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【セミナーレポート】TURNING POINT2023<vol.4>自治体×副業人材、3年目を迎えるプロジェクトの軌跡を聞く

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個人と企業が共に成長できる「キャリア副業」の実現を目指してきたlotsfulは、サービスローンチから4周年を迎えました。これを記念して、時代の転換点に挑む先駆者たちとトークセッションを行うオンラインセミナー「TURNING POINT2023 〜副業活用の先駆者に学ぶ、新時代の人材戦略〜」を全4回開催。副業のこれからのあり方はもちろん、社内のイノベーション推進やキャリア開発、人材育成・活用といった幅広いテーマを取り上げていきます。

7月26日に開催した4回目のテーマは、「副業人材と大田区が挑む!地域活性化プロジェクトの軌跡とこれから」。大田区産業経済部の吉原瑞恵氏と大田区商店街連合会の河野玄氏をパネリストに招き、コロナ禍で打撃を受けた商店街を活性化させていくため、副業人材を受け入れた大田区商店街のプロジェクトについて話をお聞きしました。

プロジェクトのスタートは2021年に遡り、大田区の支援のもと大田区商店街連合会が主体となって商店街運営のDX化のためのデジタルツール導入プロジェクトに副業人材を活用(関連記事:【自治体×副業人材】大田区商店街のDX推進!デジタルツール導入による、業務効率化に向けた副業活用)。

さらに、2022年の第2弾では、大田区商店街の複数の店舗が副業人材とのチームを結成。SNS活用などのWebマーケティング領域で副業人材が各個店のカウンターパートとして活躍し、より現場に近い場所で区内の産業振興に貢献しました(関連記事:大田区商店街の副業人材活用、第二弾!商店街ではたらく人々が副業人材から得た「学び」とは)。

そして、2023年6月からは第3弾プロジェクトが始動しています。

大田区と大田区商店街連合会はなぜ副業人材を受け入れようと考えたのでしょうか?そして、3年目を迎えた副業人材プロジェクトの成果とは?本記事ではこのセミナーの模様を、ダイジェストでお届けします。

【画面右上】 登壇者/大田区 産業経済部 産業振興課 産業振興担当 主任 吉原瑞恵 氏
新卒で人材サービス会社に入社し、法人営業を担当。2011年、中途採用で大田区に入庁。福祉部、教育委員会事務局を経て、現在は産業経済部に在籍。都内最多の大田区商店街振興に携わり6年目。新規事業企画や商店街を担当する傍ら、所属チーム内の業務改善を図り、地域経済や商店街の活性化を支援している。
 
【画面右上】 登壇者/大田区商店街連合会 事務局長 河野玄 氏
2011年、コンサルティング業界から中途採用で大田区商店街連合会に入社。連合会事務局の体制見直しと、大田区への様々な施策提言を通して、商店街支援改革を推進する。近年は商業に留まらず、観光、福祉、健康等の様々な分野に活動領域を広げながら官民連携のコーディネート等の支援も行う。
 
【画面左上】 モデレーター/パーソルイノベーション株式会社『lotsful』 Consulting&Salesグループ マネージャー 浦上楽
リクルートグループに新卒入社。大手企業からスタートアップまで幅広く採用支援に従事、1000名以上の紹介実績を持つ。新規組織立ち上げや、チームリーダーとして業務設計、オペレーション改善、KPI設計等を実行。lotsfulには立ち上げ期から参画。大手企業やベンチャーを中心に、副業人材を活用したプロジェクトサポートを幅広く実施。現在はコンサルティング・セールス領域のマネージャーとして従事。
 
【画面下】 司会/パーソルイノベーション株式会社 lotsful Sales 佐久間淳子
リクルートグループに新卒入社。事務派遣領域を中心にSMB〜エンタープライズ企業まで幅広く対応したのち、全社の大半である800名の派遣営業からの依頼業務を行う全社組織の企画・運営担当に従事。約40名のメンバーマネジメントをしながら組織運営・改善提案・コスト削減・営業UX向上に向けた各種PJTのマネジメントを行う。lotsfulには2023年1月に参画し、大手企業やベンチャーを中心に、副業人材を活用したプロジェクトサポートを幅広く実施。

コロナ禍をきっかけに、副業人材受け入れを開始

lotsful・浦上

2021年から副業人材の活用をスタートさせていますが、まずはそのきっかけやlotsfulを利用している理由を教えてください。

吉原氏

行政が商店街を支援する方法として補助金などがあるのですが、ずっと新しい支援策はないかと考えていました。都や区から専門家を商店街に派遣してサポートするという取り組みはあるものの、派遣回数も決まっており、概念的なレクチャーに終わってしまう場合もあります。そのため、行政の支援と商店街の要望がマッチしておらず、もっと実用的な支援が必要だと考えていました。

2018年に副業元年を迎え、その頃から副業人材活用に注目してはいたのですが、商店街の支援に取り入れようという発想は当初ありませんでした。しかし、その後のコロナ禍が商店街の支援方針を見直すきっかけとなり、思い切って副業人材の活用を商店街支援に取り入れることにしました。

河野氏

大田区商店街連合会としては、副業人材を受け入れることで、大企業の最前線で活躍している方からノウハウを得ることができると期待していました。副業プラットフォームを導入する際は、5社ほどから話を聞いたのですが、その中で商店街の業務などを深く理解してくれたlotsfulに依頼することにしたのです。

lotsful・浦上

副業人材を受け入れてみて、気付いたことはありますか?

吉原氏

2021年に副業人材の受け入れをスタートさせたときは、模索しながらの進行でした。1年やってみて、副業人材に依頼する場合は、プロジェクトを立案する行政側が、予算をもとにどれくらいの期間、何人の副業人材を受け入れるのか、どんな業務を任せていくのか、そしてPMを配置することを、副業人材をアサインする前に明確にしておくことがスムーズだとわかりました。

lotsful・浦上

行政は民間とちがい、予算やスケジュールの管理が厳格に定められていますので、そうしたことが重要ですね。河野さんはいかがですか?

河野氏

受け入れてみて良かったと思うのは、若手の副業人材はキャッチアップが早いですし、アジャイルで進めて計画変更も柔軟に対応してくれる点です。気を付ける点としては、業務の切り出しといった副業人材活用に関するノウハウがないと、プロジェクトが上手く進まないと理解することです。1年目はPMのポジションを私たちが担当して問題なかったのですが、2年目は商店街の店舗経営者を複数人で1グループにし、副業人材をアサインしたところ、切り出す業務の統一が図れず、また、グループ内に副業人材とのプロジェクト推進ノウハウがなかったことで、依頼業務の切り出しが上手くいきませんでした。3年目の今年は、大田区商店街連合会が業務の切り出しや進捗管理を担い、商店街と副業人材の間に入ってレクチャーしながら進めています。

吉原氏

PMを含めて、副業人材の窓口になれる人がいるかどうかが、プロジェクト成功の分かれ道になると思っています。将来的には商店街の方々が自らの課題を切り出し、副業人材に直接依頼し、PMも商店街側で担うといった「副業人材活用の内製化」を実現させたいのですが、そこまでに到達するにはまだ時間がかかるでしょう。

lotsful・浦上

プロジェクト成功のためには、副業人材を受け入れるためのノウハウを習得し、全体をしっかり把握できるPMが必要ということですね。ここで質問を紹介したいと思います。「副業人材の費用はどこから出ているのか?ゆくゆくは商店街店舗が負担していくのでしょうか?副業人材の受け入れを持続的な取り組みにするために考えていることはありますか?」ときていますが、いかがでしょうか。

吉原氏

副業人材の費用は大田区の予算から出ています。将来的には商店街の方々が自走し、商店街の持続的な維持、発展のための活動になっていけばと考えています。そのときは、商店街が費用を負担することになりますが、予算的に厳しい部分があれば、区が補助金を出すといったことも検討の一つかもしれません。

河野氏

大田区商店街連合会が副業人材を活用するケースもあります。その場合は、当会で予算化します。

商店街が抱える課題と”肌感覚”が合う副業人材を採用

lotsful・浦上

副業人材の選定について、気をつけていたポイントなどはありますか。

河野氏

商店街の店舗が抱える課題を解決してもらうので、同じような中小企業と肌感覚が合う方を選びました。ただlotsfulから提案いただいた副業人材は、そうした部分に親和性がある人ばかりでしたので、安心して採用することができました。

吉原氏

lotsfulが提案する人材はスキルもキャリアも素晴らしい方ばかりなので、いつも悩みながら採用を進めています。

lotsful・佐久間

「どんな人が大田区の副業で活躍できますか」という質問もきていますが、これについてはどのようにお考えですか。

河野氏

大田区全体だと町工場が多いので、そういった分野を対象に新製品の提案などができる人が重宝されると思います。また、個人的にはプロジェクトに関わりながら、自分も成長していきたいと思っている向上心がある方と、一緒にやっていきたいですね。

吉原氏

何ヵ月もかけて社会課題を解決するような壮大なプロジェクトではなく、商店街や店舗の目下の課題を短納期で解決するプロジェクトになるので、小さなことを丁寧にフォローアップできる方が活躍すると思います。ご自分がお住まいの地域の商店街を、一消費者としてイメージできるような人も活躍できると思います。

lotsful・浦上

副業人材とは、どれくらいの頻度でコミュニケーションを取っていますか。

河野氏

本年度は隔週でミーティングを開催しています。それ以外はSlack で、必要に応じて連絡をしています。お互いプライベートもありますので、ミーティングの延期もできるようにしながら、無理なくやり取りしています。

lotsful・浦上

「副業人材を活用する商店街の店舗については、どのように選定したのか?」という質問もきています。

河野氏

2022年は応募期間を設けて、その中で手を挙げてくれた店舗をグルーピングして、希望者全員に参加してもらいました。本年度は先着順で募集し、希望する店舗を受け付けました。

課題設定を明確にし、プロジェクトを加速させる

lotsful・浦上

2023年度はどのようなプロジェクトを進めているのですか。

吉原氏

昨年度は商店街店舗の新商品や新規事業開発を進めたのですが、店舗によって課題に対する解像度に差がありました。ある店舗は漠然とした悩みで、ある店舗は「こんな新商品を作りたい」と明確なイメージを持っていたのです。グルーピング後にその足並みを揃えるのが非常に大変で、期間が決まっている中でそうしたことに時間をかけてしまいました。そのような反省をいかし、本年度は商店街の情報発信力やマーケティング強化に向けたSNSスキルの向上、と課題を設定し、店舗を募集することにしました。

課題設定を明確にすることによって、副業人材との壁打ち時間を減らせましたし、「TwitterやInstagramで売上をアップさせるには」と課題を絞ることもできました。そのおかげで、副業人材の方にはスムーズにキャッチアップしていただたき、2023年は順調にスタートしましたね。プロジェクトは3ヵ月の期間を設けていましたが、1ヵ月は短縮できるのではという手応えも感じています。

河野氏

プロジェクトの内容が明確だと、副業人材を募集した際に、親和性の高い人を採用しやすいですね。SNS活用などのマーケティング・広報業務に関しても、商店街の方々は体系的に学ぶ機会があまりないので、そうした意味でも良いテーマを選べたと思っています。

吉原氏

参加した店舗に合わせてSNSの運用方法をカスタマイズしているのですが、これが好評で、参加店舗の方から感謝の電話がかかってくるくらい、とても感謝されました。店舗の方々は、実は相談する相手が少なく意外と孤独なので、副業人材とマンツーマンで相談できる体制を整えたことが、実用的な支援になっていると思います。副業人材もいつも柔軟に対応してくれるので、本当にありがたいですね。

lotsful・浦上

最後に今後の副業人材の活用など、展望があればぜひお聞かせください。

吉原氏

区としてはまだまだ試行錯誤している段階ではありますが、いろんな人の手を借りながら地域課題を解決できる仕組みをさらに構築していきたいです。副業人材はその一手として非常に有効だと感じています。これからも継続して、副業人材を受け入れたいと思います。

河野氏

私としてはlotsfulを起点に、副業人材を受け入れているほかの自治体と事例共有などに取り組んでいきたいと思っています。

lotsful・浦上

本日は貴重なお話、ありがとうございました!

(編集・取材・文:眞田幸剛)

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