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【セミナーレポート】TURNING POINT2023<vol.3>スポーツチームで初となる「DAO」を導入!アビスパ福岡が抱える人材戦略の課題と未来

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個人と企業が共に成長できる「キャリア副業」の実現を目指してきたlotsfulは、サービスローンチから4周年を迎えました。これを記念して、時代の転換点に挑む先駆者たちとトークセッションを行うオンラインセミナー「TURNING POINT2023 〜副業活用の先駆者に学ぶ、新時代の人材戦略〜」を全4回開催。副業のこれからのあり方はもちろん、社内のイノベーション推進やキャリア開発、人材育成・活用といった幅広いテーマを取り上げていきます。

7月18日に開催した3回目のテーマは、「スポーツビジネスの現在と未来〜アビスパ福岡が取り組む人材戦略〜」。アビスパ福岡株式会社で執行役員を務める平田剛久氏をパネリストに招き、パーソルイノベーション 代表取締役社長の大浦征也が、スポーツチームとして斬新な取り組みについてお聞きしました。

福岡市をホームタウンとする日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)に加盟するアビスパ福岡では、組織の代表者を置かず、インターネットを介して誰でも自由に参加できる分散型自立組織の「DAO」を日本のスポーツチームで初めて導入(※)。さらに、企業の業務効率化を支援し、DX化を後押しするオフィシャルDXパートナーを創設するなど、常にチャレンジするクラブ経営を推進しています。このような取り組みの背景などを、視聴者の質問に答えながらお伝えしていきました。本記事ではこのセミナーの模様を、ダイジェスト版でお届けします。

※「アビスパ福岡スポーツイノベーションDAO」……特定の管理者が存在せず、アビスパ福岡と一緒に「福岡から世界に広がるイノベーションモデルを共創する」というビジョンに賛同したメンバー皆で意思決定し、行動することでプロジェクトを推進していく日本初のスポーツDAO。https://www.avispa.co.jp/avispadao/ 

【画面右上】 登壇者/アビスパ福岡株式会社 執行役員 マーケット開発部 副部長 平田剛久 氏
大学在学中にプロモーション会社設立。その後SportsManagementSchool(SMS)にてスポーツマネジメント、スポーツマンシップを学び、Sportsmanship.asia北京支社長としてサッカースクールの運営等で半年間北京に駐在。2015年よりアビスパ福岡のスポンサー営業として入社。 2020年よりマーケット開発部を設立しスポンサーセールスとDXパートナー、アビスパDAOなど新規事業開発を推進中。目標はアビスパ福岡でACL制覇。
 
【画面下】 パーソルイノベーション株式会社 代表取締役社長 /
パーソルキャリア株式会社 キャリアオーナーシップ エバンジェリスト 大浦征也

2002年、株式会社インテリジェンス(現パーソルキャリア)に入社。一貫して人材紹介事業に従事し、法人営業として企業の採用支援、人事コンサルティングなどを経験した後、キャリアアドバイザーに。担当領域は、メーカーやIT、メディカルやサービス業等多岐にわたり、これまでにキャリアカウンセリングや面接対策を行った転職希望者は10,000人を超える。その後、複数事業の営業本部長、マーケティング領域の総責任者、事業部長などを歴任。2017年からdoda編集長を務め、2019年10月には執行役員に就任。転職市場における、個人と企業の最新動向に精通しており、アスリートのセカンドキャリアの構築にも自ら携わる。2023年よりパーソルイノベーション株式会社に身を移し、7月に代表取締役社長に就任。社外では、公益財団法人スポーツヒューマンキャピタル(SHC)理事にも名を連ねる。

スポーツチームで初となる「DAO」を立ち上げたアビスパ福岡

大浦

アビスパ福岡の取り組みなどをお聞きしながら、視聴者の質問にも適宜お答えしていきたいと思います。まず、平田さんは2015年にアビスパ福岡に入られて、現在は執行役員を務めています。キャリアを振り返ってみて、印象的だったのはいつですか。

アビスパ・平田氏

アビスパ福岡に入社した1年目がとても印象的でした。当時は資金繰りが苦しく、経営危機に陥っていました。私はアビスパ福岡に出資を行ったアパマンショップホールディングス側から、アビスパ福岡にジョインしたのです。

毎朝アパマンショップホールディングスの東京本社とつないで3時間くらいミーティングを実施し、100社程度だったスポンサーを、小口を含めて1000社にするという目標を立てました。今では信じられないですが、夜遅い時間でも色々な店舗を回って、スポンサー営業をしていましたね。当時私は営業経験もなく、アルバイト的な立ち位置だったので、とにかく必死でした。

それから数年が経って訪れた、コロナ禍も強烈な出来事でしたね。Jリーグの試合の中断が4ヵ月続いたのですが、コロナ禍に入った2020年はJ1への昇格を本気で実現させようとしていた時期で。その目標は無事に達成されましたが、今度はなんとしても残留しなければならない。コロナ禍であってもサポーターにどのような体験価値を届け、収益を出すか。今までと同じことができない中で、残留と体験価値の設計と収益、その三つを考えながら行動していました。

大浦

そういった状況の中でも、先進的な取り組みを実施していますよね。アビスパ福岡は日本のスポーツチームでは初となる「DAO」(※)を立ち上げました。「DAO」に加入しているサポーターは、どのようにアビスパ福岡と関わっているのですか。

※分散型自律組織…特定の所有者や管理者が存在せずとも、事業やプロジェクトを推進できる組織のこと。

アビスパ・平田氏

一般的なビジネスよりもスポーツビジネスはサポーター(お客様)の熱量が高いですし、当事者意識が高いコミュニティ形成が可能です。特にアビスパ福岡は経営危機もあったので「自分たちが何かしなければ」という強い思いを持ったサポーターが集まっています。そこで、トークンを購入いただき、今まではサポーター間のTwitterで発信していたことを、「DAO」で発言できるようにしました。その意見を私たちが集約しながら参考にし、クラブ経営を改善していくようにしました。

大浦

「DAO」のメンバーの意見を集約したり、運営に参加してもらうと。まさに分散型自律組織ですね。ここで質問も紹介します。「DAOのメンバーには、サポーターや地元の人以外も参加しているのか」については、いかがでしょうか。

アビスパ・平田氏

「DAO」の一部のメンバー約300名にアンケートを取ったのですが、その中で福岡県以外に住むメンバーが30%いることがわかりました。関東に多く、アビスパ福岡のサポーターであるものの、なかなか観戦に行けない方々ですね。また、ファンクラブ会員以外のメンバーも、30%いることがわかりました。

プロサッカークラブが抱える人的課題とは

大浦

スポーツクラブであるアビスパ福岡が抱える人的課題についても、お話を聞いていきたいと思います。

アビスパ・平田氏

ここ3年は事業も成長していますが、ビジネスサイドに関しては一気に採用を増やせているわけではなく人員は微増している程度です。業務幅も広く、さまざまな業務を各社員が兼任しています。アビスパ福岡のカルチャーもまだ言語化できておらず、人材育成にも手が回っていないですね。リソースは十分ではありませんが、サッカーやスポーツビジネスに情熱を燃やしている社員たちがなんとか頑張っている状態です。

大浦

カルチャーが言語化できていないというお話がありましたが、社員のエンゲージメントを高めるためにも、ミッション・ビジョン・バリューの策定が必要ですね。

アビスパ・平田氏

ミッション・ビジョン・バリューの策定については、今まさに進めていかなければと個人的に考えています。社員はみんなクラブが大好きで、エンゲージメントが高く、会長をはじめハードワークしています。ただし社員それぞれの背景はバラバラですので、カルチャーフィットを進めていくためにも、人材育成の観点でも、ミッション・ビジョン・バリューの策定は必要です。

大浦

視聴者から「DAO以外に副業など、アビスパ福岡と関わることは可能でしょうか?」という質問がきています。

アビスパ・平田氏

「DAO」はいつでも入れますし、加入期間に関係なく意見を言えます。それらをクラブでまとめていきますので、いつでも歓迎します。副業に関しては、数年前にほかのクラブが、スポンサー営業で副業人材を活用した事例があったのですが、話を聞くと期待した成果が出なかったようです。アビスパ福岡では現状副業人材の活用はしていませんが、今後、lotsfulの力を借りながら、チャレンジできればと思っています。正社員採用は人員の補充で行う場合があるので、定期的に採用情報をチェックしてください。

大浦

 他クラブの副業人材活用については、スポンサー営業を出来高払いで採用したと聞いています。この仕組みにおいては、期待した結果が出ていないということですね。アビスパ福岡とすぐに関わるなら、トークンを購入し「DAO」に入っていただくのがいいかもしれませんね。

スポーツ業界で、はたらく人に求めること

大浦

先ほど、カルチャーフィットという話も出ました。アビスパ福岡ではどんな社員が活躍し、定着しているのか、傾向などあれば教えてください。

アビスパ・平田氏

共通しているのは、新しいことにチャレンジできる人ですね。まずはやってみようと行動し、そこから上手くいったことを伸ばしていくイメージです。アビスパ福岡の会長もチャレンジにはとても積極的で、経験のない分野であったとしても調べながら、自ら発信していますから。

スポーツには夢がありますし、Jリーグのクラブであれば地域貢献などの取り組みにも関わることができます。そのようなことに興味を持っている人も、多くいるでしょう。しかし、それらを実現させるには、資金が必要です。ビッグクラブならすぐに対応できるかもしれませんが、当社ではそうはいきません。周りを巻き込みながら、自らスポンサーを見つけてお金も用意できる。そんな逞しさを持った人を、私たちは求めています。

大浦

ここからは、視聴者の質問に対してお答えいただきたいと思います。まずは「スポンサー獲得に向けた課題や困っていることとは?」という質問です。

アビスパ・平田氏

サッカー以外でもいいのですが、スポーツチームのスポンサーになったことのある企業は、その価値を理解しています。しかし、スポンサーになったことがない企業は「それって寄付でしょ」、「看板出すだけでしょ」と期待感を持っていません。スポンサーシップの価値を、しっかりと発信していかなくてはなりません。スポンサー営業をやりたいと、手を挙げて入ってくる人が少ないのも課題です。Jリークのクラブ収入の50%はスポンサー収入ですので、とてもやりがいのあるポジションだと思っています。経営者や地域の方とも交流でき、学びもたくさんある仕事です。

大浦

 「下部組織の育成ビジョンについて聞きたい」という質問についてはいかがですか。

アビスパ・平田氏

 実は「DAO」でも、プロジェクトのテーマになっています。海外で活躍する冨安健洋選手はアビスパ福岡のアカデミー出身ですが、冨安選手に続いて世界で戦える選手の輩出はクラブを強くするうえでは必須事項です。アカデミーの強化を進めていきたいのですが、多くの予算を割くことも難しい。そこで、「DAO」によって他クラブのナレッジや、資金も集めていきたいと計画しています。

大浦

「サッカークラブのマネタイズに向けて、投げ銭などの仕組みを広げていったら」という質問もきています。新しい収益の柱を考えるのは、重要なのではないでしょうか。

アビスパ・平田氏

サッカーの試合といかに紐づけるかが大切で、スポーツベッティングもそうですし、投げ銭もDAZNの放映権の関係でできない部分が多いですが、そこに可能性があると思っています。クラブ単体ではなかなか動くことができないので、様子を見ながら権利関係が整ったタイミングで、チャレンジしていきたいですね。「DAO」で意見を集めたりと、まずはできることから始めていきます。

大浦

最後に、視聴者へ向けてメッセージをお願いします。

アビスパ・平田氏

ビッグクラブと同じことをしても勝てないので、Jリーグで一番チャレンジするクラブを目指し、取り組みを続けていきます。副業人材の活用を含め、まだまだやれることがあります。そこから新しい価値を生み出し、アジアを舞台に躍進できるクラブを実現していきます。それができる場所、そしてクラブだと思っていますので、これからも注目していただければと思っています。

大浦

平田さんのような熱い方がいれば、クラブは変わっていけますよね。平田さんの熱い思いをお持ちの方は、スポーツビジネスに限らず、さまざまな場所でぜひチャレンジしてください。本日はありがとうございました!

(編集・取材・文:眞田幸剛)

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