サラリーマンが副業から社長になる方法とは?
「いつかは社長に!」サラリーマンであれば、そのようなビジョンを抱く方も、少なからずいらっしゃるのではないでしょうか。
近年、はたらき方の多様化や、起業ブームも追い風になって、副業による会社設立で社長へ就任することも、幾分ハードルが低くなってきました。
今回は、サラリーマンが副業を法人化した場合、節税以外に得られるメリットは何があるか、また、デメリットにはどのようなものがあるかなど、詳しく解説していきます。
サラリーマンが副業で会社設立して社長になる方法とは
本業は企業での業務に従事しているサラリーマンが会社を設立して社長になるには、どのような会社にするかというビジョンだけでなく、設立に向けた書類作成や申請など、具体的な準備が必要です。
以下に会社設立の方法から、用意しなければならない書類、設立のタイミングなどを、手順に沿って解説していきます。
会社設立の方法
現在新たに設立できる会社の形態は、以下の4つとなります。近年設立コストが抑えられることから合同会社を選択する方も増えていますが、やはりポピュラーなのは、株式会社といえるでしょう。
株式会社 | 経営者と出資者が分離し、株式の発行により出資者から資金を調達して、その資金をもとに経営者が事業を実施。発生した利益を出資者に配当する ・メリット/社会的な信用度と認知度があり、節税もしやすいこと ・デメリット/会社設立時の費用が高い点。決算公告の義務があること |
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合同会社 | 経営者と出資者が同じで、出資額に関わらず1人1票の議決権があり、役職者(役員)の人数が決められていない ・メリット/会社設立費用や、ランニングコストが安いこと。会社が借金や負債を負っても出資者が出資額以上の責任を負う必要がないこと ・デメリット/株式会社に比べて社会的信用度が劣る点。株式市場への上場ができないこと |
合名会社 | 出資者全員が「無限責任社員(倒産時には負債金額を出資者が全額返済)」しなければならない形態 ・メリット/資本金0円で会社設立が可能であること ・デメリット/出資者の責任負担が大きいこと |
合資会社 | 会社設立時に「無限責任社員1名以上」と「有限責任社員1名以上(倒産時でも出資額=責任の範囲であるため、出資額以上の返済義務なし)」を置く形態 ・メリット/資本金0円で会社設立ができ、信用や労働力など現金以外の出資が可能であること ・デメリット/無限責任社員への責任負担が大きいこと |
以下で、株式会社を設立する場合に必要な7つの手順を挙げていきます。
- 発起人(会社設立の手続きをする人)の決定
- 商号(会社名)や会社形態・事業目的・所在地・資本金など、基礎情報の決定
- 法人用印鑑(実印・銀行印・角印)の作成
- 定款(会社経営に必要なルールをまとめたもの)の作成
- 定款の認証
- 資本金の払い込み
- 法務局への登記申請
会社設立に必要な書類
法務局で登記申請(※1)を行うためには、資本金の払い込みが完了したタイミングで、以下10種類の書類を準備しなければなりません。
以下に、取締役を設置し株式会社を設立した場合に必要な書類を挙げていきます。オンラインによる申請が可能なものもあるため、有効に利用するとよいでしょう。
- 登記申請書/オンライン申請(※2)または書面申請(※3)
- 登録免許税分の収入印紙を貼付した納付用台紙(※4)
- 定款
- 発起人の決定書
- 取締役の就任承諾書/発起人ではない取締役1名につき1枚必要
- 代表取締役の就任承諾書/取締役会を置かない会社の場合
- 取締役全員の印鑑証明書/オンライン申請(※5)または書類申請(※6)
- 資本金の払い込みがあったことを証明する書面/通帳の払い込みがされている箇所・表紙・口座番号や口座名義人が記載されている欄をコピー後、各見開き頁の綴り部分に会社実印で契印を押し「払い込みに関する事項」を記載した表紙をつけ製本
- 印鑑届出書(※7)/法人印と個人印の押印をすること
- 「登記すべき事項」(※8)を記載した書面又は保存したCD-R(※9)など
※出典1:法務局HP 商業・法人登記申請手続
※出典2:法務省HP 商業・法人登記のオンライン申請について
※出典3・4:法務局HP 商業・法人登記の申請書様式
※出典5 :法務省HPオンラインによる登記事項証明書及び印鑑証明書の交付請求について(商業・法人関係)
※出典6:法務局HP 登記事項証明書(商業・法人登記)・印鑑証明書等の交付請求書の様式
※出典7:法務省HP 印鑑届出書記載例
※出典8:法務省HP 登記事項の作成例一覧
※出典9:法務省HP 商業・法人登記申請における登記すべき事項を記録した電磁的記録媒体の提出について
会社設立すべきタイミング
副業での事業拡大を視野にした時はもちろん、節税の観点から会社設立をすべきタイミングとしては、副業での収益が500万~700万に達したときが目安といえるでしょう。
また、消費税がかかる取引の売り上げから売上返品や、売上値引、売上返戻を差し引いた課税売上高が1,000万円を超えた場合も、よいタイミングといえます。
会社を新規設立(※1)した場合、課税金額が1,000万円を超えても、準備期間として設立後2年間は消費税の納税義務が免除され、消費税の負担開始を先送りにすることが可能です。
この免税ルールは個人事業主にも適用されるため、課税売上高が1,000万円を超えたときに法人化すれば、個人事業主と法人の計4期間にわたり節税効果を得られます。
※出典1:国税庁HP 新規開業又は法人の新規設立のとき
サラリーマンが社長になると節税は可能?
所得税は収入を得るほど税率が上がりますが、法人の場合は資本金が1億円以下で、課税所得金額が800万円以下なら15%の税率、800万円を超えても23.2%の税率に抑えることが可能です。
このため、副業においても収入が大きくなった場合は、会社を設立すると節税効果が得られるので、おすすめといえるでしょう。
また、法人化すると自身の役員報酬や、家族を従業員にした際の給与所得控除のほかに、保険料や会社名義の車の減価償却など、経費で落とせる範囲も広がるため、節税に繋がります。
サラリーマンが副業で会社設立して社長になるメリット
サラリーマンが副業で会社を設立して社長になった場合、税制上の優遇のほかに、どのようなメリットが得られるでしょうか。以下に代表的な5つのメリットを挙げていきます。
収入源が多様化する
サラリーマンとしてはたらきながら社長として会社運営も行えば、本業での給与+設立した会社からの役員報酬というように、当然収入源は増える点が何よりのメリットといえるでしょう。
万が一、設立した会社が倒産、あるいは廃業した場合でも、本業での収入はしっかり確保できるため、リスク軽減にも繋がります。
スキルと経験が向上する
個人で副業をした場合でも、本業とはまったく違った業務などを選択すれば、スキルを磨くことは可能です。
法人化する際には会社設立に向けて、書類の準備や申請など、サラリーマンでは体験できなかったような複雑かつ、さまざまな手順を踏んで対応していかなければなりません。
会社設立後は社長として、取引先や従業員のことも考慮しながら業務を進め、事業として実績を積み重ねていく必要もあります。
このような経営者としての多方面にわたる経験は、何より自身のスキル向上に大きく貢献するはずです。
社会的信用が上がる
副業において個人事業主として活躍するよりも、法人であれば、登記簿や決算などによる企業の実態が可視化しやすくなるため、社会的信用はより高くなるといえるでしょう。
社会的信用度が上がれば、取引先と仕事を進めやすい点はもちろん、事業で必要な資金の融資や、自治体などの助成金を得られやすいというメリットもあります。
ネットワークが拡大する
会社を設立して事業を行えば取引先だけでなく、今まで関わりのなかったさまざまな人々との交流が可能です。
業務上の付き合いだけでなく、経営者や異業種交流のコミュニティなどに積極的に参加していけば、新たな人脈をはじめとするネットワークが拡大していくでしょう。
世間話のついでに新しいビジネスが生まれたり、強力な支援者が現れたりするなど、ビジネスチャンスに以前よりも出会いやすくなります。
将来のキャリアの選択肢が増える
副業における会社設立は、収入面と世間的な信用度の面においてプラスになるだけでなく、将来を見据えたキャリアの柔軟性と、多様性を高める機会を提供してくれるでしょう。
本業と副業における経営者としての仕事、この2つを通じてキャリアの選択肢が増えることで、経済面でのリスクを分散しつつ、新規事業に挑戦するなど、自身の可能性をさらに高めることが可能です。
サラリーマンが副業で会社設立して社長になるデメリット
サラリーマンが副業で会社を設立して得られるのは、メリットばかりではありません。以下、4つのデメリットがあることも考慮したうえで、慎重に対処していきましょう。
創業の手間がかかる
会社設立には、事前の準備から登記申請まで、最低でも2週間程度を要します。サラリーマンをしながらこれらの対応をしていくには、かなりの労力を注がなければならないでしょう。
また、廃業をする場合にも、解散の登記や清算人の登記、清算結了登記の費用が必要です。税理士へ依頼する場合には、さらに費用がかかることも、あらかじめ知っておかなければなりません。
法人設立の費用がかかる
法人を設立するには、資本金のほかに定款認証や設立登記のための費用も必要です。例として、資本金100万円の株式会社を設立して電子認証した場合の費用は、以下の通りとなります。
定款認証 (電子認証の場合) |
・電子認証手数料/4万円 ※資本金の額等が100万円未満/3万円 100万円以上300万円未満/4万円 その他/5万円 ・謄本手数料(4通)/1,000円 |
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設立登記 | ・登録免許税/15万円 ・設立登記代行手数料(株式会社)/4,000円 |
合計 | 19万5,000円 |
また、近年注目を集める合同会社は、定款の作成は必要なものの、定款認証が省略できるため、認証手数料がかかりません。
加えて、設立登記の登録免許税も6万円までに抑えられるため、コストをできるだけかけたくないという方にはおすすめです。
いずれにしろ、会社を立ち上げるには設立時にかかる資金だけでなく、当面の運転資金も必要になるため、自転車操業にならないよう、しっかり計画を立てておきましょう。
決算処理が複雑になる
会社を設立すると、決算処理がより複雑化するため、経理に関する高度な知識が必要になってきます。
決算処理に不備があった場合、会社の信用問題にも関わります。費用はかかりますが、税理士などの専門家と顧問契約を結んで決算処理業務を任せることも、よい選択肢といえるでしょう。
保険の二重加入
サラリーマンなら勤務先で社会保険に加入するように、会社を設立して、役員報酬を受け取る場合は、社会保険に加入する義務が発生します。
「保険の二重加入=複数の会社から雇われている状態」のため、管轄の年金事務所で、本業か設立した会社か、どちらの保険をメインにするか決定する手続き(※1)を行わなければなりません。
※出典1:日本年金機構HP 複数の事業所に雇用されるようになったときの手続き
サラリーマンが副業で社長になったら会社にバレる?
SNSでの投稿や、お酒の席などで上司や同僚などに会社設立に関する話をうっかりしてしまい、法務局に登記した会社情報と一致して、勤務先にバレてしまう可能性はゼロではありません。
また、2ヶ所以上の会社で社会保険に加入すると、勤務先へ健康保険組合と年金事務所から、二以上事業所勤務被保険者標準報酬決定通知書(※1)が送付されて、バレる可能性もあります。
設立した会社から役員報酬を受け取っている場合には、確定申告時に住民税を自分で納付する普通徴収(※2)を選択して、本業での勤務先の給与から天引きされないようにしておくとよいでしょう。
※出典1:日本年金機構HP 複数の事業所に雇用されるようになったときの手続き
※出典2:総務省HP 個人住民税
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