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人事ノウハウ

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圧迫面接とは?企業が行う意図と現代における深刻なリスク、無自覚なハラスメントへの対策

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かつての就職活動において、企業の面接官が威圧的な態度で志望者を追い詰める「圧迫面接」は、ある種の「通過儀礼」や「ストレス耐性のテスト」として、公然と行われていた時代がありました。

しかし、SNSの普及による情報拡散の加速や、ハラスメントに対する社会的な意識の変化、さらに深刻な人手不足による「売り手市場」の到来により、圧迫面接を取り巻く環境は大きく変化しています。

現代において圧迫面接を行うことは、企業にとって「百害あって一利なし」と言っても過言ではありません。それどころか、面接官が「圧迫しているつもりはない」にもかかわらず、志望者が「圧迫された」と感じる「無自覚な圧迫面接」が、新たな経営リスクとして浮上しています。

本記事では、圧迫面接の定義と特徴、企業がそれを行う(あるいは行ってしまっていた)意図、そして現代においてそれがもたらす甚大なリスクと、適切な見極め手法について、人事労務担当者や面接官が知っておくべき知識を解説します。

圧迫面接とは何か?その特徴と具体例

圧迫面接とは、面接官が志望者に対して、威圧的な態度を取り、意地悪な質問を繰り返す、あるいは否定的な発言を行うことで、志望者に精神的なプレッシャー(ストレス)を与える面接手法のことです。

具体的には、以下のような言動が圧迫面接の典型例として挙げられます。

態度・振る舞いによる圧迫

無視・無関心

志望者が話しているのにもかかわらず、あからさまに書類ばかりを見て目を合わせない、スマートフォンをいじる、頬杖をつく、あくびをする。

威圧的な態度

腕組みをしてふんぞり返る、貧乏ゆすりをする、大声を出す、机を叩く。

侮蔑的な表情

鼻で笑う、ため息をつく、冷淡な無表情を貫く。

発言・質問による圧迫

人格や能力の否定

「そんなことも知らないのか」「君、うちの会社には向いていない」「その学歴で大丈夫か」といった発言。

執拗な深掘り
(「なぜ?」の連呼)

回答に対して「なぜか」「それでどうなるか」「論理的におかしいよね」と、相手を論破するかのように詰め寄る。

思想・信条への侵害

家族構成、宗教、支持政党、尊敬する人物など、本来面接で聞くべきではない差別につながる質問をする。

回答の遮断

志望者が話している途中で「もういいよ」「それは聞いていない」と話を遮る。

重要なのは、これらが「意図的」に行われている場合だけでなく、面接官の「無意識の癖」や「不機嫌」によって行われた場合も、受け手が圧迫と感じれば、それは圧迫面接として機能してしまうという点です。

圧迫面接の現状と「無自覚化」するリスク

かつては、営業職や接客業など、ストレスのかかる職種の採用において、企業の採用マニュアルに「あえて厳しく接する」ことが盛り込まれているケースもありました。

しかし、現在はコンプライアンス意識の高まりや、ハラスメント防止法の施行などを受け、意図的かつ露骨な圧迫面接を組織的に推奨する企業は激減しています。

一方で、問題視されているのが「無自覚な圧迫面接」の増加です。

現場社員による「素人面接」の弊害

人事担当者以外の、現場の管理職やエース社員が面接官を務める場合、面接のトレーニングを受けていないことが原因で、以下のような問題が発生します。

1.「論理的」の履き違え

普段の会議と同じテンションで、「それってエビデンスはあるのか」「ロジックが甘い」と詰め寄ってしまい、学生や求職者を萎縮させる。

2.興味本位の質問

アイスブレイクのつもりで、「親御さんは何の仕事をしているのか」「恋人はいるのか」とプライベートに踏み込み、不快感を与える。

3.疲労の表出

激務の合間に面接を行うため、疲れから無表情になったり、不機嫌な態度が出たりする。

オンライン面接によるコミュニケーション不全

コロナ禍以降定着したWeb面接も、圧迫感を生む一因となっています。

画面越しでは、「うなずき」や「相槌」が伝わりにくく、面接官が真剣にメモを取っているだけ(下を向いているだけ)でも、画面の向こうの志望者には「無視されている」「話がつまらないと思われている」と映り、圧迫面接だと誤解されるケースが増えています。

かつて企業が圧迫面接を行った意図

そもそも、なぜ企業はリスクを冒してまで圧迫面接を行っていたのでしょうか。そこには、企業なりの(現在では時代遅れとされることが多い)採用戦略や意図が存在していました。

ストレス耐性の確認

最も主要な理由です。理不尽なクレーム対応や厳しいノルマがある職種において、「面接程度のプレッシャーで動揺するようでは、現場では通用しない」という考えに基づき、あえて厳しい状況を作り出し、その反応(冷静さを保てるか、感情的にならないか)を見極めようとしました。

臨機応変な対応力と論理的思考力の確認

想定外の厳しい質問や否定的な意見を投げかけられた際に、マニュアル通りの回答ではなく、自分の頭で考え、論理的に切り返せるかを見る意図です。準備してきた回答を崩すために、あえて意地悪なツッコミを入れる場合もあります。

本音や素の人間性を引き出す

和やかな雰囲気では、志望者は「良い自分」を演じ続けます。プレッシャーをかけることで、表面的な態度を剥がし、その人の本性や本音、とっさの嘘を見抜こうとする意図がありました。

企業が圧迫面接を行うことで被る甚大なリスク

現代の採用市場において、圧迫面接(と受け取られる行為)を行うことは、企業にとって計り知れない損失をもたらします。そのリスクは、単に「応募者が減る」というレベルに留まりません。

企業のブランドイメージ毀損とSNSでの拡散(炎上)

現代の就職活動生や求職者は、面接での体験をSNSや口コミサイトで共有します。

「〇〇社の面接で人格否定された」「面接官がずっとスマートフォンを見ていた」といった書き込みは、瞬く間に拡散されます。一度ついた「ブラック企業」「ハラスメント体質」というレッテルを剥がすことは極めて困難であり、採用活動だけでなく、商品やサービスの不買運動など、事業全体に悪影響を及ぼす可能性があります。

優秀な人材の辞退と機会損失

現在は、企業が求職者を選ぶだけでなく、求職者が企業を選ぶ時代です。

特に優秀な人材ほど、複数の内定を持っています。圧迫面接を行うような企業に対して、「社員を大切にしない会社」「理不尽な文化の会社」と判断し、入社を辞退するのは当然の帰結です。

圧迫面接は、企業側が自ら優秀な人材を切り捨てているようなものです。

内定辞退率の増加と採用コストの無駄

最終面接まで進んだ候補者が辞退する場合、それまでにかかった採用コスト(求人広告費、エージェント費用、面接官の人件費)はすべて無駄になります。

圧迫面接によって志望度を下げてしまうことは、投資対効果の観点からも大きなマイナスです。

法的リスク(パワーハラスメント)

採用選考中の志望者は従業員ではありませんが、面接における過度な暴言や人格否定、セクシャルハラスメントにつながる質問は、不法行為として損害賠償請求の対象となる可能性があります。

また、厚生労働省の指針においても、就職活動中の学生等に対するハラスメント防止措置が企業に求められています。

「従順な人材」しか残らないリスク

圧迫面接をクリアして入社してくる人材は、「ストレスに強い」のではなく、単に「理不尽に耐えることに慣れている」あるいは「他に行く当てがない」人材である可能性があります。

イノベーションを起こすような自律的な人材や、健全な批判精神を持つ優秀な人材は、圧迫面接を行うような組織を避けます。結果として、上司の顔色を伺うイエスマンばかりが集まる組織となり、企業の競争力を低下させる恐れがあります。

圧迫面接に代わる適切な見極め手法

では、圧迫面接を行わずに、ストレス耐性や対応力を見極めるにはどうすればよいのでしょうか。重要なのは、「面接の場でストレスを与える」のではなく、「過去の経験からストレス耐性を推測する」ことです。

構造化面接と行動事実の深掘り(STARメソッド)

「過去の行動は将来の行動を予測する」という考えに基づき、過去の困難な状況について具体的に質問します。

Situation(状況)

どのような困難な状況だったか?

Task(課題)

その時、どのような課題があったか?

Action(行動)

具体的にどのような行動をとったか?

Result(結果)

その結果、どうなったか?

例えば、「理不尽な要求をされた経験はありますか。その時、具体的にどのように対処しましたか」と聞くことで、面接の場で圧迫することなく、実際のストレス耐性や対応力を客観的に評価できます。

適性検査(SPI、性格診断など)の活用

ストレス耐性や性格特性については、客観的なデータである適性検査の結果を参考にします。面接官の主観や、短時間の面接でのパフォーマンスだけで判断するよりも精度が高く、リスクもありません。

実技試験やワークサンプルの導入

論理的思考力や対応力を評価する場合、圧迫するのではなく、具体的な課題を与えて解いてもらう方が有効です。グループディスカッションや、実際の業務に近いケーススタディに取り組ませることで、スキルを正当に評価できます。

リファレンスチェックの活用

中途採用の場合は、前職の上司や同僚のはたらきぶりを確認するリファレンスチェックを行うことで、ストレスがかかる場面での実際の振る舞いや、対人関係の構築能力を確認することができます。

面接官が意識すべき「無自覚な圧迫」の防止策

企業は、面接官(特に現場社員)に対して、以下のトレーニングを行う必要があります。

面接の目的の再定義

面接は「選別する場」であると同時に、「自社の魅力を伝え、志望度を高める場(動機付けの場)」であることを徹底します。面接官は「会社の顔」であり、その振る舞いが企業イメージそのものであることを認識させます。

「傾聴」と「承認」の徹底

志望者の話に耳を傾け、うなずきや相槌を打ち、メモを取る際は「メモを取らせていただきます」と断りを入れるなど、基本的なコミュニケーションマナーを徹底します。

Web面接の場合は、カメラを見て話す、大きめにリアクションするなどの工夫が必要です。

質問リストとNG質問の共有

思想・信条に関わる質問や、セクハラ・パワハラにつながる質問(家族のこと、結婚・出産の予定など)のリストを作成し、絶対に聞いてはいけない事項として共有します。

フィードバックの実施

面接終了後、同席した人事担当者が面接官に対してフィードバックを行います。「今の言い方は少し威圧的に聞こえましたよ」「貧乏ゆすりをしていましたよ」と、客観的な指摘を行うことで、無自覚な癖を修正させます。

まとめ:選ばれる企業になるための「対等な対話」

かつての「企業が上、求職者が下」というパワーバランスは崩壊しました。圧迫面接は、百害あって一利なしの時代遅れな手法です。

現代の採用活動において求められるのは、志望者を「試す」ことではなく、互いの価値観やビジョンが合致するかを確かめ合う「対等な対話」です。

ストレス耐性や地頭の良さは、威圧せずとも、適切な質問設計と傾聴によって十分に見極めることができます。

志望者の緊張をほぐし、最大限のパフォーマンスを引き出すことこそが、優秀な面接官のスキルであり、ひいては企業の採用力を高める鍵となります。圧迫面接からの完全な脱却と、無自覚な圧迫の防止に向け、組織全体で面接のあり方を見直す時期に来ています。

御社の業務に副業社員を検討してみませんか?

今回は、HR担当者が知っておきたいテーマとして、候補者体験を損ないかねない圧迫面接の影響や、採用ブランドへの波及リスクについても触れながら解説しました。

圧迫面接は、短期的には見極めにつながると考えられがちですが、優秀な人材の辞退や口コミ評価の低下を招く要因になることもあります。採用手法や面接設計を見直したいと感じていても、日々の業務に追われ、改善に手が回らないケースも少なくありません。

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