人事ノウハウ

正社員だけでなく副業人材を獲得する際、採用KPIを設定することで採用活動における進捗状況の可視化や、課題発見につながります。

今回は、採用KPIについて、メリットだけでなく設定する際の手順や運用のポイントまで詳しく解説していきます。ぜひ参考にして有効な採用活動に役立ててください。

採用におけるKPIとは

KPIとは、Key Performance Indicator（主要業績評価指標）の略称で、人材採用プロセスにおける効率と効果の測定に使用される指標を指します。

また、人材採用における採用経営目標達成指標を指すKGI（Key Goal Indicator）というものもあります。採用KPIは、採用KGIを達成させるために必要な数値目標といえるでしょう。

採用KGIのみでは、現状の課題や目標達成に至らない原因の分析が困難です。採用KPIを立てて進捗管理を行うことで、数値による客観的な分析が可能になり、課題の発見や軌道修正ができます。

また、採用KPIは目標と現状の差異が数値化されるため、採用活動における進捗状況の把握が容易になります。進捗状況が可視化されれば、人事部内での情報共有がしやすくなり、次に取るべき行動も明確になるでしょう。

採用においてKPIを立てるメリット

KPIを立てることで自社の採用活動にもたらされるメリットは、以下の2つがあります。

採用課題を発見しやすくなる

KPIを立てると、採用活動の進捗や成果を具体的な数値で評価できるようになります。このため、感覚や主観といったあいまいなものに頼らない、客観的な現状分析が可能になるでしょう。

応募者数や人材の質など、自社の採用活動における課題が明確になるため、具体的な改善策の立案と速やかな実施により、軌道修正がしやすくなります。

課題に対するアクションが明確になる

KPIを立てることで、自社の採用活動における課題が明確になります。このため、どの部分にリソースを集中させるべきかが、はっきりするでしょう。

自社の採用課題が「応募者の質向上」なら、具体的な採用ターゲット設定をはじめ、応募者を取り込みやすい採用チャネルの選択など、効果的なアクションプランの選択が容易になります。

KPIは採用活動の方向性を示し、具体的なアクションを導き出す重要なツールとして、採用プロセス全体の効率化と効果的な課題解決を可能にします。

採用KPIの設定手順

採用KPIは、以下に挙げる4つの手順に沿って設定していきます。

KGIの設定

採用KPIを立てるには、採用活動の最終目標であるKGIを設定しなければなりません。KGIを設定する際に求められるのは、「採用人数」と「求める人材の質」の2つの視点です。

自社の採用活動が「数」を必要としているのか、また「質」を重視しているのかで判断軸は異なります。自社の状況やニーズに合わせて明確なKGIを設定するようにしましょう。

採用目標の明確化

「今期に10名の採用」「有資格者・経験者など、自社業務とマッチングする人材の獲得」など、KPIは具体的な数値で表されるため、採用目標が明確になります。

このため、何を達成すべきか、どのようなアクションをとっていけばよいかに関してもクリアになっていきます。

また明確な採用目標により、目標達成に向けて採用担当者のモチベーションが上がり、採用活動全体のパフォーマンスも向上するでしょう。

歩留まり率の設定

採用目標が明確になったら、次の採用プロセスへと進む人数の割合を示す歩留まり率の設定を行います。

採用活動においては、「書類選考通過」「面接通過」「内定承諾」それぞれの採用プロセスにおける歩留まり率を設定するとよいでしょう。

以下の数値は、例として応募者100名のうち80名が書類選考を通過、40名が面接に至り、5名の内定者を出した場合の歩留まり率を算出したものです。

KPIツリーの作成

KPIツリーとは、最終目標のKGI達成に向けて、必要な要素であるKPIを階層的に整理し、視覚的に表現する手法です。

採用KGIを設定したら、採用チャネルごとの「採用目標人数」と「選考フロー」を明確にしていきます。そのうえで選考フローに歩留まり率を当てはめて、選考フローごとのKPIツリーを作成します。

KPIツリーを作成することで目標達成に向けた具体的な道筋がクリアになるため、組織全体で認識を共有しやすくなるでしょう。

採用KPI運用のポイント

効率のよい採用KPI運用には、以下に挙げる5つのポイントがカギになります。

進捗状況を可視化する

自社の採用活動において目標を達成するためには、頻繁な数字更新による進捗管理を行っていくことが大切です。 

ただし、採用状況は常に変化しているため、当初の想定から大きく逸れることも珍しくありません。
リアルタイムで目標と進捗の差異を把握しておけば、滞っている問題に気付き、速やかな軌道修正が可能になります。

また、進捗状況を可視化するためには、ガントチャートやプロジェクト管理ツールを有効活用するとよいでしょう。

重要なKPIを見極める

採用活動を成功させるには、自社にとってどのKPIを重要視するかを見極めていくことが肝心です。

重要なKPIを見極めていくには、自社の採用目標が「大量の人材獲得」か、「少数かつ質の高い人材獲得」なのかによっても大きく異なります。

また、どの採用チャネルが効果的で、どの採用プロセスにおいて問題が発生したかなど、過去の採用活動において収集したデータも有効活用しましょう。

過去のデータの洗い出しを行うことで、自社にとってより重要で適切なKPIの見極めが容易になるでしょう。

達成期限を設ける

KPIを立てたら、「3ヶ月以内に10名を新規採用」というように、具体的な達成期限を設けることも成功につながるポイントといえるでしょう。

具体的なゴールを設けることで、効果的なリソース配分や採用プロセスにおける役割分担など、採用担当者全員が目標に向けて力を注ぎやすくなります。このため、採用活動全体の効率と質が大幅に向上するはずです。

進捗状況に合わせた施策を実行する

各採用プロセスにおける進捗状況を定期的にモニタリングしましょう。現状を把握することで、どこに問題があるのかが明確になります。

進捗状況に沿った分析を行うことで、採用ターゲットの見直しや採用チャネルの最適化など、最も適切な施策を速やかに実行することができるでしょう。

KPIの数値にこだわりすぎない

具体的な数値が示されることで、効率・効果ともに優れた採用活動に直結するのがKPIの最大のメリットです。

ただし、KPIは採用目標の人数や質達成の目的がある一方、候補者の価値観や意欲、自社との適合性など、数値化しにくい要素も含めた評価が必要です。

このため、数値にばかりこだわると、長期的な視野を見据えた組織の成長や発展を阻む要因にもなりかねません。

目先の数値にとらわれることなく、柔軟性を維持しながら目標達成に向けた調整を行っていきましょう。

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