【セミナーレポート】副業の先輩にきく!<DAY2>副業で大事なのは”なぜやるか”――パンフォーユー・山口氏が語る「副業との向き合い方」
“個人と企業がともに成長できる「キャリア副業」の実現”を目指し、サービスを開始したlotsfulは3周年を迎えました。そこで今回、3周年特別企画として、「副業の先輩」から副業を成功に導くアドバイスが聞ける、オンラインセミナーを3週連続開催。7月13日(水)に行われたDAY2のセミナーでは、株式会社パンフォーユーの取締役を務める山口翔氏が登場。【人生とキャリアがおもしろくなる、副業との向き合い方〜Bizdev、マーケの副業〜】をテーマに語っていただきました。
新卒でマクロミルに入社した山口氏は、法人営業や人事、新規事業立ち上げといった業務を経験。その後、副業でビジネスをサポートしていたパンフォーユーに2021年1月に取締役として正式加入。その後も、冷凍食のさらなる拡大を目指し一般社団法人フローズンエコノミー協会を設立するなど、多方面で活躍しています。
山口氏は本業・副業に関わらず、自身の思い描くキャリアを今までどのように実現させてきたのでしょうか。セミナーの前半では、山口氏自身のキャリアに関するお話を語っていただきました。後半ではモデレーターとの対談形式で、副業との向き合い方についてディスカッション。本記事ではセミナーの模様を、ダイジェストでお届けします。
“何をやるか”よりも“なぜやるか”を大切に
セミナーの前半では、山口氏自身のこれまでのキャリアについて、そして副業において大切にしていることなどが語られました。ここからは、その内容について紹介していきます。
従来のやり方に疑問を持ち、新たな方法を模索
私は学生時代、起業にチャレンジしたもののうまくいかず、「強みがないと通用しない」と思い知りました。その後、大学4年の6月から就活を開始。成長産業で事業を展開し、かつビジョンに共感したマクロミルへ2009年に入社しました。最初は法人営業を担当していたのですが、3年目からは人事として新卒採用を担当しました。
最初はやりがいを持って取り組んでいたのですが、新卒採用自体に疑問を持つように。たとえば、海外の場合はインターンシップをしてから就職先を選ぶのに対し、日本はいまだに新卒一括採用が主流です。そうした状況を少しでも変えるため、スタートアップ40社を集めて人事連合組織を立ち上げ、独自に合同説明会を開催するようになりました。最終的には1000名規模のイベントに成長させることができたのですが、その中で大切だと感じたのは“競争より共創”。ビジョンを発信することの重要性を実感しましたね。
2014年からはマクロミルの新規事業部門である、グライダーアソシエイツへ出向。キュレーションメディア「antenna*」の広告事業の立ち上げを行なっていました。そうした中、2014年9月6日にくも膜下出血で倒れることに。この出来事が、人生の大きな転機となりました。
奇跡的に後遺症もなく仕事に復帰できたのですが、倒れる前と後では、考え方に大きな変化がありました。それまでは10 年後など、未来を見据えて逆算で物事を考えていました。しかし、「明日死ぬかも」と思うことで、今この瞬間に面白いこと・熱中できることに時間を使うべきだと考えるようになりました。そして、“明日やろうはバカやろう”という想いのもと、意思決定の時間軸も変わっていきました。
働くという時間を、大切にするために
グライダーアソシエイツがある程度成長してきたタイミングで、今までの経験をいかして、何かできることはないかと、自身のキャリアを考えるようになりました。人生において、“働く”という時間はとても長いですよね。だからこそ、新しいキャリアの可能性を模索し、1社に縛られない働き方=パラレルキャリアの可能性を漠然とイメージするようになっていきました。
そうしたタイミングで、2019年にはマクロミルの新規事業としてプレミアムアドネットワーク「craft.」を立ち上げました。そして、この事業が軌道に乗ったタイミングで、次のキャリアへ進むためにパンフォーユーに転職を決意したのです。
パンフォーユーとの出会いは、2018年になります。知人の紹介でパンフォーユーの代表(代表取締役 矢野健太氏)と会ったときに、地元の美味しいパンを広げ、地域活性化に貢献するなどサービスの見せ方を提案したんです。すると、「それなら一緒に手伝ってほしい」と誘われ、副業で参加することに。パラレルワークもありだなと考えていたので、ちょうど良いタイミングでしたね。2021年1月からは、取締役としてパンフォーユーに加入。
副業で大切にしていることは、“何をやるか”よりも“なぜやるか”。「何で副業をしているの?」と質問されたとして、それがどんな答えでも、相手から理解・共感される理由を持つべきだと考えています。私の場合は、“埋もれているけど価値あるモノ・コトとの出会いを生み出し、人々の生活を豊かにする”を軸に副業を行なっています。人生は一度きり。この瞬間を楽しめるかどうかを常に意識しながら、これからも活動していきたいですね。
失敗した経験にも、価値がある
山口氏がこれまでのキャリアや副業において大切にしていることなどについて語った後、モデレーターであるlotsful・田中/寺元とのトークセッションが行われました。その模様を対談形式で紹介していきます。
lotsful・田中
ここからは山口さんに質問をしながら、お話しいただいた内容を深掘していきたいと思います。先ほど、軸を持って副業に取り組むとありましたが、それに相応しい案件はどのように見つけているのですか?飲み会などがきっかけで、副業案件の依頼につながるといった話はよく聞くのですが。
パンフォーユー・山口氏
まさにその通りで、”飲み会きっかけ”は多いですね。そこで自分のやりたいことや考えを日頃から話しておくと、紹介してもらえることも多いです。身近にいる人からどんどんつながっていくので、実は副業サービスなどを使ったことはありません。
lotsful・寺元
たしかに、副業サービスは案件を探す入り口として利用されることが多いので、山口さんの場合は必要がないかもしれないですね。また、案件の紹介は受けられても、実際に副業でその企業にジョインするのにはまた一段難しい部分があります。面談する際にその企業を調べて自分の提供できる価値を話せるか、熱量を持って案件に取り組んでいこうと思っているか。そういった部分で、企業側とズレがある場合があります。
lotsful・田中
本業で経験を積んでいても、「副業で何ができるんだろう」、「何をやりたいんだろう」と山口さんのように言語化できている方は意外と少ないです。自身の強みや目的を言語化できているだけで、他の人と違いが出てきますよね。山口さんの中で”言語化すること”は常に意識しているのですか。
パンフォーユー・山口氏
何かに取り組むとき、「これは何でやるんだっけ」と考える習慣があります。あとは、人と話すことで言葉がまとまっていきますね。プライベートで友人と話すときでも、自分がしっくりくる言葉で「今、こんなことしていて」と説明するようにしています。
lotsful・田中
山口さんは多くのスタートアップに副業として参画した経験をお持ちですが、「この副業案件にはこのスキルをいかそう」など、具体的にイメージをして取り組んでいるのですか。
パンフォーユー・山口氏
自分に何ができるのか、すべて言語化できているかというと、そういうわけではありません。基本的には経営層はビジネスを成長させたい、社員を幸せにしたいと考えています。しかし、そうした成功は運も必要で、再現性が難しい。必ず成功する方法論はありません。
ただ、私の場合は多くの失敗を経験しているので、「これを今やったら失敗しますよ」と経営層にアドバイスができます。こうしたスキルというよりも、失敗の経験はどの案件でも共通でいかせる部分だと思っています。
マーケティングでも広告でも事業開発でも、成功したケースをそのまま別の案件に持って行っても、状況がちがうので上手くいくとは限りません。しかし、失敗には共通点があるので、いろんなケースで使えるんです。
副業はカルチャーフィットを重視
lotsful・寺元
山口さんは、副業の支援先でも”副業を受け入れる側” として面談などを担当されたことがあるとお聞きしました。実際の面談などでは、副業人材のどのような部分を見ていますか。
パンフォーユー・山口氏
これから成長するスタートアップの場合、採用を巻き戻せないので、何よりカルチャーフィットを重視しています。企業のカルチャーについては、経営層と握っておいて、その副業人材が本当にフィットできるかを見極めるようにしています。
lotsful・寺元
副業人材の活用は、スタートアップで多い傾向にありますが、一方で事業の成長に注力しているため、カルチャーの発信まで手が回っていない現状もあると思います。そうした場合、副業人材はどのような形でその企業のカルチャーをキャッチアップすればよいでしょうか。
パンフォーユー・山口氏
各部門の社員と面談などで話してみて、波長が合うか見極めるのが一番早いですね。
lotsful・田中
副業という限られた時間の中で、経営層と会話をしながらその企業のカルチャーを知るのは、かなり難しいのではないでしょうか。
パンフォーユー・山口氏
特にスタートアップのフェーズの企業のカルチャーは経営層を中心に作っていくので、彼らと会話ができれば大丈夫だと思います。もしそれが難しそうであれば、一度経営層と会いたいと頼むようにするべきです。なぜ創業したのか、これからどうなっていきたいのかをヒアリングできていないと、認識がずれてしまいます。
lotsful・寺元
本セミナーの視聴者から「事業開発やマーケティングにおいて、継続的に同じ案件に関わっていくためのポイントは?」という質問がきています。
パンフォーユー・山口氏
これらの領域は組織作りと紐づく話が多いので、自分の場合はどんなチームが必要かといった部分まで意識するようにしています。採用を含めた組織作りまで対応する案件などを担当できれば、継続的に関わることもあります。事業開発から始まり、それに付随して人事評価制度まで考えるような案件もありますね。
lotsful・田中
ご自身のスキルを掛け合わせることで、大きな価値を提供していますね。
パンフォーユー・山口氏
それは意識している部分で、スキルの旗がいくつ立てられるか。これを掛け合わせると価値が上がります。技術一本で今まできているわけではないので、私の場合は総合力で勝負しています。
lotsful・田中
このスキルの旗をいくつも立てられるようになるには、どうすれば良いでしょうか。
パンフォーユー・山口氏
本業の場合は異動がポイントです。私がマクロミルにいたとき、最初は異動に対してネガティブなイメージを持っていました。しかし、市場調査の営業から人事、広告事業の立ち上げから経営企画、組織開発、新規事業開発まで経験でき、結果的にキャリアのプラスになっています。異動は給料がそのままで、転職したようなもの。起業のためにはバックオフィスを経験するのも大切だと、希望を出して営業から経理に異動した知人もいます。これを転職で行っていたら、リスクが高いですよね。
lotsful・寺元
同じように自分の得意分野を軸に副業を行いつつ、そこから経験を広げる方法もありですね。
パンフォーユー・山口氏
受け入れてくれる企業があれば、副業で未経験の分野にチャレンジするのも有効だと思います。
「なぜ副業をするのか?」、言語化できていることが重要
lotsful・田中
視聴者からは他にも、「転職はしないと言っていたのに、パンフォーユーにジョインした理由は?」という質問がきています。
パンフォーユー・山口氏
前職時代は、デジタル広告でのパイの取り合いをしていました。それよりも、市場を広げていくことに取り組んでみたいと考えるようになったのです。パンフォーユーが提供する「パンスク」というサービスは、月額3990円で全国にある美味しいパンが食べられます。このように今までになかった“パン”という切り口で、市場を大きくしていくのは面白いなと。すでにあるサービスのリプレイスではなく、新しいものにチャレンジする。パンフォーユーには、その可能性があると思って転職しました。
lotsful・田中
やはり、キャリアに選択肢があり、そこに挑戦できるのは素晴らしいことですね。
パンフォーユー・山口氏
パンフォーユーとは2018年から副業で関わっているので、転職したら私に何ができるか、経営層も現場もわかっている状態でした。入社1日目から、バチっと業務もスタートできましたね。今、就職・転職活動の形は変わり始めています。大人のインターンシップとして副業でジョインしながら、個人と企業がお互い活躍できるイメージを持ってから転職するという、新しい流れが加速していくのではないでしょうか。
lotsful・寺元
山口さんは、ほとんどの副業案件が知人紹介というお話がありました。知り合いの企業で副業をするという難しさはないですか。
パンフォーユー・山口氏
案件は知り合いからの紹介ですが、知り合いの企業で副業をしたことはありません。基本は今まで知らなかったスタートアップにジョインしています。つまり、”知り合いの知り合い”の企業ですね。ただ、知り合いの企業で働く場合は、難しさがありそうですね。お互い厳しい評価がしにくいなどあるので、一定の距離感があった方がいいかもしれません。
lotsful・田中
視聴者から、「プライベートでも人脈を広げるコツは」という質問がありました。
パンフォーユー・山口氏
私自身フットワークが軽いので、後輩から「紹介したい人がいる」と声をかけられたら、気軽に会いに行っています。そこである企業の社長を紹介されて意気投合し、「じゃあやりますか」と副業につながるケースも多いですね。
lotsful・田中
「この人の話を聞きたい」と思ったら、友達の友達くらいにはその人がいるような世界になってきましたよね。リアルで会うのは敷居が高くても、Zoomだったらすぐに話しができたりと。
パンフォーユー・山口氏
そうですね。私も“友達の友達は友達”と思っています(笑)。その感覚ですよね。
lotsful・田中
視聴者から最後の質問になります。「副業人材を採用する際に、まずその人に求めることは?」。
パンフォーユー・山口氏
やはり、なぜ副業をやるのかという部分が、言語化されているかでしょうか。また、熱量も大切だと思います。副業人材から理由を説明されたときに、「なるほど」と共感できるかは重要ですよね。スキルのことは、その次です。スタートアップの副業だからかもしれませんが、スキルよりも熱量が大切だと思っています。
もちろん、第一にスキルを求めている企業もあると思います。ただ、スタートアップは熱量が高い人が多いので、「副業で入ってきた人、スキルフルだけどテンションがちがうな」となると、やはり残念な結果になってしまいますから。
lotsful・田中
スキルも大切ですが、なぜ副業をやるのか。その熱量が必要だと感じました。それらを言語化するために、まずは家族など身近な人に話して練習しながらまとめていくのもいいかもしれませんね。本日はありがとうございました!
(編集・取材・文:眞田幸剛)