副業で赤字が出たら節税になる?サラリーマンの節税対策とは
収入アップを目的に始めた副業でも、赤字になってしまうケースがあります。
この場合、税金面でどのような方法を取ればベストなのか分からない方も多くいらっしゃるでしょう。
今回は、副業で赤字を出した場合の対策方法について説明します。
税務署への確定申告のほか、サラリーマンの方におすすめの節税対策を、注意点も踏まえて詳しく解説します。
副業で赤字を出したら節税になる?
“副業で得た年間の所得が原則として20万円以下なら税務署への確定申告は必要ない”という基本的な知識に関しては、サラリーマンで副業をしている場合、理解されている方も多いのではないでしょうか。
本業の給与所得は赤字になることはありません。副業の場合、企業に属さず自分で事業などを行っていれば必ずしも黒字になるとは限りません。
副業で赤字を出したら、まず確定申告を行いましょう。 確定申告をすることで、本業との所得から赤字になった分を差し引くことができたり、所得税の還付などが受けられたりするケースがあります。
赤字だからと諦める前に、以下に紹介する方法をきちんと実践すれば、所得税の減額が可能です。
サラリーマンが還付を受ける方法
還付とは、払い過ぎた所得税を申告することで納税者に返還される税額のことを指し、還付金とよばれます。
一般的なサラリーマンは、毎月支払う給与から税金が源泉徴収されています。
年末調整によって、年間の給与所得からさまざまな所得控除の対象になる金額を差し引き、年間所得を算出します。
この所得金額から算出した所得税額が毎月源泉徴収されていた額の合計よりも少ない場合、税金の払い過ぎとなり、還付金として返還される仕組みです。
このように、サラリーマンの場合、確定申告は基本的に不要です。副業をしている場合は、確定申告によって還付金の返還を受けられたり、赤字の場合には本業の所得と相殺できたりする可能性があります。
損益通算を活用する
サラリーマンの場合、副業で得た所得が「事業所得」(※1)で赤字になると、損益通算(※2)によって本業の給与所得から赤字分を差し引くことができます。
本業の給与所得で源泉徴収されていた所得税などが減額され、還付される仕組みです。
ただし副業での所得が「事業所得」でなく「雑所得」(※3)の場合、給与所得との損益通算は適用されません。
この2つの所得の明確な線引きは法的に整備されていませんが、事業所得として認められるには“営利活動で継続的に収益を上げていること”が基準になります。
※1出典:国税庁HP 事業所得の課税のしくみ(事業所得)
※2出典:国税庁HP 損益通算
※3出典:国税庁HP 雑所得
青色申告を活用する
青色申告(※1)とは、「事業所得」「不動産所得」「山林所得」いずれかの所得がある個人事業主を対象とした申告納税制度のことです。
事前に必要な届出を提出して所定の手続きを行えば、所得から最大65万円の特別控除が受けられるメリットがあります。
例えば副業での所得(売上-必要経費)が65万円以下であれば、この特別控除の最大額が適用されて、所得税がゼロになる仕組みです。
また家族を青色事業の専従者にした場合、給与を経費として計上できるため、さらに節税につながります。
ただし、申告のための経理作業がシンプルな代わりに節税効果が少ない白色申告(※2)に比べると、青色申告では複式簿記(※4)での収支管理が義務付けられているため、簿記の知識がない方だと少々手間取るかもしれません。
青色申告をはじめ確定申告に関するより詳細な情報を知りたい方は、こちらの2つの記事もご覧ください。
・関連記事:副業サラリーマンが青色申告するメリット・デメリットとは
・関連記事:副業で確定申告は必要?基本からわかりやすく解説
※1出典:国税庁HP 青色申告制度
※2出典:国税庁HP個人で事業を行っている方の記帳・帳簿等の保存について
※3出典:国税庁HP 記帳や帳簿等保存・青色申告
税務署に注意
経費(※1)は、副業を行う際にかかった物品の購入代金やサービス料金などのあらゆるコストのことで、確定申告時にきちんと計上すれば節税につながります。
ただし事業に直結していなければ、経費としては認められません。プライベートでの支出はもちろんNGですが、事業で使用した場合でもすべてが計上できるわけではないので注意しましょう。
例えば副業で営業をされている方が外回りに必要なスーツやカバンなどを購入し、それらを副業でしか使用しない場合でも、残念ながら経費として計上することはできません。
このような衣料品をはじめ、飲食代などの接待交際費や家賃・水道光熱費の家事関連費は境界や按分があいまいになりがちで、意図的でなくても二重申請になる場合があります。
経費の二重申請や、税額を少なく申告する過少申告・虚偽申告は税務調査が入った場合、脱税行為とみなされ以下のようなペナルティが課せられます。
意図的でない場合 | 過少申告加算税10% |
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隠ぺいなど意図的な場合 | 重加算税35%、悪質で犯罪性が認められると刑事罰対象 |
もし、確定申告後に意図的でない間違いに気づいた場合は修正申告(※2)が行えるため、税務調査が入る前に対応しておきましょう。
また税務調査が入った場合でも、その根拠が明確で、かつ証拠となる書類を提示できれば、ペナルティを回避できる可能性もあります。
領収書や帳簿などの書類は青色申告の場合、原則7年の保管が義務付けられているため、きちんと管理しておかなければなりません。
※1出典:国税庁HP やさしい必要経費の知識
※2出典:国税庁HP 確定申告を間違えたとき
サラリーマンができる節税対策
サラリーマンができる節税対策といっても、どのような仕組みと方法で節税につながるかを知りたい方のために、おすすめできるものを以下に3例紹介していきます。
ふるさと納税
全国の都道府県など、自分が寄付したい自治体を決めることができて、実質2000円の自己負担で全国各地の名産品が返礼品としてもらえるふるさと納税。(※1)
所得控除(※2)の一つである寄付金控除(※3)を受けられるため、サラリーマンの節税対策としても人気が高く、おすすめといえるでしょう。
ワンストップ特例制度(※4)を寄付の際に自治体に申し出ておけば、サラリーマンの方でも確定申告不要なうえ、節税が可能です。
ただし、1月~12月の1年間でふるさと納税の寄付先が5団体以上ある方や、副業でも個人事業主で事業を営んでいて確定申告を行う必要がある方は、このワンストップ特例制度の対象外となるため注意しましょう。
ふるさと納税に関するより詳細な情報を知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
・関連記事:副業とふるさと納税の関係とは?メリットや納税限度額について
※1出典:総務省HP ふるさと納税の概要
※2出典:国税庁HP 所得控除のあらまし
※3出典:国税庁HP 一定の寄附金を支払ったとき(寄附金控除)
※4出典:総務省HP ふるさと納税のしくみ
iDeco
iDeCo(※1)は、正式名称が「個人型確定拠出年金」という、個人が自由に掛金と運用方法を決めることのできる年金制度のことです。
年金制度と節税は一見無関係のように思われますが、毎月自分が支払う掛金を、確定申告で所得控除として利用すれば節税することができます。
確定申告時、所得控除の一種である「小規模企業共済等掛金控除」(※2)の対象にして掛け金を増やせば、支払うべき所得税や住民税が低くなり、節税効果も高まる仕組みです。
節税額の目安となる例を以下でシミュレーション(※3)しています。
モデル例 | ・30歳 ・年収:500万円 ・毎月の掛け金:1万円 |
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1年での軽減額 | ・所得税軽減額:1万2000円 ・住民税軽減額:1万2000円 ・税制優遇額:2万4000円 |
上記の年間2万4000円は少なく感じるかもしれませんが、iDeCoは最長65歳まで掛け金の拠出が続き、このペースで掛け金を支払った場合、65歳時の税制優遇額は84万円になるため、銀行に預けるよりはるかにおトクな制度といえるでしょう。
※1出典:厚生労働省HP iDeCoの概要
※2出典:国税庁UP 小規模企業共済等掛金控除
※3出典:iDeCo公式サイト かんたん税制優遇シミュレーション
特定支出控除
特定支出控除(※1)とは、通勤費や転居費など業務上でかかった支払いが多い場合にサラリーマンでも経費が控除される制度で、その年の特定支出の合計金額が給与所得控除額の1/2相当を超えた場合、所得金額から差し引くことができます。
以前は適用条件が厳しく、利用する人は非常に少なかったものの、平成24年度の給与所得者の特定支出控除の改正(※2)で対象項目および対象者の範囲が拡大しています。
また、平成28年度には所得税法の一部改正(※3)により、適用判定の基準となる額も給与所得控除額の一律1/2に設定されました。
特定支出として適用されるものは以下のものがあり、いずれも支出の妥当性や業務における必要性を、給与などの支払者が証明しなければなりません。
勤務必要経費 | 図書費・衣服費・交際費など ※支出額上限は65万円まで |
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帰宅旅費 | 単身赴任など、本人の勤務地または居所と自宅間の行き来のために必要な支出 |
資格取得費 | 職務に直接必要な資格を取得するための支出(資格が取得できなくても可) |
研修費 | 職務に直接必要な技術や知識の習得を目的として研修を受けるための支出 |
転居費 | 転任を理由に転居のために必要な支出 |
通勤費 | 通勤のために必要な支出 |
特定支出控除額の計算を以下でシミュレーションしています。
モデル例 | ・給与収入:400万円 ・給与所得控除額:124万円 ・特定支出額80万円 の場合 |
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計算式 | 124万円(給与所得控除額)×1/2=62万円(控除の基準額) 80万円(特定支出額)-62万円(控除の基準額)=18万円(特定支出控除額) |
※1出典:国税庁HP 給与所得者の特定支出控除
※2出典:国税庁HP 給与所得者の特定支出控除の改正(P8)
※3出典:国税庁HP 所得税法等の一部を改正する法律案要綱
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