こちらの要望を素早く理解し、簡潔にコミュニケーションできる方として、お二人を選ばせていただきました。
大田区商連・河野氏
業務を三段階に分け、お任せしていきました。まずはモニタリング準備。店舗課題を抽出して、どんな体験プログラムにするかを考え、競合などのマーケティング調査もしながら、その合間で店舗に来てもらってオペレーションの確認をしてもらいました。
第二段階として、モニタリングを募集している間に体験プログラムの資料作成と汎用ツールの作成を実施。第三段階で、モニタリング後の体験プログラムのブラッシュアップを進めてもらいました。
大田区商連・河野氏
副業人材にインプットしてもらいたいことはドキュメントにまとめて、プロジェクトのキックオフ時に共有し、事業をどこまで進めていくかスケジュール感を含めて目線合わせをしました。ゴールを明確に示すことができたので、目標に向かってしっかりと進めていくことができたと思っています。
店舗の経験値に合わせて、副業人材が柔軟に対応
大田区商連・加藤氏
プロジェクトのスタート時はSさんが持っていたフォーマットを軸に体験プログラムを組み立てていこうと考えていました。しかし、店舗ごとに考え方も、レスポンスの早さも異なりましたので、それらを念頭に置きながら会議の回数やコミュニケーションの量を調整して臨機応変に動いてもらいました。
大田区商連・加藤氏
いろいろと想定が変わりはしましたが、その都度対応してもらえてこちら側としては苦労した点などはありませんでしたね。店舗側の要望を聞きつつも、押さえておくポイントはSさんからしっかりとアドバイスがもらえました。この短期間で、これだけ精度の高い支援をしてもらえたことにとても感銘を受けました。私自身、勉強になりましたし大田区商店街連合会としても、とても助かりました。
大田区商連・武田氏
体験プログラムのオペレーションについて、現地ですり合わせを行うことを前提としながら、各店舗とやり取りしてもらえて会話もスムーズに進みました。店舗との最初の打ち合わせは対面で行い、そこでしっかりと意思疎通を図った上でオンライン会議に移行するなど、コミュニケーションも工夫してもらえた点も良かったです。
一方で、少し大変だったのは、2店舗の経験の差です。「にぎり処 道そ神」ではインバウンド客を受け入れた経験があり、地元の中学生に対するレクチャーの機会を持っていたため、初心者への対応にも慣れていました。「駿河屋商店」はそれらの経験がなかったので、経験の差がある2店舗を同時に支援するのに、Uさんに気を遣ってもらったと感じています。結果としては、そういった経験の差に関係なく、誰が見ても理解しやすいマニュアルの作成をしていただき、私たちも非常に満足しています。
大田区商連・武田氏
インバウンド客の受け入れを積極的にしていきたい想いが強く、おもてなしを大事にされている方なので、やりたいこととやれることの範囲設定に迷う場面がありました。そういったときに、Uさんからどのような体験プログラムにしていくべきかアドバイスをもらい、コンテンツの絞り込みを図りました。
羽田穴守エリア・池上エリア、それぞれの体験プログラムは?
大田区商連・加藤氏
「YOICHI」の古民家カフェで、おにぎり作り体験をしました。そのカフェに「和菓子処 清野」が出張して、和菓子練り切り体験も開催。おにぎり作り体験では、和食のレクチャーや鶏そぼろを炒めるデモンストレーションを行い、イベントを盛り上げました。おにぎりを作ったあとは、もちろんその場で実食してもらいました。
和菓子練り切り体験でも最初に和菓子の歴史などを伝え、練り切り体験が終わったあとは参加者からさまざまな質問に答えつつ、プライベートレッスンの様な形でプログラムを進めていきました。

大田区商連・加藤氏
外国人留学生を中心に女性10名が参加しました。開始前にテーブルごとに座ってもらったのですが、早々に会話も弾んでいました。和食や和菓子づくりは、女性にニーズがあるのだなと改めて感じました。

大田区商連・加藤氏
商品の高付加価値化という部分は、繰り返し店舗側に伝えながら意識づけしていました。プレミアム感を演出するために、おにぎりの実食ではお味噌汁を出したり。和菓子を食べる際はその場で抹茶を立てて参加者に飲んでもらったりしました。そのようなプラスアルファの部分はSさんのアドバイスで進めていきました。
大田区商連・加藤氏
自信をつけるいい機会になったと言ってくれました。インバウンド客の受け入れは数年前にチャレンジしていたそうですが、今回の取り組みを経てより自分たちが提供するものの価値を感じてもらえました。
大田区商連・武田氏
「にぎり処 道そ神」では、寿司握り体験としておからを使った寿司の握りの練習と、一人前の握りを参加者が作りました。予定にはなかったのですが、大間のマグロをその場で捌く実演もしました。
「駿河屋商店」は出張型のプログラムで出汁テイスティング体験を開催。出汁の飲み比べゲームや鰹節の削り体験、それを使った味噌汁も作りました。出汁の作り方は動画でも流したりするなど工夫することで、両プログラム共に参加者の満足度は高かったですね。

大田区商連・武田氏
体験プログラムのコンテンツ自体は各店舗のアイデアをベースにしています。Uさんからは、そのコンテンツを外国人がどういった目線で見るのかといった視点でアドバイスをもらいました。

大田区商連・武田氏
どちらも体験プログラムについて前向きに捉えて、これからも続けていこうと考えています。Uさんからもモニタリング後に改善点をもらっているので、それらを参考に「駿河屋商店」では桜の時期にインバウンド客向けのツアーを開催することになりました。「にぎり処 道そ神」でも、次回の体験プログラムの実施に向けて動いている最中です。
インバウンド客に大田区を訴求するための確かな一歩となる
大田区商連・加藤氏
副業人材が支援することで店舗側の意識が進化し、体験プログラム後は店舗から課題意識を持ってブラッシュアップ案を出してくれました。課題の解像度も上がったと思いますし、十分な手ごたえを感じています。
大田区・吉原氏
大田区がインバウンド客を誘客できるのか、具体的なデータが今までありませんでした。そうした中、今回4店舗で行われた体験プログラムでは、参加者からの評価も高く、大田区の店舗が観光で稼ぐという新しい可能性を感じることができました。店舗をどのようにしてインバウンド客に訴求していくのか。そのナレッジをこれからも蓄積し、大田区の地域が観光で稼ぐという新たな柱を作っていければと考えています。
大田区・吉原氏
大田区にある地域の中小事業者と観光関連の民間企業がつながり、インバウンド客を誘客するネットワークが形成できればと思っています。それらを軸に、観光コンテンツを創出していく。大田区がそのハブになっていければと考えています。
羽田空港にはインバウンド客が着実に増えていますので、彼らに羽田空港周辺の観光コンテンツを知ってもらい、大田区がインバウンド客の拠点になることを期待しています。そういった地域を目指すきっかけとして、本事業を成長させていきたいと考えています。
大田区商連・河野氏
毎回素晴らしい人材を紹介してもらい感謝しています。短期間かつ単発のプロジェクトだと、フルタイムの社員に全てを任せるのは難しいです。そういった場面で、副業人材の活用は親和性があると実感しています。今回も期待以上の成果を出していただき大変満足しています。
(編集・取材・文:眞田幸剛)
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