【セミナーレポート】地方企業×副業人材で新規事業に挑む!名古屋テレビと寿美家和久が語る成功事例
今後、ますます人材不足が深刻化する日本。すでに地方企業では、その影響が大きく出ています。いざ、採用を進めようとしても、希望する人材が見つからない。その結果、リソースが不足してしまい、事業を思うようにグロースさせられないといった課題を抱える企業も少なくありません。
そんな地方企業に向けて、lotsfulでは11月30日にオンラインセミナー『裏側を公開!地方企業がどう優秀な人材を集め、事業を作ったか?』を開催しました。開局60周年を迎える名古屋テレビ放送株式会社で新規事業開発を担当する北川咲絵氏、三重県津市に本社を置く料理宅配ベンチャー株式会社寿美家和久(すみやわきゅう)の代表取締役である小清水丈久氏の2名が登壇。両社ともに副業人材を活用することで、新規事業の壁を乗り越えてきました。
そこで、どうすれば地方企業でも優秀な人材を集めることができるのか、そして事業を作っていけるのかを対談形式で語っていただきました。本記事ではセミナーの模様を、ダイジェストでお届けします。
ゲストスピーカー/名古屋テレビ放送株式会社
コンテンツプロデュース部 兼 成長投資戦略部
北川 咲絵 氏
2017年新卒で名古屋テレビ放送株式会社(メ~テレ)に入社。本社・大阪支社営業部でCMの売り上げ管理に従事。2018年度社内提案制度で大賞を受賞し、営業業務と並行してコンテンツの企画プロデューサーを経験。2020年9月より成長投資戦略部と人事部を兼務し、出資先ベンチャー企業との協業サービス推進や新規事業開発、新卒採用に関わる。2022年7月よりコンテンツプロデュース部と成長投資戦略部を兼務、コンテンツを活用した新規事業の立ち上げや新規コンテンツ開発等を担当。
ゲストスピーカー/株式会社寿美家和久
代表取締役 小清水 丈久 氏
福岡県出身。IT企業を経て料亭業に従事。前職の経験を生かしたマーケティングや、新規事業の立ち上げを得意とし料亭文化の普及に努める。2008年に(株)寿美家和久を設立。同社代表に就任。『世界に集いの機会をつくり、世の中を笑顔に、幸せにする』 ことを理念に掲げ、伝統文化の継承と日本を活性化させることを目的に、業界初となる料亭によるデリバリーフランチャイズ事業を推進。現在は400の提携店舗と新しい価値を創造することに挑戦中。
モデレーター/lotsful 代表 田中みどり
2012年新卒で株式会社インテリジェンス(現:パーソルキャリア株式会社)に入社。 IT・インターネット業界の転職支援領域における法人営業に従事。2016年より新規事業であるオープンイノベーションプラットフォームeiicon(現:AUBA)の立ち上げを行う。Consulting・Salesグループの責任者として従事し、 サービス企画、営業、マーケティング、イベント企画、経営管理などを幅広く担当。2019年6月より副業マッチングサービス『lotsful』をローンチ、代表を務める。
どのような事業課題を副業人材で解決したのか?
lotsful・田中
今回は、『地方企業がどう優秀な人材を集め、事業を作ったか?』というテーマで、お二人にお話を伺っていきたいと思います。人材獲得に苦戦している地方企業が多い中で、副業人材を活用しました。まずはその背景について教えてください。
メ~テレ・北川氏
私が担当している新規事業プロジェクトの事業戦略設計の伴走を副業人材に任せました。当社は6年ほど前に、新しい領域に踏み出そうと新規事業部門を立ち上げ、それからベンチャー企業と関わる機会が多くなり、社内企業家支援制度も作りました。
去年は20代の若手社員が企画した新規事業をベースに、当社初の社内ベンチャー企業が誕生しています。そうした成果は出ているものの事業立ち上げのノウハウがどうしても個人にたまっていく傾向にあり、社内で共有しながら別の新規事業を進めるほどのリソース面での余裕もないため、今回は外の人材に伴走してもらうことにしました。
lotsful・田中
新規事業を立ち上げるノウハウを、社内でなかなか共有できなかったと。
メ~テレ・北川氏
そうですね。新規事業を立ち上げるにあたって社内のノウハウを活用するには、ベンチャー企業を立ち上げた若手社員にメンバーとして入ってもらうのがいちばん早いのですが。彼にも業務があり時間が取れなかったので、それだったら社外の人に伴走してもらおうと副業人材の活用を決めました。
lotsful・田中
小清水さんの方はどのような課題があり、副業人材を活用したのですか。
寿美家和久・小清水氏
私たちの場合は、料亭の魅力を伝えながら、どうビジネスにつなげていくかを考えたときに、料理を作って提供する以上のことに挑戦する必要があるなと考えました。そこで、新たな事業をサポートできる人材の要件を洗い出し、探すことにしたんです。最初の頃はいろいろと自分たちで声をかけて人を集めていたのですが、時間がかかりとても大変でした。
そうした時にlotsfulを利用して、副業人材を採用しました。新規事業のベースがある程度出来上がった現在は、そのとき必要とするポジションを副業人材でカバーしています。リソースが足りない部分を、副業人材で埋めていくイメージですね。
lotsful・田中
lotsfulを利用する前は、どのようにポジションを埋めていたのですか。
寿美家和久・小清水氏
正社員採用で時間をかけて採用し、なんとなくできそうな人をアサインしたりしていました。「君、Web好きだよね?じゃあ、Webお願い」みたいな…無茶振りといいますか(笑)。そこで社員が踏ん張ってくれたから、今があるとも思っています。
lotsful・田中
地方企業の方と話をすると、業務委託や副業人材が本当に成果を出せるのか不安だという意見を聞くことがあります。
寿美家和久・小清水氏
地方企業の方が言っていることも理解できますね。地方ではまだ多くの企業が、対面でのコミュニケーションに重きを置く傾向にあると思います。lotsfulの場合は首都圏の副業人材が多いので、リアルで会うのは難しいですよね。そこで私たちの場合は何にこだわるかというと、すべて”成果”になります。
成果を出してくれれば助かりますし、そのために何を副業人材に任せるのかを定義しなければならない。それらを明確にできるのであれば、地方企業でも副業人材を問題なく活用できます。外部人材に依頼するのであれば、社内の体制も変えなければならないので、組織もブラッシュアップされ良い循環も生まれます。地方企業こそ、副業人材を活用するべきだと思いますね。
進めていく上で意識したこと、おさえるべきポイントは?
lotsful・田中
ここからは副業人材と業務を進めていく上で、意識したことなどを聞いていきたいと思います。
メ~テレ・北川氏
新規事業は初めての取り組みだったので、こちらも勝手がわからないことが多く、最初の段階で進め方はリードしてほしいと率直に伝えました。その後、経営層に対して新規事業を提案するタイミングから逆算してゴールを設定。タスクも洗い出していただき、スケジュール感をすり合わせていきました。
進め方としては、週に1回定例会を開催し、お互いの進捗を共有。そのときに必要なことを話し合いました。普段のやり取りはslackで行い、ミーティングをできるだけディスカッションの場にできるように調整しました。
lotsful・田中
プロジェクトに入ってもらうにあたり、認識合わせはどのように行いましたか。
メ~テレ・北川氏
当社の情報などのキャッチアップに時間がほしいと言われたので、アサインしてから1ヵ月間はその時間に使ってもらいましたね。すぐに結果がほしいと思いがちですが、キャッチアップに時間をかけた方が、後々のクオリティに良い影響があります。半年などの長期案件の場合は、この部分に時間をかけるべきだと思いますよ。
lotsful・田中
小清水さんは、どんな業務の進め方をしていましたか。
寿美家和久・小清水氏
飲食店が使うプロ食材・資材を購入するWebサイトの立ち上げプロジェクトに入ってもらったのですが、まず私がやりたいことを伝えて、副業人材に「こっちの方が上手くいきますよ」と誘導してもらったイメージです。
北川さんが言われた通り、お互いを知る時間は作るべきですね。当社の企業文化や歴史、特性を知っていた方が、プロジェクトもスムーズに進めることができますから。週に1回Web会議を開催して、普段はChatworkでやり取りしています。コミュニケーションツールはいろいろありますが、自社が使いやすいものを選んで、それを軸に進めていくのが大切ですね。
lotsful・田中
そのプロジェクトでは副業人材に、PM(プロジェクトマネージャー)を任せたと聞いています。社員はどのようにアサインしていったのですか。
寿美家和久・小清水氏
必要に応じて都度集めました。新しいプロジェクトを立ち上げる場合は、副業人材にマイルストーンを置いてもらい、当社社員の役割決めも任せて、ハンドリングしてもらっています。こうすることで、参加した社員が副業人材から業務のやり方などを学べるので、社内にナレッジを蓄積することが可能です。
lotsful・田中
PMなどの重要ポジションは社内で用意しようと思いがちですが、それを副業人材に任せて、社員のハンドリングまで任せるのはすごいですね。
寿美家和久・小清水氏
「任せる」というと、簡単そうに聞こえてしまいますが、どこまで相手に任せるのか信頼関係が重要です。その辺に関しては、lotsfulのフィルターを通して副業人材を紹介してもらっているので、安心感があります。
lotsful・田中
lotsfulが副業人材をご紹介する段階で、ある程度ふるいにかけられているから安心だということでしょうか。
寿美家和久・小清水氏
そうですね。さらに、副業人材に任せたいことなどをlotsfulの担当者に伝えると、そこにマッチする人材を紹介してくれるので助かりますね。地方で人材を探すのはとても大変ですから。lotsfulがその繋ぎをしてくれるのは、利用している理由の一つでもあります。
lotsful・田中
その他、北川さんが工夫されたことはありますか。
メ~テレ・北川氏
社内の事情は洗いざらい伝えましたね(笑)。副業人材の方は、メガベンチャーで働いている方なので、そうした会社のようにポンポン物事が進んでいく文化でないことを正直に伝えました。ただ、その方は他の大手の会社も経験されていたので、その辺の柔軟性はあると期待して採用した部分もあります。
他にも、副業人材とのWeb会議にオブザーバーでもいいのでと、部長に入ってもらいました。決裁者がその場にいるだけで、物事がとても早く進むなと。また、会社と方向性がズレそうになったら、すぐに指摘してもらえるのも非常に助かりました。
副業メンバーとの取り組み、協働することで前進したことは?
lotsful・田中
では、最後のテーマに入っていきたいと思います。小清水さんは副業人材を活用したことで、どのような成果が得られたと考えていますか。
寿美家和久・小清水氏
人材を集めるためには、正社員や契約・派遣社員、コンサルタントを雇うといったさまざまな方法があります。それらは本当に、費用対効果が高いのかということですね。正社員であれば、採用から入社して働いてもらうまで、相当な時間がかかります。期待通りの働きをするのかも未知数です。そう考えると、スピード感は圧倒的に副業の方が優れています。
実際に副業で入ってもらった方には、まず3ヵ月でWebサイトの立ち上げから集客までをゴールとしました。スケジュール的にもかなり難易度の高い仕事でしたが、なんとか形になりました。「これは凄いぞ」と、さらに3ヵ月契約を延長して、今度はWebサイトで注文が入ってからの流通工程の構築も担当してもらいました。
また、副業人材とのやり取りは基本テキストベースになりますので、依頼内容の解像度を高めて伝える必要があります。そのためには要件を固めることが重要で、それができるようになったのはリモートで副業人材を活用していたからですね。
lotsful・田中
最初の契約が3ヵ月ということでしたが、ここには何か狙いがあったのですか。
寿美家和久・小清水氏
最初はどんな人か、お互いに様子を見たいですよね。だから短期の契約にしました。その人が信頼できると感じたら、契約を延長してさらに業務を任せていきます。
lotsful・田中
北川さんは副業人材を活用したことでの成果については、どう感じていますか。
メ~テレ・北川氏
小清水さんが言われたように、正社員採用はどうしても時間がかかるので、クイックに採用できる副業人材はメリットがあります。さらにプロジェクト単位ですと、予算も限られているので、その面でも非常に効果的ではないでしょうか。コンサルティング会社であれば、副業人材と比べて報酬が1桁ちがったりしますから。社内にノウハウがたまる点も踏まえて、副業人材にコミットしてもらった方が私としては成果につながると思っています。
lotsful・田中
リモートでのコミュニケーションはいかがですか?
メ~テレ・北川氏
ほとんど問題ありませんでした。ただし、Slackでのやり取りだと意図が伝わらない場合があるので、そこはWeb会議で話し合いながら解決していきます。小清水さんの言う通りで、副業人材とはテキストでのやり取りが多いからこそ、考えを整理して相手に伝わりやすいように工夫しますので、結果的に業務効率が上がっていきますね。
寿美家和久・小清水氏
北川さんに聞いてみたかったのは、副業人材を採用するときのポイントですね。私にとっては、lotsfulの担当者との壁打ちがとても重要で。何がしたいのか、何に困っているのか。その粒度を高めるために、担当者とプロジェクトに必要なことを一緒に洗い出したりもしますが、何か意識されたことはありますか?
メ~テレ・北川氏
lotsfulの担当者との壁打ちは大切ですよね。それがあるから、こちらの求める人材を紹介してもらえると思っています。人材のデータベースを見ることができ、あとは自分で探すような副業のマッチングサービスもありますが、それだと副業人材を活用した経験がない企業は厳しいなと実際に感じました。
また副業人材を採用する際は、なるべく多くの人と面談しています。齟齬なくプロジェクトを進めるためには、相性も重要ですから。スキル以外にも、会話の進め方など含めてチームとしてうまく機能しそうかどうかは注意深く見ました。
lotsful・田中
具体的にいろいろとご説明いただき、ありがとうございました。これから人を集めて、事業を成長させていきたいと考えている地方企業に、最後に一言お願いします。
メ~テレ・北川氏
今回、副業人材を活用して気がついたのは、地方の魅力をいかした事業に理解を示してくれる方と一緒に仕事をするべきだということです。当社には東海地方の魅力を伝えるというミッションがありますので、その部分に共感していただけると、より良い成果が出せるなと感じています。地方の魅力を活かしたい企業が副業人材を活用する場合は、そうした視点も持って採用を判断してみてください。
寿美家和久・小清水氏
地方企業が成長するには、限られたリソースをどう使うかが重要です。正社員採用やコンサルティング会社への依頼はコストがかかりますし、いざ社員を雇うにしても、地方にまで来てくれるかというと、距離の壁があります。しかし、副業人材の活用はそうした壁を取り払うことができます。地方企業こそ積極的に利用してほしいですね。そして、事業をグロースさせ、地方を活性化させていってください。
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