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人事ノウハウ

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みなし残業とは?仕組みや3つの種類、メリット・デメリットから違法となるケースまで完全解説

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求人票や雇用契約書で目にする「みなし残業」という言葉があります。「残業代が含まれているため安心である」というプラスのイメージを持つ人がいる一方で、「定額ではたらかせ放題にされるのではないか」という不安を抱く人もいます。

実務上、この言葉は非常にあいまいに用いられており、大きく分けると「固定残業代制度」と、法律上の「みなし労働時間制」の2つを指す場合があります。この2つは全く異なる制度ですが、混同されることにより、多くの労使トラブルが生じています。

本記事では、人事労務担当者が正確に理解しておくべき「みなし残業」の定義と仕組みについて解説します。特に、法律で定められた3つの種類、導入におけるメリット・デメリット、さらに違法となるリスクについて解説します。

みなし残業(みなし労働)とは?

みなし残業(みなし労働)とは、実際にはたらいた時間にかかわらず、あらかじめ定められた時間分を「はたらいたもの」として扱い、その時間に基づいて賃金を支払う仕組みの総称です。

一般的に「みなし残業」という言葉が使用される場合、以下の2つの異なる制度を指していることが多いため、まずは両者の違いを明確に理解する必要があります。

① 固定残業代制度(定額残業代)

一般的な会話や求人情報において「みなし残業」と表現される場合、その多くはこの制度を指しています。

実際の残業時間の有無にかかわらず、毎月一定時間分の残業代を「固定給」としてあらかじめ支払う制度です。
(例:月給30万円 ※うち45時間分の固定残業代8万円を含む)

なお、正確には労働基準法上の「みなし労働時間制」には該当しませんが、実務上は「みなし残業代」と呼ばれることが一般的です。

② みなし労働時間制(法律上の制度)

みなし労働時間制とは、労働基準法(※)において定められた特定の業務や状況において、「労働時間の算定が困難」である場合に、実際の労働時間ではなく、「あらかじめ定めた時間(みなし労働時間)」をはたらいたものとみなす制度です。

※出典:e-GOV法令検索「労働基準法

みなし労働時間制の仕組みと3つの種類

労働基準法では、労働時間を正確に把握・管理することが原則ですが、業務の性質上それが困難な場合や、従業員の裁量に委ねた方が効率的である場合に限り、例外的に「みなし労働時間制」の導入が認められています。

この制度には、大きく分けて以下の3つの種類があります。

① 事業場外みなし労働時間制

営業職や記者、ツアーガイドなど、業務の大部分をオフィスの外(事業場外)で行い、使用者の指揮監督が及ばず、労働時間の算定が困難な場合に適用される制度です。

仕組み

原則として「所定労働時間(定時)」をはたらいたものとみなします。ただし、通常その業務を遂行するために所定労働時間を超えてはたらく必要がある場合には、「その業務の遂行に通常必要とされる時間」をはたらいたものとみなします。

注意点

「単に外回りである」という理由だけでは適用できません。スマートフォンや携帯電話でいつでも上司の指示を受けられる状態や、訪問先や帰社時刻が細かく管理されている場合は、「労働時間の算定が困難」とは認められず、適用できません。

近年、モバイルツールの普及により、この制度の適用要件は厳格に判断される傾向があります。

② 専門業務型裁量労働制

業務の遂行方法や時間配分を、大幅に労働者の裁量(自己決定)に委ねる必要がある、特定の専門的業務に適用される制度です。

「どのような手段で行うか」「いつ行うか」について、使用者が具体的な指示を行わないことが前提となります。

対象となる業務

法律で定められた以下の20業務(+関連業務)に限定され、誰にでも適用できるわけではありません。

  • 新商品・新技術の研究開発
  • 情報処理システムの分析・設計(システムエンジニア)
  • 記事の取材・編集(記者・編集者)
  • デザイナー(衣服、インテリア、工業製品、広告など)
  • プロデューサー・ディレクター(放送番組、映画など)
  • コピーライター
  • 弁護士、公認会計士、税理士、建築士、不動産鑑定士、弁理士など
  • 証券アナリスト
  • インテリアコーディネーター
  • ゲーム用ソフトウェア創作者など
  • 銀行・証券会社等における、合併・買収(M&A)等に関する相談・助言業務(2024年4月追加)

導入手続き

労使協定を締結し、所轄の労働基準監督署長に届け出る必要があります。協定には「みなし労働時間(例:1日9時間)」などを定めます。

③ 企画業務型裁量労働制

事業運営上の重要な決定が行われる事業場(本社など)において、企画、立案、調査および分析の業務を行うホワイトカラー労働者を対象とした制度です。

対象となる業務

「経営企画室」や「人事制度の構築担当」など、自社の事業運営に影響を与える企画・立案業務であり、かつ遂行方法や時間配分について裁量があることが条件です。単なるデータ入力や、上司の指示通りの資料作成業務には適用できません。

導入手続き

専門業務型よりも導入要件が厳格です。「労使委員会」を設置し、委員の5分の4以上の多数による決議を経たうえで、労働基準監督署長に届け出る必要があります。さらに、対象労働者本人の「個別の同意」も必須です。

みなし残業(裁量労働制・固定残業代)のメリット

企業と従業員の双方にとって、適切に運用された場合のメリットを解説します。

企業側のメリット

1.人件費(残業代)の予測と管理が容易になる

毎月の残業代の変動が少なくなるため、人件費の見通しが立ちやすくなります。特に固定残業代制の場合、計算事務の負担軽減にもつながります。ただし、超過分の管理は必須です。

2.成果主義への移行促進

「長くはたらいた人が評価される(残業代がもらえる)」という時間管理の発想から脱却し、「時間にかかわらず成果を出した人が評価される」という文化を醸成しやすくなります。

3.柔軟なはたらき方の提供

出退勤時間の自由度が高まるため、自律的にはたらける優秀な人材にとって魅力的な環境となり、採用力の強化につながる可能性があります。

従業員側のメリット

1.生産性向上のインセンティブ

「早く仕事を終えても給料(みなし残業代)が減らない」ため、ダラダラ残業をするよりも、効率よく短時間で成果を出す方が「時給換算」で有利になります。これは業務効率化への強い動機付けとなります。

2.柔軟なはたらき方(ワークライフバランス)

特に裁量労働制の場合、始業・終業時刻を自分でコントロールできるため、通院や育児、趣味など、プライベートの予定に合わせたはたらき方が可能です。

3.安定した収入

実際の残業が少ない月でも、一定額の残業代が保証されるため(固定残業代の場合)、収入の変動が少なく、生活設計がしやすくなります。

みなし残業のデメリットとリスク

一方で、制度の趣旨を逸脱した運用は、深刻なデメリットをもたらすおそれがあります。

企業側のデメリット・リスク

1.労働時間管理の形骸化(健康管理リスク)

「時間は本人に任せている」と放置すると、過重労働や隠れ残業の温床となり、メンタルヘルス不調や過労死など、重大な労務リスクを招きます。

2.未払い残業代請求のリスク

制度の適用要件を満たしていない場合(例:名ばかり裁量労働、固定残業代の明示不足)には、過去に遡って多額の残業代を請求される可能性があります。

3.マネジメントの難易度向上

労働時間で管理できない分、目標設定や成果評価のスキルが管理職に求められます。適切な評価ができなければ、従業員の不満が蓄積されます。

従業員側のデメリット

1.長時間労働の常態化

「みなし時間」と「実労働時間」が乖離し、業務量が過大であっても残業代が増えない(裁量労働制の場合)ため、実質的な賃金低下や過労につながる恐れがあります。

2.「定額はたらかせ放題」の悪用

悪質な企業では、固定残業代制度を悪用し、「いくらはたらいても残業代は出ない」と誤った説明を行い、超過分の支払いを拒否するケースがあります。

これって違法?みなし残業が認められないケース

「みなし残業だから残業代は出ない」という説明は、多くの場合において誤りまたは違法です。人事担当者が絶対に押さえておくべき、違法性が問われるケースを紹介します。

ケース①:固定残業代の「超過分」を支払っていない

固定残業代制度(例:月45時間分を含む)を導入していても、実際の残業時間がその設定時間(45時間)を超えた場合は、超過分の差額を追加で支払う義務があります。

「固定給に含まれているため追加はゼロ」という運用は明確な違法です。企業は、みなし残業であっても、労働時間を正確に把握する必要があります。

ケース②:契約書での「明示」があいまい

雇用契約書や就業規則で、以下の内容が明確に区分・記載されていない場合、固定残業代自体が無効(=ただの基本給)と判断されるリスクがあります。

  • 基本給と固定残業代の金額が明確に分かれているか
     NG例:「月給30万円(残業代含む)」
     OK例:「基本給23万円、固定残業手当7万円(45時間相当分)」
  • 何時間分の残業代か明記されているか
  • 「超過分は別途支払う」旨の記載があるか

これらが不明確な場合、裁判などで「固定残業代は無効」とされ、支払済みの手当を含めた金額を基準に、改めて残業代全額の支払いを命じられることがあります。

ケース③:深夜・休日労働の割増賃金を支払っていない

ここが最大の落とし穴です。

裁量労働制(みなし労働時間制)であっても、「深夜労働(22時〜翌5時)」および「法定休日労働」の割増賃金は支払う義務があります。

「みなし労働だから全額込み」と誤解されるケースが多いですが、みなしの対象となるのはあくまで「労働時間の長さ」であり、深夜や休日の「割増」の事実まではみなされません。

※固定残業代制度の場合は、その手当の中に深夜・休日分を含める設定も可能ですが、その旨の明記と、超過分の精算が必要です。

ケース④:実態が伴っていない(名ばかり裁量労働)

専門業務型裁量労働制を導入しているものの、実態が以下のような場合、制度の適用は否定されます。

  • 上司が具体的な業務指示を出し、スケジュールの決定権が本人にない
  • 出退勤時間の管理が厳格で、遅刻・早退による控除がある
  • 対象業務(20業務など)に該当しない業務を行わせている
     例:SEとして採用したが、実際はプログラミングのみの単一作業

ケース⑤:最低賃金を下回っている

固定残業代を除いた「基本給」部分を労働時間で割ったとき、その地域の最低賃金を下回っている場合は違法です。固定残業代を高く見せるために基本給を極端に低く設定している場合などに起こり得ます。

まとめ:適正な運用こそが「はたらきがい」につながる

「みなし残業」は、決して「残業代を払わなくて済む魔法の杖」ではありません。

固定残業代制度にせよ、裁量労働制にせよ、その本質は「時間にとらわれない柔軟で生産性の高いはたらき方」を実現するための仕組みです。

企業側には、以下の3点を徹底することが求められます。

1.制度の適法性を確認する

契約書の記載、対象業務の適合性、労使協定の締結などを確認することが必要です。

2.労働時間を把握する

みなし制度であっても、健康管理(安全配慮義務)および超過分精算のために、実労働時間の把握は必須です。

3.超過分・深夜休日分を支払う

「定額はたらかせ放題」という誤解を捨て、法に基づいた精算を行う必要があります。

これらを適正に運用することで初めて、従業員は安心して裁量を発揮でき、企業はリーガルリスクを回避しながら生産性を向上させることが可能です。

御社の業務に副業社員を検討してみませんか?

今回は、HR担当者が注意しておくべきテーマとして、みなし残業制度の運用と、その背景にある業務設計の重要性についても取り上げました。

みなし残業を導入している企業では、実際の業務量が想定を超えやすく、結果として長時間労働が常態化するケースも見受けられます。こうした状況では、個人の頑張りに頼るのではなく、業務の切り分けや体制の再構築が不可欠です。

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