猟師の副業とは?仕事内容や収入相場、注意点まとめ
イノシシやシカ、真鴨といった野生鳥獣を狩猟し、食肉として楽しむジビエや、獣害によって深刻化する農作物被害を解決する担い手として注目を集める猟師。
今回は、猟師を副業として検討する方に向けて、仕事内容や始め方、得られる収入と注意点も踏まえながら、詳しく解説していきます。
猟師の仕事内容とは
猟師とは、野山に出向いてシカやイノシシ、鳥類などの野生鳥獣を銃で仕留め、さばいた後に食肉や革・骨などを業者に販売して生計を立てている人を指します。
また、自治体からの依頼で、増え過ぎた動物をはじめ、田畑や人間に害を及ぼすサルや熊などの捕獲駆除を行う風景は、ニュースなどでもおなじみといえるでしょう。
狩猟には、狩猟免許を取得後に都道府県に狩猟者登録をして狩猟をする「登録狩猟」と、有害鳥獣捕獲などのために許可を受けて狩猟をする「許可捕獲」があります。
登録狩猟の場合、仕留めた鳥獣を販売しない限り報酬は得られません。副業で猟師を検討しているならば、各市町村の被害防止計画への貢献として報奨金が発生する許可捕獲の登録申請をしておくことをおすすめします。
鳥獣の販売
仕留めたシカやイノシシなどを解体して、肉や皮などを業者に販売するのが、猟師にとって最もポピュラーな稼ぎ方といえるでしょう。
ジビエブームもあり、畜産の肉とは違った味わいと食感が楽しめる野生動物の肉は、非常にニーズがあります。
また、シカの角などはインテリアやアクセサリー、漢方薬にも用いられることから人気も高く、業者だけでなくオークションや、フリマアプリでも高値で取り引きされるアイテムです。
害獣駆除
イノシシやサルをはじめ、ペットとして飼われていたものの、気性の荒さにより捨てられて野生化したアライグマなど、人や田畑、家屋にダメージをもたらす害獣の駆除も、猟師の出番といえます。
有害鳥獣駆除は通常の狩猟期間が11月15日~2月15日までなのに対して、自治体からの出動依頼に応じて、場合によっては1年近くもの間、狩猟することができます。
また、有害鳥獣駆除は国から委託されるため、地域によって差はあるものの、3,000円~3万円程度の報奨金が発生するのも大きな特徴といえるでしょう。
ただし、有害鳥獣駆除の業務にあたるには、狩猟免許を所持していることはもちろん、各都道府県の猟友会(※1)への加入が必要です。
一定期間の実績を積んだうえで、鳥獣被害対策実施隊(※2)の隊員になるための推薦書の申請を行い、鳥獣被害対策実施隊への加入を経なければなりません。
※出典1:一般社団法人 大日本猟友会HP 大日本猟友会
※出典2:農林水産省HP 鳥獣被害対策実施隊の設置について
猟師の副業を始める方法
猟師は「狩猟をしたい!」という気持ちだけでなることはできません。狩猟をするために欠かせない、銃やわなを扱うには、これらを扱う資格だけでなく、実際に狩猟を行うにあたり狩猟登録が必要です。
以下の項目で、猟師として活躍するのに必要な6つのステップを解説していきます。
狩猟免許試験への申し込み
狩猟免許を取得するためには、居住地の各都道府県が年に数回程度実施する、狩猟免許試験(※1)に合格しなければなりません。
試験は申し込み順の定員制としている場合が多いため、狩猟免許の取得を検討している方は、狩猟免許申請書(※2)をはじめとする必要書類を早めに揃えて申請しておきましょう。
1.狩猟免許申請書 | ・住所、氏名、生年月日 ・受験したい狩猟免許の種類 ・猟銃や空気銃の所持許可証の番号及び交付年月日等 |
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2.猟銃・空気銃許可証の写し (所持許可取得者のみ) |
左記を所持していない方は医師の診断書1枚 ※統合失調症や そううつ病、てんかん、麻薬や覚せい剤の 中毒者でないことを証明するもの |
3.写真 | 申請前6ヶ月以内に撮影した縦3cm×横2.4cmの無帽・正面・上三文身・無背景のもの |
4.狩猟免許申請手数料 (現金または収入印紙) |
免許1種類につき5,200円 ※同時に2種類の免許について申請する場合は1万400円 |
5.返信用封筒 | 都道府県により不要な場合あり |
※出典1:環境省HP 狩猟免許を取得する
※出典2:東京都環境局HP 狩猟免許申請書 様式
初心者狩猟免許講習会への参加
初心者狩猟免許講習会(※1)は、事前講習会ともよばれ、狩猟免許を取得する方に向けた講習会で、各都道府県の猟友会が開催しています。
座学による狩猟に関する法令や鳥獣判別をはじめ、実技として銃器やわな、網などの取り扱い方法が学べます。
試験として出題される法令などに関しては、マニュアルなどで対応できますが、猟具の取り扱いを個人で学習するにはハードルが高いため、必ず参加しておきましょう。
※出典1:一般社団法人 大日本猟友会HP [狩猟者へのみち]狩猟免許の取得
狩猟免許の取得
猟師になるには国家資格である狩猟免許が必要で、狩猟方法に応じて以下の4つに分けられていますが、狩猟免許を取得しただけでは狩猟をすることはできないので注意しましょう。
- 第一種猟銃免許/散弾銃・ライフル銃
- 第二種猟銃免許/空気銃
- 網猟免許
- わな猟免許
狩猟免許試験(※1)は上記免許の種類ごとに、各都道府県で毎年複数回実施されており、「知識試験」「適性試験」「技能試験」の計3種類となります。
また、銃猟を行う場合は、銃砲刀剣類所持等取締法(※2)に基づく所持許可(※3)が必要なため、最寄りの警察署で確認しておきましょう。
※出典1:環境省HP 環境省_狩猟免許を取得する
※出典2:内閣府HP 銃砲刀剣類所持等取締法
※出典3:警視庁HP 猟銃・空気銃の所持許可申請
銃砲所持許可の取得
銃の所持には、所轄の警察署で猟銃等講習会(初心者講習)(※1)の受講後に、教習射撃と実技試験を受けたうえで銃を購入し、公安委員会へ所持許可(※2)を申請しなければなりません。
この所持許可は、免許制度と異なって「1銃1許可制」となり、銃器1丁ごとに申請が必要なため、複数銃を所持している場合は、必ず申請しておきましょう。
また、所持許可を受けた銃砲は、毎年1回警察署に持参して検査を受けなければなりません。
許可を受けた銃砲を自宅保管するには、専用の「ガンロッカー」が必要で、別途、実包の自宅保管用には「装弾ロッカー」も用意する必要があります。
※出典1:警視庁HP 猟銃等講習会・年少射撃資格講習会・技能講習
※出典2:警視庁HP 銃砲所持許可について
猟具を揃える
鳥獣を捕獲するためには、猟具(※1)は欠かせません。使用する猟具は鳥獣保護管理法(※2)や、銃砲刀剣類所持等取締法で定められており、それぞれ所定の手続きが異なるため注意しましょう。
猟具により、以下のように「わな猟」「網猟」「銃器(装薬銃・空気銃)」の捕獲方法ごとに分けられています。
【わな猟】
くくりわな | わな猟で最もメジャーな猟具で「バネ式」「はねあげ式」「ひきずり式」の3種 おもにワイヤーなどで作成した輪を仕掛け、獲物の脚をくくって捕獲 シカやイノシシの捕獲に用い、ツキノワグマやヒグマに関しては禁止 |
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はこわな | 箱の中にエサを仕込み、野生動物を誘導して捕獲 ・大型はこわな/イノシシやシカなど大型獣の捕獲に用いる ・小型はこわな/タヌキやアライグマなど中型獣の捕獲に用いる |
はこおとし | 箱の中に獲物が入ると重りを載せた天井が落下し、獲物の動きを止めて捕獲 タイワンリスやイタチなどの捕獲に用いる |
囲いわな | はこわな同様にエサを仕込み、獲物が誘導されると自動的に入口が閉まり捕獲 シカやイノシシなどの捕獲に用いる |
【網猟】
むそう網 穂打ち・片むそう・双むそう・袖むそう |
エサを利用して、鳥の群れを引き寄せ一気に捕獲 カモ・ハト・スズメなどの捕獲に用いる |
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はり網 うさぎ網・谷切網・袋網 |
空中に網を張って、人が常に獲物を見張りながら捕獲 鳥類だけでなく、ウサギなどの捕獲に用いる |
つき網 | 虫取り網に似た形状で草むらや池付近に隠れている タシギをはじめ、鳥類などの捕獲に用いる |
なげ網 | 飛んでくる鳥類などに向けて網を投げて捕獲 カモなどの捕獲に用いる |
【銃器(装薬銃・空気銃)】
装薬銃 | 火薬を用いて弾丸を発射する銃器の総称。散弾銃とライフル銃に分けられる。 鳥類や小動物は散弾銃、シカやイノシシ、クマなどの捕獲はライフル銃を用いる |
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空気銃 | 空気やガスの圧力を利用して発射する銃器。殺傷能力があるため使用許可が必要 鳥類や小動物の捕獲に用いられる |
※出典1:環境省HP 猟具(猟銃、わな、網)を所持する
※出典2:環境省HP 狩猟制度の概要 || 野生鳥獣の保護及び管理
狩猟者登録
実際に猟を行う際は、自治体などに狩猟者登録をしておく必要があります。出猟したい都道府県ごとに申請(※1)することで登録が可能で、それぞれ登録料や、狩猟税を納めなければなりません。
登録に必要な書類や、費用は以下の通りとなります。詳細に関しては都道府県によって異なるため、自治体の窓口か、ホームページなどで確認しておくとよいでしょう。
1.狩猟者登録申請書 | ・住所、氏名、生年月日 ・狩猟免許や使用する猟具の種類、狩猟をする場所 ・狩猟免許を与えた都道府県知事名、狩猟免状の番号及び交付年月日 ・猟銃の所持許可証の番号等 |
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2.狩猟免状(免許) | 必要に応じ、原本又は写しの提出 |
3.損害賠償能力を証明するもの | 3,000万円以上の保障が可能であること |
4.写真 | 縦3cm×横2.4cmの無背景の写真2枚 |
5.登録手数料 | 1,800円 ※登録する都道府県ごとに必要 |
6.狩猟税 | 第一種銃猟/1万1,000円~1万6,500円 第二種銃猟/5,500円 わな・網猟/5,500円~8,200円 ※下限額は県民税の所得割の納付を要しない場合 ※登録する都道府県ごとに必要 |
※出典1:環境省HP 狩猟者登録をする
猟師の副業の収入相場
猟師を副業にした場合、単価に換算すると、その収入相場は以下のように、ほかの仕事と比べて比較的高めの設定になっているのが特徴です。
有害鳥獣駆除などの場合、得られる報酬に関して地域差もあり、報酬は猟友会に支払われた後で、自分の取り分が得られます。
- 有害鳥獣駆除報奨金(サル)/1頭5,000円~1万5,000円前後
- ジビエ販売(イノシシ)/1頭10万円~50万円
猟師の副業の注意点
獣害の駆除など、社会貢献もできる猟師の副業ですが、リスクもあり、あらかじめ確認しておかなければならないこともあります。特に注意すべき3点を以下で解説していきます。
怪我や負傷のリスク
狩猟は野生動物と向き合う仕事のため、仕留めかけたシカやイノシシなどの突進を受けて死傷する事故は、全国各地で起こっています。
狩猟には銃が欠かせず、扱い方を間違えた場合は暴発や、獲物と誤って人を撃ってしまうなど、深刻な人身事故にも繋がりかねません。
また、わな猟などで仕掛けるくくりわなのバネは、一瞬で獲物の脚を仕留めなければならないため、かなり強力な作りになっています。
くくりわなの設置中にバネが跳ねて、骨折などの怪我を負うことも多く、同様に千切れたワイヤーが目に当たって失明するケースも珍しくないため、これらの扱いは慎重に行うようにしましょう。
地域の狩猟実績の確認
猟師を副業にして収入を得るには、鳥獣の捕獲ができることが前提です。自治体から捕獲許可を受けるには市町村単位の場合、野生鳥獣による被害の防除や駆除する団体の鳥獣被害対策実施隊(※1)に所属しなければなりません。
所属する地域によって、狩猟実績をはじめ、捕獲数や猟期はもちろんのこと、得られる報奨金もさまざまです。
実績については一般的に3年程度の経験が求められるため、これらも含めて、狩猟する地域の狩猟実績について事前に確認しておきましょう。
また、鳥獣被害対策実施隊に加入しておけば、以下に挙げるような優遇措置(※2)を受けられるため、おすすめします。
- 技能講習の免除
- 狩猟税の軽減
- 公務災害の適用
- 活動経費に対する特別交付税措置
- ライフル銃の所持許可の特例
※出典1:農林水産省HP 鳥獣被害対策実施隊の設置等について
※出典2:農林水産省HP 鳥獣被害対策実施隊について/P76~鳥獣被害対策実施隊の優遇措置について
解体所の持ち込み条件の確認
仕留めた獲物をジビエとして一般流通させる場合、解体所(食肉処理施設)でさばいてもらわなければなりません。また鮮度を保つため、なるべく早めに解体所に持ち込む必要があります。
解体所への持ち込みには、以下のような条件(※1)が設けられていることが多いため、必ず事前に確認しておきましょう。
- 施設へ搬入の前に予定時刻等の情報を伝達すること
- 捕獲した獲物を1頭ずつシート等で覆い、個体が相互に接触せず周囲への汚染がないこと
- 運搬に使用する車両の荷台は、使用前後に洗浄すること
- 捕獲後、施設まで搬入する制限時間に間に合っていること
- 狩猟者は捕獲から搬入までに狩猟者の氏名や健康状態、狩猟方法や被弾部位などの記録を作成し、処理業者に伝達し、保存すること
※出典1:厚生労働省HP 野生鳥獣肉の衛生管理に関する指針(ガイドライン)について
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