副業で飲食店を経営するには?方法や注意点まとめ
はたらき方の多様化はもとより、コロナ禍を経た飲食の形態も、家庭内で作った食事をとる内食や、レストランなど店舗での外食といったカテゴリーだけでなく、さまざまな選択肢が出てきました。
飲食の仕事を本業とするには躊躇があっても、副業であれば挑戦してみたいと思われる方もいるでしょう。
今回は、飲食店経営を副業として検討されている方に向けて、始める方法や開店までに準備すべきことなど、費用や注意点まで交えながら詳しく解説していきます。
副業で飲食店経営を始める方法の例
副業を認める企業も増えている昨今、「副業で飲食店を始めてみたい!」と考える方も多いのではないでしょうか。
副業における飲食店経営に関しては、以下の5つの方法が代表的といえるでしょう。ただし、副業とはいっても経営が軌道に乗るまでには、時間もお金もかかります。
リスクも十分にあることを理解したうえで、自分の状況と予算に見合った方法をしっかりリサーチして、始める覚悟も必要です。
店のオーナーになる
「飲食店経営に挑戦してみたい!開店資金はあるけれども、時間的な余裕がない…」という方であれば、オーナーとして経営に関わるスタンスも、飲食店経営の副業としてはおすすめです。
現場を仕切る店長や、キッチン・ホールを担当するスタッフを雇う必要があるため、人件費はかかりますが、お店を任せても安心できる人材を確保できれば、毎日顔を出す必要もありません。
オーナーとして、店舗運営で必要な経費の支払い延滞などの問題を起こさなければ、経営状況だけ把握していくという働き方も可能です。
ただし、実際の店舗運営は店長をはじめスタッフに一任することになるため、事前の綿密な準備と、お互い“報連相”は欠かさないなど、密なコミュニケーションを心がけましょう。
シェアキッチンの経営
夜はレストランや別業態で営業している店舗などを、複数の飲食店で「ランチのみ」「日曜のみ」など、時間帯や曜日で利用するシェアキッチン。
シェアキッチンなら、設備や備品などはそのまま利用できるうえ、開店する頻度が少なくても家賃を無駄にすることがありません。
何より、複数の飲食店経営者とシェアしていくため、開店資金だけでなく、運営コストもかなり抑えられるというメリットがあります。
ゴーストレストランの経営
新規出店ではなく、すでに飲食店オーナーが所有している店舗の厨房を使って、デリバリー用の料理を作って販売するゴーストレストラン。
仕入れ先やレシピなどは、ゴーストレストランのサービス会社が提供し、配達はデリバリーのプラットフォームに依頼するため、オーナーが配達担当者を新たに雇用する必要もありません。
既存の設備を利用するためコストも抑えられ、サービスはパッケージとしてシステムがしっかり確立されているため、余計な手間がかからない点が最大のメリットといえるでしょう。
また、ニーズを見据えて新たなジャンルの料理にも挑戦しやすく、飲食経営者としてスキルを磨くこともできます。
キッチンカーの開業
テイクアウトのニーズが高まったことで、キッチンカーでのカフェメニューなど移動販売が注目を集めており、副業としても狙い目といえるでしょう。
キッチンカーを準備できれば、開業までのコストや時間を抑えることが可能で、お店を借りる必要もないため、家賃などの固定費も発生しません。
飲食店経営は初めてという方でも、週末だけの移動販売など、気軽にスタートできるうえに提供する商品ニーズや売り上げの検証も可能で、試験的な営業にもぴったりです。
ただし、キッチンカーで開業するには保健所への許可申請をはじめ、車両選び・販売場所などのリサーチが必要です。事前準備はしっかり済ませておきましょう。
フランチャイズに加盟
全国規模でチェーン展開されている飲食店のフランチャイズに加盟するのも、飲食店経営を副業にするには、うってつけの方法です。
知名度もあるため、人気のお店であれば集客もある程度見込めるほか、経営やスタッフへの教育などもノウハウの確立やマニュアルが完備されており、手間が省けるメリットがあります。
ただし、加盟には高額な加盟金や、ロイヤリティの支払いが毎月発生するため、潤沢な資金と売り上げがないと、難しいといえるでしょう。
また、経営がうまくいかなかった場合などペナルティをはじめ、フランチャイズ契約を解約する際には違約金を払わなければならないケースもあるため、注意しなければなりません。
飲食店を開業するまでの準備
飲食店経営に挑戦するには、開業までに以下5つの流れに沿って準備をする必要があります。いざ開業して「しまった!」ということのないよう、じっくり対応していきましょう。
事業計画策定
飲食店の開業にあたり、準備しておきたいのが、しっかりした事業計画の策定です。お店のコンセプトを客観的に明確化・具体化するために、以下の内容をまとめて事業計画書を作成しておきましょう。
- 開業の動機
- 経営者となる自身の略歴
- 店舗のコンセプト
- 立地や営業時間、取引先などの店舗情報
- 資金調達方法や返済計画などの資金計画
- 売り上げや経費の見込みなどの損益計画
この事業計画書は、金融機関から融資を受ける場合にも役立つため、必ず作成してください。
物件選び
事業計画が定まったら、オープンする半年位前までには、店舗として利用する物件を選んでおきましょう。物件は、以下の4つのポイントを目安に探すことが重要です。
- 最寄り駅からなどのアクセスがよく、ある程度人通りが多いこと
- 近隣に競合店が少ないこと
- 目指すお店のコンセプトに合っていること
- 飲食店にふさわしい間取りや、設備が整っていること
家賃が安いからといって、不便な場所や飲食業に向かない物件を安易に選択するのは集客も見込めず、改装などに無駄な費用がかかる場合が多いため、やめておきましょう。
資格取得
飲食店を開業するためには、店舗ごとに「食品衛生責任者」(※1)を設置しなければならないため、有資格者がいない場合は、各都道府県の食品衛生協会が行う養成講習会を受講しておきましょう。
防火対象物全体の収容人員が30人以上の場合は、「防火管理者」(※2)も必要で、状況に応じて日本防火・防災協会の講習を受けなければなりません。
また、建物によっては「防災管理者」(※3)も必要な場合があるため、不動産管理会社に確認しておけば安心です。
※出典1:公益社団法人日本食品衛生協会 食品衛生にかかわる資格
※出典2:一般財団法人日本防火・防災協会 防火管理講習|講習について|防火・防災管理講習
※出典3:東京消防庁HP 防火管理 実践ガイド:防災管理制度について
資金調達
開業にかかる費用は、物件の契約費だけではありません。お店のコンセプトに合わせた内外装の工事費をはじめ、当面の運転資金など、規模によるものの目安は1,000万円程度といわれています。
自分で貯めたお金だけで賄いきれない場合は、金融機関などから借り入れて資金を調達しなければなりません。
融資や借金による資金調達の場合、期限付きで返済義務が発生するため、利子も考慮して返済計画を立てる必要もあります。
また、国や自治体の補助金や助成金をうまく活用するのも、1つの手段といえるでしょう。ただし、申請に手間がかかるうえに、審査に通らなければ給付されず、制約も多い点がデメリットです。
届出申請
飲食店の開業には、保健所から交付される営業許可証(※1)の申請は欠かせず、店舗完成予定の約10日前に必要書類を提出し、設備の検査に通らなければいけません。
そのほか、バーや居酒屋など、夜0時以降も営業してお酒を提供する店舗などは、警察署への深夜酒類提供飲食店営業開始届(※2)の申請が義務付けられています。
警察署への申請が必要なものとしては、クラブやスナックなど接待サービスを伴う店舗では、風俗営業許可(※3)の取得があり、いずれも許可に時間がかかるため、早めの対応をおすすめします。
また、個人事業主として飲食店を開業する場合には、個人事業の開業届出(※4)など、税務署への手続き(※5)をしておきましょう。
※出典1:厚生労働省HP 食品衛生申請等システム
※出典2:警視庁HP 深夜酒類提供飲食店営業
※出典3:警視庁HP 風俗営業等業種一覧
※出典4:国税庁HP 個人事業の開業届出・廃業届出等手続
※出典5:国税庁HP 新たに事業を始めたときの届出など
副業で飲食店を開業するにはいくら必要?
副業で飲食店を開業するとして、実際にはどれくらいの費用がかかるでしょうか。以下に席数10席程度のラーメン店を新規オープンする際の、おおまかな費用を紹介していきます。
1.物件取得費 | スケルトン/約200万円前後 居抜き/約300万円前後 |
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2.内外装工事費 | 約700万~750万円程度 |
3.家具・調度品 | 新品/約30万~40万円程度 中古品/約25万円前後 |
4.厨房機器 | 新品/約150万~180万円程度 中古品/約135万円前後 |
5.調理器具 | 新品/約40万~45万円程度 中古品/約30万円前後 |
6.食器・グラス | 新品/約25万~30万円程度 中古品/約20万円前後 |
合計 | 1,110万~1,495万円程度 |
物件は、まっさらな状態であるスケルトンに比べて、前のテナントの内装や設備・什器などをそのまま利用できる居抜きの方が設備投資は少なく済みます。
ただし市場においても居抜き物件は非常に人気があり、賃料や造作譲渡料が高くなるため、自分がどんなお店にしたいのかをよく考えてから選択するとよいでしょう。
副業で飲食店を始める場合の注意点
副業で飲食店を始めるにしても、以下に挙げる4つの注意点を特に意識して実践しておけば、いざというときにもリスクを最小限に留めることが可能です。
計画をしっかり立てておく
飲食店経営に限らず、ビジネスにおいて事業計画は欠かせません。まず、資金繰りは万全かどうか、立地や近隣の競合状況によってどの程度の集客・収益が見込めるかなど、きちんと計画を立てておきましょう。
また、スタッフを雇う必要があれば、求人媒体への手配など、開業までにすべて済ませておく必要があります。
コンセプトを明確にする
お店の雰囲気や提供したいメニュー、サービスなどのコンセプトを明確にして、内外装も含めてターゲット層のニーズを見込み、近隣の他店と差別化する必要があります。
その時々の流行りに乗った業態は、一時的な集客は見込めるものの、将来を見据えた店舗経営という視点で見れば、非常に厳しいといえるでしょう。
飲食店での経験を積んでおく
飲食業での経験なしに、いきなり飲食店経営に挑戦するのはおすすめできません。まず自分でホールやキッチンなどの経験を積んでおけば、現場での動きがつかめるでしょう。
店長職も経験しておけば、スタッフがどのようなことで困るのかも把握しやすく、開業後は人任せにするにしても、的確なレクチャーや、トラブル時の判断も迅速にできるはずです。
撤退基準を決めておく
経営に失敗はつきものです。特に飲食店は、立地はもちろん、流行や社会情勢に左右されやすく、コロナ禍においては、老舗や人気店でも閉店を余儀なくされたケースが多くありました。
また、飲食業界は専業一本で経営されている方も多く、経験もノウハウが豊富な人々に負けないよう、経営を続けていかなければなりません。
努力をしても集客が見込めず、日々や毎月の売り上げ目標額に遠く及ばない時期が長く続いたら要注意です。
家賃やスタッフの給与の未払いだけでなく、自転車操業による大きな負債を抱える前に、経営から撤退する基準は設けておきましょう。
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飲食店経営の夢を副業で叶えるために、資金の準備や事業計画はもちろんのこと、事前のリサーチは欠かせません。
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