2021.9.30

【セミナーレポート】ベンチャー企業が新領域を”攻める”には?Schoo、リプカの2社が語る、事業開発の実践法


新領域での事業開発に挑むベンチャーは数多くありますが、ノウハウや知見、リソースに限界があるため、0から1を生み出すことに悪戦苦闘している担当者は多いはずです。――そこで、lotsfulでは「新領域への0→1 実践!ベンチャーにおける事業開発の進め方」と題したオンラインセミナーを実施しました。

本セミナーでは、「大人たちがずっと学び続ける生放送コミュニティ」を運営する株式会社Schoo(スクー)の執行役員 プラットフォーム事業責任者の野島亮太氏と、SNSマーケティングなどを手がける株式会社リプカ 代表取締役CEOの塩谷拓斗氏をゲストにお迎えし、ベンチャー企業における事業開発の進め方をテーマにトークセッションを実施。Schooの教育機関DX支援事業、リプカのペット領域の新規事業の立ち上げを振り返りながら、ベンチャー企業が新たな領域に事業展開する際に重視すべきポイントや副業人材の活用法について、詳しく話していただきました。

本記事ではlotsful代表の田中みどりがモデレーターを務めたセミナーの模様を詳しくレポートします。

【ゲストスピーカー】
【画像右上】 株式会社Schoo 執行役員 プラットフォーム事業責任者 野島亮太 氏
2006年株式会社リクルートに新卒入社。分譲マンション領域にて営業に従事し、通期MVPやリクルート全社TOPGUN等多数受賞。2012年当時最年少でマネーシャーに任用。その後リクルートホールティンクスに異動し、経営企画業務や役員秘書の統括、リクルート全社でのナレッシマネシメント構築等を担当。2016年10月よりITベンチャー企業にて営業責任者として営業組織の立ち上げや拡大に従事。また、全社の事業推進責任者、新規事業責任者として事業開発も担当。2019年4月株式会社Schooに入社。VP of Salesとして法人事業責任者、セールス・CS部門の統括、新規事業開発等を担当。2021年4月より執行役員としてプラットフォーム事業を担当。

【画像左下】 株式会社リプカ 代表取締役CEO 塩谷拓斗 氏
1995年生まれ。2020年4月、「すべての心に、火を灯す。」を企業理念に掲げた株式会社リプカを創業。2021年4月には、ペットを愛する皆様に向けた「お金贈り企画」を実施するなど、精力的に活動している

【モデレーター】
【画像右下】 lotsful 代表 田中みどり
2012年新卒で株式会社インテリジェンス(現:パーソルキャリア株式会社)に入社。 IT・インターネット業界の転職支援領域における法人営業に従事。2016年より新規事業であるオープンイノベーションプラットフォームeiicon(現:AUBA)の立ち上げを行う。Consulting・Salesグループの責任者として従事し、 サービス企画、営業、マーケティング、イベント企画、経営管理などを幅広く担当。2019年6月より副業マッチングサービス「lotsful」をローンチ、代表を務める。

新規事業の立ち上げの背景、どのようなステップで進めたのか?

田中 : 早速お二人に、新規事業立ち上げの背景からお聞きしたいと思います。

野島氏 : 新規事業である高等教育機関DX支援サービスですが、2020年12月にローンチしました。実は高等教育機関への支援は、2014年から手がけていたんです。しかし、新型コロナウイルスの影響により、2030年くらいには浸透していくと予測していた大学のオンライン化が、驚くスピードで進んでいきました。そこで前倒しする形で、今回の新規事業立ち上げとなりました。

田中 : コロナ禍による授業のオンライン化という波がきて、一気にサービス化したんですね。リプカさんはペットに関わる新規事業を立ち上げ中ですが、どのような背景でスタートしたのでしょうか。

塩谷氏 : スタートアップにはよくあることですが、「どう食いつないでいくか」を考えている時期が続いて、なかなか思い描く事業を進められないでいました。そうした中でも創業した意味・ビジョンを見つめ直して、新たなドメインを検討しており、キーワードとして“思い出”というものが出てきたんです。たとえば、大切な人が亡くなったとしても、心の中には思い出がある。でもそういったことは、亡くして初めて気がつくことなんですね。

それはペットも同じなのですが、家族の一員として大切にしていても、例えば犬の平均寿命は13年と短い。その短い時間の中で生まれた思い出を形にして、プロダクト化できればと考えました。アイデアを考える中で、愛犬家の方々に向けた大規模なTwitterキャンペーン企画(「お金贈り企画」)に参加させていただき、そのような取り組みの中で、Twitterのフォロワー数が一時期10万人に増えました。その フォロワーの方々に、ペットを飼う中で課題に感じていること、解決したいことをヒアリングし、その中の意見も参考にしながらプロダクトにまとめています。

田中 : なるほど。事業化を進めるための話も出てきたところで、実現させるためのステップについて聞いていきたいと思います。一般的な事業開発はプランニングやアイデア出し、市場調査を行いつつ、事業計画を作成していきます。塩谷さんは実現させたい世界観が先にあったとのことですが、市場調査などは積極的に行ったのでしょうか。

塩谷氏 : lotsfulから紹介いただいた副業人材に、市場調査をお任せしました。その時はペットだけでなく、ドメインに関する調査を広く行ってもらいました。その中で、ペットに関する事業に可能性があること分かり、自分たちの目指す世界観と照らし合わせてビジネス化することを決めました。

野島氏 : 私からも質問なのですが、新たなプロダクトをペット領域にした決め手はどこにあったのですか。

塩谷氏 : 私自身がペットを飼っているユーザーだったこともありますが、やはり“思い出”をキーワードとして考えていた部分が大きいですね。ペットに対する思い出はなんだろうと考えた時に、人ならアルバムなどがあるのですが、ペットの思い出に関わるアウトブットが少なかったので、ここには隠れたニーズがあると感じたんです。

田中 : プロダクトのローンチはいつ頃を予定しているのですか?

塩谷氏 : 2022年2月を目指しています。当社の場合、スタートアップによくあるCTOと共同での創業ではないため、技術者が不足していました。なので、プロダクトをゼロベースで作っており、時間が必要となりました。

野島氏 : 事業計画を立てても、実際はその3倍くらい時間がかかりますよね(笑)。

塩谷氏 : 野島さんの場合、新規事業立ち上げではどのフェーズに時間がかかりましたか?

野島氏 : 私の場合は大枠の構想はすでにあったので、そこから2つのことに時間をかけました。ひとつが、高等教育機関は公共性があるので、 国や文科省、行政の指針を調べ上げること。文科省のHPアクセスランキングがあったら、私が1位だという自信があるくらい(笑)HPの内容はもちろん、審議会の議事録までチェックしていました。もうひとつ時間をかけたのが、ユーザーとなる大学の先生、職員、学生のインタビューですね。

「どこで尖らせるか?」が重要になる

田中 : 事業の立ち上げのタイミングで特に注力した部分はどこでしょうか。

野島氏 : 基本的な部分にはなりますが、PMF (プロダクトマーケットフィット)は重要視しました。どんな形だったらプロダクトに対してお金を払っていただけるかを、時間をかけて多くの学校にヒアリングしました。直接ヒアリングをするとポジティブな意見も多く出てくるのですが、「お金かけても導入したいか?」という部分をしっかりと質問に落として、意見を吸い上げていきました

田中 : プロダクトの感想だけでなく、本当に導入するか否かの判断基準をちゃんと聞いていったのですね。塩谷さんはいかがですか。

塩谷氏 : ユーザーアンケートはネガティブな意見もあるので、それにメンバーが傾きすぎないようにバランスは意識しましたね。

田中 : 「実際にこのプロダクトでいけるのか?」といった議論もあったのでしょうか。

塩谷氏 : ありました。そこからの意思決定は重要で、どんな世界を実現したいのかという部分はブラさないようにしました。アンケートやマーケティングの結果によって、自分たちの作りたいものからブレるというのは、”あるある”じゃないですか。そうなると大当たりもせず、失敗もしないプロダクトになってしまうので、どこで尖らせるかは大切ですよね。

野島氏 : ベンチャーが新規事業をスピーディーに立ち上げるには、尖らせていく必要がありますよね。ニーズばかりに気を取られると、特徴の薄い汎用性だけのサービスになってしまう。大手なら資本力を武器に広告等も活用して垂直立上げができる可能性もあるしれませんが、ベンチャーは少ない資本で勝負するのが鉄則なのでサービスが尖ってないと前に進まなくなってしまう。 ニーズを満たしながらも、その会社・サービスらしい尖った部分を考えないといけないですよね。

田中 : やはり、競合は意識してサービスを設計しますか。

野島氏 : 私たちの事業は後発になりますので、相当意識していますね。コロナによってオンライン授業が必要となり、主要な学校はWeb会議システムやLMS(学習管理システム)をすでに導入しています。その状況から課題や解決したいことを見つけ出し、最終的には当社に乗り換えてもらう必要が出てくる。当然「うちの方がいいですよ」と言えるために、競合のサービスはチェックして事業を考えていきました。

事業開発のスピードを上げるために必要なこと

田中 : 事業開発を進めるにあたり、大変だったことについてお聞かせください。

野島氏 : 先ほども話題に上がりましたが、「事業を尖らせる」と口では言っても実現は相当難しいですよね。学校からの様々な意見を参考にしながら、ニーズから外れないものを作りつつもいかに尖らせるか。実はプロダクトを形にした段階で、学校側に意見を求めたらあまりよい結果が得られなかったこともあったんです。そこでプロダクトが狙いを外していることに気がつき、やり直した部分もあります。

田中 : 様々な意見を集約しながらも、最終的にはどうやって決めていくのでしょうか。

野島氏 : 関係者全員で話し合って決めることが基本ですが、大枠が固まったら最終意思決定は社長と直接議論しながら進めています。のんびりしていては大手に勝てませんので、スピードは担保しつつ、必要な部分をつめながら形にしています。

田中 : 塩谷さんはいかがですか?

塩谷氏 : 事業開発も会社運営もさまざまな人が関わるので、コミュニケーションに関しては苦労しますよね。メンバーを巻き込みながら進めれば、意見の浸透率も高くなりますのでその点は重視しています。

田中 : 社員を巻き込んで、自分ごと化してもらうということでしょうか。

塩谷氏 : 役割分担も大切です。それらを決めることで、メンバーが自発的に動いてくれる。 メンバーが限られているので、兼務しながらもどこに責任を持つかを明確にすると進んでいけるんです。

田中 : 事業を立ち上げる経験を通して、「これをやっておけばよかった」といった振り返りや気づきはありますか?

野島氏 : もっと早く立ち上げられたかなという、反省点はあります。事業を検討する段階がよりスムーズだったら、半分の時間で進めることができたかなと。リサーチしながら、考えて、決定するといったアジャイルのような形をとっていたのですが、考えることに終わりはないので、「ここまでにはこれを決める」といったマイルストーンを立てながら進めておけばもっと違っていた部分もあった思います。

塩谷氏 : 私の場合は、あまり過去を振り返ることはしないので(笑)。ただ、重要なのは、リスクを小さいうちに摘み取っておくこと。その判断をメンバーなのか副業人材なのか、誰がするのかはちゃんと決めておいた方がいいですね。

田中 : リスクが降ってくるにしても、予想できたかどうかで対応が大きく変わってきますからね。

塩谷氏 : どこでリスクを潰すかは、事業立ち上げのスピードに関わってきますね。

副業人材には、事業の背景やビジョンを伝える

田中 : 新規事業において、副業人材をどのように活用しましたか?

野島氏 : 新規事業の大きい方向性が決まった段階で、市場リサーチを副業人材と行いました。サービスを立ち上げると開発がスタートし実務も発生するので、そこは社内のメンバーに任せながら、リサーチを副業人材に任せるという体制を作ったんです。リサーチは専門性も必要でプロは社外に多くいるので、社内でやるより早い。最初から活用しようと考えていましたね。副業人材の中にはレベルが高い人が多くいて、本業でも事業に近いところでバリバリやっているので、リサーチはそういった人に担当いただきました。

田中 : 塩谷さんは副業人材をどのように利用されていますか。

塩谷氏 : 同じく、市場リサーチを副業人材にお願いしました。リサーチを外部企業に依頼すると、使えるデータが意外と少なかったりするんですね。落ちているデータを提供するだけでなく、仮説を基にして、立ち上げメンバーの一員としてリサーチを任せたいという考えだったので、副業人材を活用することにしたんです。当社の志に共感できる方を採用し対応いただきました。

野島氏 : ベンチャーの場合、リサーチはデータをまとめるだけでなく、その結果で何を目指すか、どんな事業を立ち上げると良さそうかといった部分まで解釈してもらえると非常に助かります。「これってこういうことだよね」といった示唆を与えるところまで手を回してくれるような方ですね。当社の副業人材の方が、まさにそういった対応をしてくれました。

田中 : その他に、副業人材の活用において気をつけている部分はありますか。

野島氏 : これは社内外関係なくですが、事業に共感してもらえるかが大切です。副業人材であれば、忙しい時間の中で業務を手がけてくれていますので、いかに共感し本気になってもらえるかを意識しています。

田中 : リサーチをお願いするにしても、事業の背景やビションなどもしっかり伝えることが重要だと。

野島氏 : そうすることで、アウトプットのクオリティが格段に変わります。副業人材には優秀な方が多いので、背景やビジョンを伝えて、ゴールイメージを共有しておけば、こちらから細かいお願いをしなくても自発的に考えて、こちらが求めている以上のクオリティで調査をしたりデータを出してくれます。

田中 : 事業の熱量を伝えるには、しっかりとビジョンを伝えることが必要になりますね。

塩谷氏 : 私もそれは大切にしていて、副業人材への最初のオリエンは直接会って思いを伝えるようにしています。あとは、当社は若いメンバーが多いので、優秀な副業人材の方が「Aの方がいい」と言うと、ついその意見が正解のように感じてしまう時があります。そうであっても、私たちが「Bにしよう」と決めたら、そこは自分たちの意見を曲げないということも大事だと思っています。

Aと言われたことは、参考意見として受け止めて、そこから腹を割って副業人材の方と話し合うことにしています。何より、自分たちの目指す世界観をブラさずに進んでいくことですね。

田中 : 副業人材の意見も聞きつつ、自分たちの考えはブラさないということですね。本日は貴重なお話をありがとうございました。

(編集・取材・文:眞田幸剛)

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