社内副業制度とは?メリットデメリットや成功のポイント
ここ数年、在宅勤務やリモートワークなど多様な働き方を受け入れ、制度化する企業が増えています。社外での副業や兼業でスキルを身につけたいと考える人もいるのではないでしょうか。
一方、今勤めている会社に属しながら複数の部門で業務を行う「社内副業」という制度も存在します。この記事では、社内副業制度について、導入メリットとデメリットや注意点、さらに取り入れる際の成功のポイントを詳しく解説します。
社内副業とは
副業とは、本業以外の仕事で副収入を得ることを指します。平日の日中は会社勤め、帰宅後の時間や休日になると会社以外の業務にあたるのが一般的です。
一方、社内副業では、勤めている会社の就業時間内に、別部門で並行して仕事をします。この制度を利用するには、本人の希望に加え、所属部門の上司と副業先部門の上司の三者間で合意が成立しなければなりません。
すでに複数の企業では社内副業制度を取り入れ、実績を出しています。
例えばKDDI株式会社では、2020年6月から「社内副業制度」(※1)をスタート。就業時間の20%を目安に、半年間他部署の業務ができる人事制度を正社員に適用しています。従業員の専門性を模索する機会や社内コミュニケーションと人脈づくり、イノベーション創出などを目的として、2023年2月時点ですでに約700人(※2)がこの制度を利用しています。
社内副業を利用した従業員が副業先の部門で新しい風をもたらすとともに、新たに得られた知見を所属部署へ還元することで、企業全体の活性化と成長が期待できる制度といえるでしょう。
※1出典:& KDDI『就業時間の2割で「社内」副業。自分のやりたい仕事を自らつかむ』
※2出典:日本経済新聞『KDDI、社内副業3年で700人 二刀流で「三方よし」』
社内副業のメリット
社内副業を導入するメリットを4つ紹介します。
社員の学習機会の増加
まず、所属部門のほか別部署の業務を行うことで、新たなスキルが身につき、従業員の成長機会になることは間違いありません。その際、所属部門での仕事は継続するため、もともと持ち合わせている専門性を維持しながら、新たな知識や経験を積めるのが大きなポイントです。
「自分がこの会社で実現したいことは何だろう?」と悩む会社員は少なくありません。
社内副業は、それを探索する良い機会になるでしょう。
モチベーションの向上
長年同じ部署で業務にあたってきた社員は、仕事がマンネリ化し面白みややりがいを感じにくくなっているのではないでしょうか。社内副業は、基本的に個人の意志や希望をベースに副業先部門が調整されます。興味や関心がある部署で新たな経験ができることから刺激が得られ、モチベーションの維持や向上が期待できます。
副業先の部門で、これまでの経験や知識が役立ったり、いつもと違った観点で企画・提案できたりと、所属部署が果たしている役割や自身の存在意義を再認識できるかもしれません。
イノベーションの促進
社内副業ではスキルアップはもちろん、知見も広がります。別の部門がどのような想いを持って日々業務にあたっているか、どのような苦労があるかなど身をもって理解でき、企業をより多角的な視点から見つめられるようになるでしょう。
副業先の部署に新しい風を吹き込めたり、所属部門にはこれまでと違った観点から提案ができたりと、なんらかの変化をもたらせるはずです。
例えば、研究開発部門の従業員が営業部門で社内副業するケースでは、ユーザーの声を直接聞き、所属部門にフィードバックして次の商品開発に生かせる可能性があります。
このように、社内副業では組織と組織のコミュニケーションが活発化し、組織やサービス、商品開発やビジネスモデルなどに新たな考え方や技術を取り入れて、変革させるイノベーションが生まれる可能性が高まるといえるでしょう。
離職率の低下
株式会社リクルート 就職みらい研究所『就職白書2020』(※1)によると、2019年度の企業の新卒採用及び中途採用の一人あたりの平均採用コストは、約100万円。さらに年間数百万円の給与・賞与や福利厚生制度を提供しているとなれば、一人を数年間雇用するのに1,000万円ほどの人件費がかかっていると考えられます。
一方で、厚生労働省が公表している「2019年3月に卒業した新規学卒就職者の離職状況」(※2)によると、就職後3年以内の離職率は新規高卒就職者の35.9%、新規大卒就職者の31.5%と、どちらも全体の約3割を占めています。成長が実感できない、先輩社員や上司に魅力が感じられない、将来性に不安を感じるなど、さまざまな理由で早期辞職を決断する社員が多く、この事実は各企業を悩ませる課題です。
社内副業では、転職を検討中の従業員に社内にいながら新たなキャリア開発ができることを示す一つの方法といえます。企業規模が大きくなるほど、別部署に行けば別の会社のように業務内容も人間関係も異なります。社内にいながら本人の希望や実現したいことを模索する機会があることは、離職率にプラスの影響を与える可能性があるでしょう。
※1出典:株式会社リクルート 就職みらい研究所『就職白書2020』
※2出典:厚生労働省『新規学卒就職者の離職状況(平成31年3月卒業者)を公表します』
社内副業のデメリットや注意点
ここまで、社内副業を取り入れるメリットを紹介してきましたが、事前に議論しておきたいデメリットもあります。代表的なものを4つご紹介します。
スケジュール管理が難しくなる
いくら社員の希望をベースに副業先部門が決まるといっても、業務量や負荷が増加してしまうのは避けられません。業務量が多くなりすぎて本業の残業時間が極端に増えてしまい、自身の将来について考えたり、スキルアップのために勉強したりする時間がとれなければ本末転倒です。これまで以上に業務効率化を意識すると同時に、上司や他チームメンバーがフォローできる体制を整えておくことが必要でしょう。
なお、副業の従業員を受け入れる部署では業務の引き継ぎや教育の時間を確保しなければなりません。受け入れ側も、最初のうちは負担がかかることを知っておくと良いでしょう。
ルールを明確にする必要がある
スケジュール管理とも関連しますが、社内副業を遂行する際のルールを明確化しておくことも大切です。社内副業を実践している企業の一部では、他部署での仕事が一定時間以内になるよう調整を呼びかけています。
例えば、丸紅株式会社では2018年より「15%ルール」(※1)を導入。従業員は自分の意思で就業時間の15%を新たな取り組みに充てられます。Google合同会社の「20%ルール」(※2)もよく知られており、就労時間の20%を新規事業立案に充てられる制度です。実際にGoogleマップやGmailなど、今では当たり前に使われるサービスの数々がこの「20%ルール」から生まれたといいます。
※1出典:日経ビジネス『丸紅、「社内副業」でタコつぼ回避 15%ルールで新事業を創出』
※2出典:Grow with Google『Work@ Google 20%』
評価が複雑になる
業務時間内に二部署で仕事をするため、上司にとっては評価が難しくなるといえます。上司同士が連携をとり、他部署での働きぶりや成果を共有しながら最終評価をつける必要があるでしょう。
また、社内副業制度では別途賃金が発生する場合としないケースがあり、対応方法は企業によってさまざまです。社員が副業制度を利用する際の判断軸になるため、事前に賃金体系を決定し開示しておけば、後々不満につながるリスクは防げるでしょう。
指示系統が複雑になる
二部門の業務を並行して行う場合、基本的にはそれぞれの部署の上司の指示に従います。開発部門と営業部門、経理部門と広報部門など、全く別の部署であれば指示系統が複雑化する心配はほとんどありませんが、営業とマーケティング部門や広報と広告宣伝部門など近しい部署の場合は、まれに同じ仕事に対して異なる指示が入ることがあるかもしれません。
その際は迅速にそれぞれの上司に相談しましょう。指示系統を一本化しておくことは組織全体としても重要です。社内副業制度を取り入れても混乱しないような体制づくりと、管理職への理解促進が不可欠です。
社内副業制度を成功させるポイント
ここまで説明してきた社内副業制度のメリットとデメリットを踏まえ、個人だけでなく組織や企業にとってもポジティブな影響を生む制度にするため、重要なポイントを4点に分けて解説します。
明確なガイドラインとルールの設定
社内副業制度を取り入れる前に、ルールやガイドラインを策定しておきましょう。例えば、副業先での仕事に対して報酬を支払う場合や、業務時間外に働くケースでは、業務委託契約の締結や賃金計算の見直しなどの手続きが必要です。
また、副業部門での仕事に集中するあまり、本来の業務がおろそかになってしまうかもしれません。副業部門での仕事に制限時間を設けたり、一定期間を区切ったりすると良いでしょう。利用者本人だけでなく所属・副業先部門の三方から不平や不満が出るのを防ぐためにも、念入りなルールの作り込みと社内理解が欠かせません。
リソースの適切な配分と管理
社内副業制度を利用する個人の労働負荷に配慮するだけでなく、副業先部門の受け入れ体制づくりも重要です。部署により異なるツールを使っているかもしれません。必要に応じて業務に使用する設備や導入研修の実施を検討しましょう。
さらに、所属部署のリソース確保も事前に必ずクリアしておかなければなりません。副業制度利用者のタスクを再配分したり、サポートすればその人の評価にもつながる制度があると理想的です。基本的には部門を問わず、どの社員も忙しく業務を遂行しています。社内副業制度を取り入れるためには、企業全体の協力と工夫が必要といえるでしょう。
コミュニケーションの透明性の確保
大きな組織になるほど、横のコミュニケーションに課題を感じている企業が多いのではないでしょうか。実際にProFuture株式会社の調査機関であるHR総研『社内コミュニケーションに関するアンケート2022 結果報告1』(※1)によると、「社内コミュニケーションに課題があるか」の質問に対して73%の人が「ややあると思う」か「あると思う」と回答しています。
社内副業制度を取り入れるとなると、部下や同僚がこれまでに自分自身があまり関わってこなかった部署と掛け持ちで業務にあたる可能性があります。その場合は、いつも以上に親密にコミュニケーションを取り、副業制度利用者の担当業務や、別部門での働きぶりなどの情報を頻繁に共有しましょう。社内副業制度は単なる副業制度ではなく、企業全体のコミュニケーション活性化の一つの手段ともいえるかもしれません。
※1出典:ProFuture株式会社 HR総研『社内コミュニケーションに関するアンケート2022結果報告1』
スキル開発や成果の評価
先ほどあげたGoogle合同会社での事例のように、社内副業制度により画期的な商品やサービス、これまでになかった目新しいアイデアが誕生する可能性があります。定期的にフィードバックしつつ、制度を利用して成果を上げた場合には適切に評価することが大切です。従業員のモチベーションを向上させ、長期的な目線で見ると、所属部署や会社全体にとってポジティブな影響につながるでしょう。
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この記事では、社内副業制度とは何か、またその導入メリット・デメリットや企業で取り入れる際の成功のポイント、注意すべき点について解説しました。
社内副業制度は、自分の置かれている環境下で別の業務をしながらスキルアップできる手段ですが、退勤後や休日を利用し、社外で副業を探すのも一つの方法です。
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