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人事ノウハウ

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従業員の忌引き休暇、どう対応すればいい?日数・範囲・給与の規定から伝え方のマナーまで解説

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従業員から身内の不幸による「忌引き」の申し出があった際には、人事労務担当者が迅速かつ適切に対応することが求められます。

忌引き休暇は、多くの企業で導入されている一方、その日数や対象範囲、給与の有無といった具体的なルールは会社ごとに異なります。

本記事では、忌引き休暇の基本的な考え方に加え、就業規則で定めるべき親族の範囲、一般的な日数、給与の取り扱い、さらには従業員へ伝える際の注意点や申請手続きの流れまで、人事労務担当者が理解しておくべき実務知識を整理して解説します。円滑な制度運用と従業員との信頼関係構築にお役立てください。

忌引き休暇とは?基本的な考え方と法的な位置づけ

従業員の親族が亡くなった際に、お通夜や葬儀といった弔事に参列したり、喪に服したりするために取得できる休暇を「忌引き休暇」といいます。これは従業員の福利厚生の一環として設けられる制度であり、従業員が安心して故人を見送れるように配慮することを目的としています。

忌引き休暇は法律上の義務ではない「特別休暇」

忌引き休暇は、労働基準法で定められた「法定休暇」(年次有給休暇や産前産後休業など)とは異なり、会社が任意で設ける「法定外休暇(特別休暇)」に分類されます。

結論として、忌引き休暇の導入は法律上の義務ではありません。 したがって、制度を設けるかどうか、また設ける場合にどのような内容とするかは、各企業の判断に委ねられています。

もっとも、多くの企業では従業員のワークライフバランスやエンゲージメント向上の観点から、福利厚生の一環として慶弔休暇規程の中に忌引き休暇を定めています。制度を設ける場合には、従業員間の公平性を保ち、不要なトラブルを避けるためにも、就業規則にその内容を明確に記載することが極めて重要です。

就業規則に記載すべき主な項目は以下の通りです。

  • 休暇の名称(忌引き休暇、慶弔休暇など)
  • 対象となる従業員の範囲(正規雇用、非正規雇用など)
  • 対象となる親族の範囲と親等
  • 親族に応じた休暇日数
  • 休暇中の給与の有無(有給か無給か)
  • 申請手続きの方法と必要な証明書類

忌引き休暇の具体的な運用ルールを定めよう

忌引き休暇制度を実際に運用するためには、対象範囲、日数、給与の支払いといった具体的なルールを明確に定めることが必要です。ここでは、一般的な基準や考え方について解説します。

対象となる親族の範囲はどこまで?

忌引き休暇の対象となる親族の範囲は、法律で定められているわけではなく、各企業が就業規則において独自に設定します。

一般的には、従業員本人から見て配偶者や子、父母といった1親等、また兄弟姉妹や祖父母など2親等までが対象とされることが多いです。 企業によっては、曽祖父母やおじ・おばなど3親等までを含める場合もあります。

【親等の数え方と一般的な対象範囲】

親等 続柄(本人から見た関係) 忌引き休暇の対象
0親等 配偶者 〇(対象となることがほとんど)
1親等 子、父母(実父母・義父母) 〇(対象となることがほとんど)
2親等 兄弟姉妹(実の兄弟姉妹・義理の兄弟姉妹)、
祖父母(実の祖父母・義理の祖父母)、孫
〇(対象となることが多い)
3親等 曽祖父母、おじ・おば、甥・姪 △(企業によって異なる)

近年では、ライフスタイルの多様化に対応するため、事実婚のパートナーや同性パートナーを配偶者と同様に対象とする企業も増えています。自社の従業員構成や企業理念に合わせて、対象範囲を検討することが望ましいでしょう。

日数の目安はどのくらい?親等別の一般的な基準

忌引き休暇の日数は、故人との関係性(親等)が近いほど長く設定されるのが通例です。これも法律上の定めはないため、社会通念や他社の事例を参考にしながら企業が決定します。

故人が配偶者や実父母、子である場合は5日〜10日程度、祖父母や兄弟姉妹の場合は2日〜3日程度が一般的な目安とされています。

以下に、関係性ごとの一般的な忌引き休暇の日数を示します。

故人との関係性 忌引き休暇日数の目安
配偶者 10日間
実父母 7日間
5~7日間
兄弟姉妹 3日間
祖父母 3日間
配偶者の父母(義父母) 3~5日間
配偶者の兄弟姉妹 1~2日間
配偶者の祖父母 1~2日間
1~3日間

【日数を設定する際の注意点】

  • 起算日: 休暇の開始日を「亡くなった当日」とするか、「亡くなった翌日」とするか、あるいは「葬儀日を基準」とするかを明確に定める必要があります。
  • 土日祝日の扱い: 休暇日数に会社の公休日(土日祝日など)を含めるかどうかで、実質的な休暇期間が変わります。一般的には「暦日で計算する(土日祝日も日数に含む)」ケースが多いですが、トラブル防止のために就業規則に明記しておくことが重要です。
  • 遠方の場合の配慮: 葬儀の場所が遠方である従業員のために、通常の休暇日数に移動日として1~2日を加算する規定を設けることも有効です。

忌引き休暇中の給与は支払うべき?有給・無給の考え方

忌引き休暇は法定外休暇であるため、その期間中の給与を支払うかどうかは企業の裁量に委ねられています。

結論として、忌引き休暇を有給とするか無給とするかは、各企業の規定によります。 多くの企業では、従業員が経済的な不安を抱えることなく弔事に専念できるよう、特別休暇として「有給」で処理するケースが一般的です。

有給とする場合 ・従業員のエンゲージメントや会社への帰属意識を高める効果が期待できます。
・就業規則に「有給の特別休暇とする」旨を明記する必要があります。
無給とする場合 ・就業規則に無給であることを明記した上で、従業員が希望すれば本人の年次有給休暇を充当できる旨を案内するのが親切な対応といえます。
・無給であることを従業員に明確に伝え、認識に齟齬が生じないよう注意することが重要です。

いずれの場合においても、給与計算に影響するため、就業規則における明確な規定が不可欠です。

人事労務担当者の実務対応と従業員への伝え方

従業員から忌引きの連絡を受けた際には、人事担当者は制度的な対応に加え、従業員の心情に寄り添った丁寧な姿勢が求められます。

STEP1: 従業員からの第一報と弔意の表明

忌引きの連絡は通常、電話で直属の上司に入ることが多いです。担当者は上司から報告を受け次第、従業員本人に対してお悔やみの言葉を伝えます。

「この度はご愁傷様でございます。心よりお悔やみ申し上げます。」

事務的な案内に入る前に、まずは故人を悼み、従業員を気遣う姿勢を示すことが大切です。そのうえで、葬儀の日時や場所、喪主の氏名および本人との続柄など、必要な情報を落ち着いて確認します。

STEP2: 休暇の日数と手続きの案内

ヒアリングした情報をもとに、就業規則で定められた忌引き休暇の日数を伝えます。

口頭での連絡を基本とし、後日、正式な申請手続き(休暇届や証明書類の提出)を依頼するのが一般的な流れです。 弔事は突発的に発生するため、まずは休暇を取得してもらい、その後に必要な手続きを進める柔軟な対応が望まれます。

従業員へ伝えるべき内容は以下の通りです。

  • 適用される忌引き休暇の日数と期間(いつからいつまでか)
  • 有給か無給かの区別
  • 休暇中の緊急連絡先(原則として連絡は控えるべきですが、万一の場合に備えて確認)
  • 職場復帰後の手続き(休暇届の提出、必要書類など)

STEP3: 必要な証明書類の提出依頼

忌引き休暇の不正取得を防ぐ目的で、休暇を証明する書類の提出を求める企業は少なくありません。

ただし、身内を亡くした直後の従業員に過度な負担をかけないよう、十分な配慮が必要です。 一般的に証明書類として認められるのは、以下の通りです。

  • 会葬礼状(お礼状): 葬儀に参列した際に受け取るもので、最も一般的な証明書類です。
  • 死亡診断書(または死体検案書)の写し: 病院で発行されますが、個人情報を多く含むため、提出を求める場合は取り扱いに十分注意する必要があります。
  • 火葬(埋葬)許可証の写し: 役所で発行される公的書類です。
  • 新聞のお悔やみ欄のコピー: 地域によっては掲載される場合があります。

就業規則に提出義務を明記し、必要となる書類を事前に従業員へ周知しておくことが望ましいです。たとえば「会葬礼状など、死亡の事実を客観的に確認できる書類」と明示し、複数の選択肢を提示することで従業員の負担を軽減できます。

STEP4: 会社としての弔意の伝え方と職場への情報共有

従業員やその家族への弔意を示すため、会社として香典や供花、弔電などを手配する場合があります。これらは慶弔見舞金規程など、社内のルールに基づいて実施します。担当者は葬儀の場所や日時、喪主の情報を正確に把握し、速やかに手配を進めましょう。

また、忌引き休暇を取得する従業員の業務に支障が出ないよう、関係部署へ必要最小限の情報を共有し、業務の引き継ぎや分担を円滑に行うことも重要です。その際には、故人の氏名や死因といったプライバシー性の高い情報を取り扱う場合、最大限の注意を払う必要があります。

パート・アルバイトなど非正規雇用社員への対応はどうする?

忌引き休暇を非正規雇用の従業員に適用するかどうかも、企業の判断に委ねられています。

法律上の義務はありませんが、企業としては正規・非正規を問わず、すべての従業員に忌引き休暇を適用することが望ましい姿といえるでしょう。

同じ職場ではたらく仲間として、雇用形態に関わらず不幸があった際に同様の配慮を示すことは、多様な人材の確保や定着、ロイヤルティの向上につながります。

なお、非正規社員に忌引き休暇制度を適用しない場合であっても、本人が保有する年次有給休暇を取得できるよう促し、弔事に参加できるよう配慮することが大切です。いずれの場合も、適用範囲については就業規則や雇用契約書に明記し、入社時に説明しておくことがトラブル防止の鍵となります。

従業員に寄り添う忌引き休暇制度を整備するために

本記事では、忌引き休暇に関する基本的な考え方から、具体的な制度設計、従業員への実務対応までを解説しました。

忌引き休暇は、法律で定められていないからこそ、企業の姿勢が問われる制度です。明確で公平なルールを就業規則で定め、それを誠実に運用すること。そして何より、大切な家族を亡くした従業員の心に寄り添い、丁寧に対応すること。この二つが、従業員との信頼関係を深め、はたらきやすい職場環境を築くうえで不可欠です。

この機会に、自社の慶弔休暇制度を見直し、より従業員に配慮した、実情に合った制度へとアップデートしてみてはいかがでしょうか。

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今回は、企業のHR担当者が知っておきたい「忌引き休暇」について情報をお届けしました。

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