
レジリエンスとは?高い人の特徴から企業で高める方法まで解説
VUCAと呼ばれる不確実で変化の激しい現代において、ビジネスパーソンや組織が直面するストレスやプレッシャーは増大しています。このような環境下で、困難な状況を乗り越え、しなやかに成長していくための能力として「レジリエンス」が、今大きな注目を集めています。
本記事では、レジリエンスの基本的な定義からその重要性、さらに企業が従業員のレジリエンスを高めるための具体的な方法まで、人事労務担当者が知っておくべき知識を体系的に解説します。
ビジネスにおけるレジリエンスとは?
ビジネスにおけるレジリエンスとは、困難な状況や予期せぬ変化、強いストレスに直面した際に、それらに圧倒されることなく適応し、速やかに回復する力、すなわち「精神的な回復力」や「逆境力」を指します。
その語源は「跳ね返る」を意味するラテン語にあり、外からの力で変形した物体が元に戻る物理的な弾力性を、人の心になぞらえたものです。重要なのは、ストレスを全く感じない「鈍感さ」や、決して折れない「精神的な強さ」とは異なる点です。レジリエンスは、逆境によって落ち込んだり傷ついたりしても、そこから学びを得て、以前よりも力強く立ち直る「回復のプロセス」に焦点を当てた概念です。後天的に、誰もがトレーニングによって高めることができるスキルとされています。
レジリエンスが高い人の思考と行動の特徴
レジリエンスが高い人は、逆境を乗り越えられる「自分」を信じ、コントロール可能な現実に目を向け、周囲とのつながりを力に変える思考と行動のパターンを持っています。
彼らは生まれつき特別なのではなく、困難な状況に対処するための一定の方法を身につけています。人事担当者にとって、これらの特徴を理解することは、育成方針を検討するうえで重要です。
・自己肯定感が高い
自分の価値や能力を信じており、失敗しても「自分はダメだ」と人格全体を否定するのではなく、「今回はうまくいかなかっただけ」と事実として捉えます。そのうえで、次の挑戦への糧とすることができます。
・感情のコントロールがうまい
怒りや不安、悲しみといったネガティブな感情に飲み込まれることなく、自らの感情を客観的に認識し、適切にコントロールできます。そして、感情の波を乗りこなし、冷静な判断を保つことができます。
・柔軟な思考ができる
物事を多角的に捉え、一つの考え方に固執しません。さらに、逆境に陥った際も「これは別の視点から見ればチャンスかもしれない」と再解釈し、新たな解決策を見出します。
・楽観的である
「何とかなる」「この状況もいつかは終わる」という肯定的な未来像を持っています。その楽観性が、困難な環境下でも希望を失わず、前向きに行動し続ける原動力となります。
・他者との良好な関係を築ける
困ったときには助けを求めることができ、かつ信頼できる人間関係を築いています。一人で抱え込まず、他者からのサポートを適切に受け入れることで、困難を乗り越える力を得ます。
企業が従業員のレジリエンスを高める3つのメリット
従業員のレジリエンス向上に取り組むことは、個人を守るだけではなく、組織全体の生産性と持続可能性を高めるための戦略的な投資です。
メリット①:生産性の向上と組織の活性化
レジリエンスの高い従業員は、プレッシャーのかかる状況でもパフォーマンスを維持し、失敗から学び、新たな挑戦に意欲的です。このような人材が増えることで、組織全体に挑戦をおそれない前向きな風土が醸成され、生産性の向上とイノベーションの創出につながります。
メリット②:メンタルヘルス不調の予防と離職率の低下
レジリエンスは、ストレスへの「心の免疫力」とも言えます。従業員がストレス対処スキルを身につけることで、バーンアウト(燃え尽き症候群)やメンタルヘルス不調に陥るリスクを低減することができます。その結果、休職や離職が減少し、人材の定着率向上に大きく貢献します。これは、近年注目される「健康経営」の観点からも非常に重要です。
メリット③:変化への対応力と組織レジリエンスの強化
個々の従業員のレジリエンスは、組織全体のレジリエンス、すなわち「組織レジリエンス」の基盤となります。市場の変化や技術革新、予期せぬ危機など、企業を取り巻く環境の変化に対して、従業員一人ひとりが柔軟に対応できる組織は、全体としても変化に強く、持続的な成長が可能です。
レジリエンスを構成する主要なコンピテンシー
レジリエンスは単一の能力ではなく、いくつかの要素(コンピテンシー)が組み合わさって発揮される複合的な能力です。
これらの構成要素を理解することで、より具体的な育成アプローチが可能になります。
・自己認識(Self-awareness)
自分の感情や思考パターン、強みや弱みを客観的に理解する能力です。ストレスを感じたときに「今、自分は不安を感じているな」と認識できることが、感情コントロールの第一歩です。
・感情コントロール(Emotional control)
衝動的な感情やネガティブな思考に振り回されず、冷静さを保ちながら適切に行動を制御する能力です。アンガーマネジメントなどもその一部です。
・自己効力感(Self-efficacy)
「自分ならこの課題を乗り越えられる」という、自らの能力に対する信頼感です。過去の成功体験を振り返ることなどを通じて強化されます。
・楽観性(Optimism)
物事の肯定的な側面に目を向け、将来に対して明るい見通しを持つ能力です。困難な状況でも希望を見出し、解決策を探求する力につながります。
・関係構築力(Relationship building)
他者と信頼関係を築き、必要なときにサポートを求め、また与えることができる能力です。社会的なつながりは、強力なストレスの緩衝材となります。
従業員のレジリエンスを高めるための具体的な方法
レジリエンスは、意識的なトレーニングと環境整備によって、組織的に高めることが可能です。
① レジリエンス研修の実施
レジリエンスの概念や重要性を学ぶだけではなく、具体的なスキルを習得するための研修を実施します。物事の捉え方を変える「認知行動療法」の理論(ABCDE理論など)を応用したワークや、ストレスを軽減するマインドフルネスの実践などが効果的です。
② 心理的安全性の高い職場環境の構築
従業員が「失敗しても非難されない」「自分の意見を安心して言える」と感じられる職場環境は、レジリエンスの土台となります。心理的安全性が高い職場では、従業員は挑戦をおそれず、困ったときには助けを求めやすくなります。
③ 1on1ミーティングによる対話の促進
上司と部下による定期的な1on1ミーティングは、部下が抱える困難や悩みを早期に把握し、適切なサポートを提供する絶好の機会です。対話を通じて上司が部下の良き理解者となることで、部下の自己肯定感や自己効力感を育むことができます。
④ 感謝と承認の文化の醸成
日々の業務の中でお互いの貢献を認め、感謝を伝え合う文化は、前向きな感情を高め、人間関係を良好にします。サンクスカードの導入や、朝礼での賞賛の共有など、小さな取り組みが従業員の心のエネルギーを高めます。
⑤ セルフケアの推奨
従業員自身が心身の健康を維持するためのセルフケアも重要です。適切な休息、運動、趣味の時間を確保できるよう、長時間労働の是正や有給休暇の取得を促進し、ワーク・ライフ・バランスを支援する企業の姿勢が求められます。
変化の時代を乗り越える、しなやかな組織づくりのために
本記事では、レジリエンスの基本的な考え方から、その重要性、そして具体的な育成方法までを解説しました。
レジリエンスは、予測不可能な時代を生き抜くための、個人と組織にとっての「心のインフラ」です。それは生まれつきの才能ではなく、誰もが学び、鍛えることができるスキルです。
企業が従業員一人ひとりのレジリエンス向上を支援することは、個人の幸福につながるだけではなく、組織全体の持続的な成長を実現するための最も確実な投資と言えるでしょう。個人のスキル開発と、それを支える心理的に安全な環境づくりの両輪によって、変化にしなやかに対応できる組織を目指しましょう。
御社の業務に副業社員を検討してみませんか?
今回は、企業のHR担当者が知っておきたい「レジリエンス」について情報をお届けしました。
従業員のレジリエンスを高める制度構築や風土醸成に向けた取り組みは、社外で活躍する人事のプロに相談することもおすすめです。そして、人事労務に限らず、御社が業務全体で課題を抱えている場合には、副業人材マッチングサービス「lotsful」を活用し、課題を迅速に解決することが可能です。
コストや工数を抑えながら人材を確保できる「lotsful」なら、必要なスキルを持つ副業社員とスムーズに出会うことができます。
御社の業務の質と効率の向上に向け、「lotsful」と各領域のプロ人材がゴールまで伴走し、全力で支援いたします。一日も早く課題を解決するために、ぜひ一度「lotsful」にご相談ください!






