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【セミナーレポート】パナソニックとパーソルの人事担当者が登場!キャリアオーナーシップを醸成する仕組みの成功法とは

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社会が大きく変化する中、企業は社員一人ひとりのキャリアに寄り添った制度の構築や運用が求められています。このようなキャリア支援の中でも重要な考えが、キャリアオーナーシップ(個人が自分のキャリアに対して主体性を持って取り組む意識と行動)です。

このキャリアオーナーシップの観点から、パナソニックではグループ内の異動を可能にした公募異動を20年以上も続けてきました。パーソルグループでも、人材交流を活発にさせるキャリアチャレンジ制度(社内公募異動制度)を立ち上げ、社員のキャリアと向き合い続けています。

lotsfulでは、長年に渡ってキャリアオーナーシップを促進する人事施策を実行されてきた企業2社(パナソニック オペレーショナルエクセレンス/パーソルホールディングス)をお招きし、具体的な取り組みやその背景、成果について語っていただくオンラインイベント『先行企業に聞く!キャリアオーナーシップを醸成する仕組みとは?』を7/8に開催しました。本記事ではその模様を、ダイジェスト版でお届けします。

なお、lotsfulでは、企業内副業や異動を促進するためのプラットフォームとして「キャリアサークル by lotsful」を今秋(予定)より提供開始します。キャリアサークルは、企業の社員がスキルや経歴を入力し、公募型異動や企業内副業をはじめとする社内の求人情報に応募できるシステム。企業の人事担当者は、これまで点在していた社内の求人情報や選考状況を一括管理することができます。社内・グループ内の異動や副業に特化しており、募集掲載、応募、その後の経験の可視化までシームレスに行えることが特徴です。詳しくは、以下をご覧ください。

https://lotsful.jp/news/321

【画面左下】 ゲストスピーカー/坂本崇氏(パナソニック オペレーショナルエクセレンス株式会社 リクルート&キャリアクリエイトセンター センター長)

2006年、国立宮城工業高等専門学校専攻科を卒業後、松下電器産業株式会社(現 パナソニックグループ)へ入社。入社以来、技術者として現場の最前線でモノづくりに従事。創業者が残した言葉である「ものをつくる前に人をつくる 」の再興を志し、2018年に社内公募制度により人事部門へ異動。以来、入社後のオンボーディング支援やマネージャー支援に取り組み、現在はグループ全体の人材獲得やキャリア支援を推進する部門のマネジメントに従事。

【画面右上】 ゲストスピーカー/山崎涼子氏(パーソルホールディングス グループ人事本部 人事企画部 部長)

2008年にインテリジェンス(現パーソルキャリア)に新卒入社。入社から現在まで、一貫して人事領域を担当。2015年4月に人事情報室を立ち上げ、人事におけるIT・データ活用を開始。2018年4月~タレントマネジメント室を新設、2020年4月~、人事企画部を管掌し、グループ全体人事戦略に従事している。

【画面右下】 モデレーター/大浦征也(パーソルイノベーション株式会社 代表取締役社長、パーソルキャリア株式会社 キャリアオーナーシップ エバンジェリスト)

2002年、株式会社インテリジェンス(現パーソルキャリア)に入社。一貫して人材紹介事業に従事し、法人営業として企業の採用支援、人事コンサルティングなどを経験した後、キャリアアドバイザーに。担当領域は、メーカーやIT、メディカルやサービス業等多岐にわたり、これまでにキャリアカウンセリングや面接対策を行った転職希望者は10,000人を超える。その後、複数事業の営業本部長、マーケティング領域の総責任者、事業部長などを歴任。2017年からdoda編集長を務め、2019年10月には執行役員に就任。転職市場における、個人と企業の最新動向に精通しており、アスリートのセカンドキャリアの構築にも自ら携わる。2023年よりパーソルイノベーション株式会社に身を移し、7月に代表取締役社長に就任。社外では、公益財団法人スポーツヒューマンキャピタル(SHC)理事にも名を連ねる。

【画面左上】 司会/田中みどり(lotsful 代表)

2012年新卒で株式会社インテリジェンス(現:パーソルキャリア株式会社)に入社。 IT・インターネット業界の転職支援領域における法人営業に従事。2016年より新規事業であるオープンイノベーションプラットフォームeiicon(現:AUBA)の立ち上げを行う。Consulting・Salesグループの責任者として従事し、 サービス企画、営業、マーケティング、イベント企画、経営管理などを幅広く担当。2019年6月より副業マッチングサービス『lotsful』をローンチ、代表を務める。

パナソニックとパーソルは、なぜキャリアオーナーシップを醸成する取り組みを始めたのか

大浦

本日は2社がどのようにしてキャリアオーナーシップを推進しているのか、苦労話なども含めて聞いていきたいと思います。また、推進のためのポイントやアドバイスも伺えれば嬉しいです。早速ですが、パナソニックでは公募異動や、所属している部署に籍を置きながら同時に別の部署にも所属して仕事をする社内副業 (※パナソニックでは「社内複業」と呼ぶ)の仕組みを、どのように作っていったのでしょうか。

坂本氏

当社の場合、公募異動は20年ほど前から取り組んでおり、キャリアオーナーシップを含め、社員がどのようなキャリアを作っていくのか当たり前のように議論していました。

パナソニックでは、国内に約6万人の社員がおり、一つの労働市場を形成していると言っても過言ではなく、職種も事業も多岐に渡ります。そうした中で、社員それぞれがキャリアを作っていくべきですし、会社も後押しをしていく必要がある。だからこそ、キャリアオーナーシップという言葉がない時代から、公募異動や社内複業に取り組んできたのです。

大浦

パーソルグループにおいても、グループ内の転籍が可能なキャリアチャレンジ制度などに力を入れています。その背景について、お聞かせください。

山崎氏

きっかけは、2010年以降M&Aを通じてグループを拡大し、2016年にパーソルグループになったことですね。なぜ、パーソルという傘の下で一つになるのか。その背景には、グループ内で人材交流を図るという大きな目的があると認識しています。人材交流を活発化させる取り組みとして、キャリアチャレンジ制度などを作りました。

大浦

山崎さんに伺いたいのですが、別々の会社が一緒になりグループ間の異動が可能になると、どちらか一方に異動する社員が増えてしまいPMI(Post Merger Integration:M&A成立後の統合プロセス)がうまくいかない、ハレーションが起きてしまうといったことが懸念されますよね。

山崎氏

キャリアチャレンジ制度の設計を担当している際、その課題に直面しました。異動する社員が出るかもしれないという不安がそれぞれの組織にありますので、まずはその不安を払拭する必要がありました。社員のキャリアと組織運営のバランスをどうするべきか、人事の間でかなりの時間をかけて議論を重ねたのです。

どういった社員をキャリアチャレンジの対象にするのか、処遇の条件、異動期間をどれだけ設ければ現場は混乱しないかなど…、細かい部分まで話し合いながらルール設計しました。異動が発生した場合 その分の補填をどうするのかといった意見もありましたが、まずは社員のキャリアのためにやるべきだというポリシーを経営陣と合意しました。

坂本氏

公募異動を推進していると、「うちから異動が出たら、補填してくれるんだよね?」と言う管理職もいますし、今でもそういったことが起こっています。全ての人が納得して、ハレーションも起こさず、制度を運用していくのは限界があります。

事業なのか、社員なのか、組織をマネジメントする管理職なのか。誰がいちばん納得する制度にするべきか、さまざまな意見はありますが、当社では「事業は人なり」と創業者・松下幸之助が言い残していますので、そこにフォーカスする制度であるべきだと思っています。

山崎氏

とても共感できます。全員のメリットを取りにいくことが難しいからこそ、私たちも社員を一番のターゲットとした制度を設計しました。また、社外に転職するか迷っている社員が、キャリアチャレンジ制度で異動し、グループ内で継続して活躍してくれることは会社にとっても大きなメリットだと考えます。経営陣ともこの価値観を共有し、ここ数年でグループ内にも浸透してきたように思います。

坂本氏

これは当社も同じで、その価値観に至るまでには時間がかかりましたね。また、人的資本経営やウェルビーイングといった考え方が後追いできたので、「やっぱりそうだよね」という納得感にもつながったのかなと思います。

大浦

制度を設計し、運用していく上で、その他にも大切なポイントなどはありますか。

坂本氏

具体的に言うと直属の上司の理解ですね。たとえば、面談で目標を立てると思いますが、そこで部下のキャリアにまで触れてあげることです。数年後にチャレンジしたいことがあると部下が意思表示をしても「そうか」と共感で終わらずに、「それなら公募異動も使えるよね」とキャリアのことまで一緒に考えて言及してあげることです。

上司が理解を示さなければ、結局は公募異動もコソコソ使う制度になってしまうのです。部下のキャリアを考えて制度を使うべきだと言ってあげられるのか。直属の上司の影響は大きいですね。

大浦

山崎さんが考えるポイントは?

山崎氏

社員を応援する気持ちをどのようにして醸成していくかですね。インナーコミュニケーションによって、キャリアチャレンジを利用した人がその後どのように働いているか。楽しく働いているのであればその姿を紹介するなど、会社が応援している姿勢を示すことで、制度を使っていいんだと社員が思えるようになるはずです。

公募異動やキャリアチャレンジ制度は、リスキリングやキャリアアップにもつながる

大浦

ここからはキャリアオーナーシップの醸成を推進していく中で良かったと思えること、苦労したことについて聞いていきたいと思います。今までの話の延長線上のことでも構わないのですが、いかがでしょうか。

坂本氏

まず前提として、公募異動については20年ほど続けているので、有効な人事施策であるというのが第一にあります。経営陣や上司にも利がなかったら施策として続いていないはずと考えています。今後はさらに良いものにしていくため、興味がなかった社員にも気づきを与えられるように、説明会を開催したり、公募異動を利用した人の話を発信するなどの取り組みもしています。

大浦

たとえば、「やりたいことはまだ明確ではないが、異動を考えている」といった社員の相談する場などはあるのでしょうか。

坂本氏

そういった場は作れていないですが、社内複業によって興味がある部署で働くことは可能です。業務の20%を副業にあてられるので、週に1回程度はその部署で働くことができます。

私も以前、社内複業で別部署の社員を受け入れたのですが、その方のおかげで気づきを得られましたし、その社員もうちの部署に来て良かったと言ってくれました。その後、公募異動で、私たちの部署に実際に異動もしています。そのようなやり方もありますので、社内複業という社員版インターンシップを通して、興味のある部署の雰囲気や働いている人を知るのは有効な手段です。

大浦

山崎さんはいかがですか?

山崎氏

坂本さんがおっしゃる通り、制度を継続させることができているので、有効な施策だと判断しています。取り組んでいて良かったと思うのが、社内で職種転換を実現した社員がいることです。営業職がミドル部門に異動したり、その逆のパターンも発生しました。職種転換は社員のリスキリングやキャリアアップにもつながることなのではないかと考えています。

坂本氏

私自身、公募異動を利用してエンジニアから未経験で人事になったので、制度があって良かったと思っています。制度がない状態で、エンジニア時代に人事に異動したいと上司に言っても実現する可能性は低かったと思います。公募異動があったからこそ、チャレンジできましたね。

大浦

今話されていた職種転換、つまりキャリアチェンジを実現できる人には共通点などもあるのでしょうか。

山崎氏

難しい問いですが、一つはフィードバックを前向きに吸収できる人かもしれません。当社のキャリアチャレンジ制度は異動希望先との面談を必須としており、合格、不合格に関わらずフィードバックを受け取ることができるような仕組みにしています。足りない部分が分かれば勉強して補うなど、キャリア行動につながっている印象です。

本人や周囲の声を収集しながら、持続的な取り組みへと進化させていく

大浦

ここからは制度を推進していく中でのポイントやアドバイスも聞いていきたいと思います。「異動や副業は専門職の方が利用しやすいように感じますが、そうでない人も可能なのでしょうか?」という質問が来ていますが、これについてはいかがでしょうか。

坂本氏

スキルを持った人材が必要と思ったら、そこにフィットする方を採ればいいと思いがちですが、どのようなマインドの人材がいいのか、組織の何を変えてほしいかまで考えることが実は重要なんです。スキルだけではその組織を変えていくことはできません。

異動したい社員を募るのであれば、受け入れ側がスキル以外にどんなことを求めているのか考えてみる、そうすると専門職以外の人にも目がいくはずです。

山崎氏

専門職でなくても、異動や副業は可能だと考えます。キャリアを棚卸して、強みなどを可視化していくことが有効です。受け入れ側にも、未経験であっても意志や想いが強いタレントが欲しいといったニーズがあると思います。必要なことはお互い学びながら進んでいこうといった話ができれば、上手く噛み合っていくはずです。

大浦

その他、制度を運用するポイントなどあれば教えてください。

坂本氏

これから公募異動を始めるとするなら、その制度によってどんなメリットがあるのか明確にすることが必要です。流行りで取り入れるのであれば、HRのシステムやサービスなどと一緒で「何のために導入したんだっけ?」となってしまう場合があります。

制度の導入が社員、その上司、経営陣のそれぞれにメリットがあるのか、それを示すことができないのであれば無理をして導入する必要はありません。少しでもメリットがあって、人事に思いがあるのであれば制度を運用できるはずです。

山崎氏

キャリアチャレンジ制度をスタートさせる際に、「組織が人を採る制度」にするか「社員がキャリアを実現させる制度」にするか、どちらの軸で整理するか話し合いました。軸によって制度の設計も変わるので、軸を決めるのも運用していくためには重要です。

また、いろんな状況を想定して、ルールは緻密に作ることもオススメします。制度が続けば、さまざまな事例が出てきます。それらを収集しながら、異動した人が元気に働いているか、活躍しているか、周囲や現場の反応はどうか、声を集めながら次年度につなげていくことで持続的な制度になっていくのではないでしょうか。

大浦

最後に、「制度に対して、異動者の上司の理解を得るためにしたことや、管理職の目線合わせはどうしたのか?現場に理解やメリットを感じてもらうのは、難しいのでは」という質問がきています。

坂本氏

上司の理解は置いておいて、まずは異動したい人のキャリアを考えることですね。上司からするとメンバーがいなくなるので、やらない方がいいよねとスタックしてしまいます。そうではなく、こんなに公募異動を利用している人がいると、制度としての実績を作ることです。目線が合わない人に対しては、中長期的な目線で施策を見てもらいつつ、「これだけ実績を作っているのだから」とそのメリットを感じてもらいたいと考えています。

山崎氏

新たな制度を導入する都度、管理職向けの説明会を複数回開催しています。また、社員のキャリアオーナーシップ支援においては、管理職のサポートが欠かせないと考え、公募で開催していたキャリアデザイン研修を管理職には必須で受けてもらいました。管理職自身が体感することによって、上司と部下がキャリアについて会話できる土壌を数年かけて作ってきました。徐々にですが、こうした取り組みを広げています。

大浦

今回は公募異動やキャリアチャレンジという制度を通して、キャリアオーナーシップに関して話を聞いてまいりました。本日はありがとうございました!

社内・グループ間副業に関する実態調査
  • 大企業の40.7%は、従業員の社内・グループ間副業を容認
  • 社内・グループ間副業は、”業務時間内”かつ”30時間以内”で認める企業が7割
  • 課題は「マネジャー・管理職の理解」と「労務・給与管理」が最多 ほか

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