
【京都市】「スマート区役所」を副業人材の支援で推進、ウェルビーイングなまちを目指す
lotsfulは、内閣官房が新設した「デジタル専門人材派遣制度(人材紹介型)」の協力企業として、京都府京都市におけるDX人材活用支援を開始しました(※)。本記事では、その事例をご紹介します。
今回の取り組みでは、京都市の区役所業務に関連する複数のDXプロジェクトを2名の副業人材が支援。業務課題の整理や改善策の検討から伴走し、 市民の方々の利便性向上や、行政運営の効率化を目指しています。
DXプロジェクトを推進する自治体職員に対し、副業人材はどのようにサポートを行っていったのでしょうか。また、副業人材のスキルや経験はどのような形でプロジェクトに反映されたのでしょうか。京都市文化市民局地域自治推進室 スマート区役所推進係長 浜本義之氏にお話を伺いました。
※関連プレスリリース:副業マッチングサービス『lotsful』、京都市のDX支援を開始

京都市 文化市民局地域自治推進室
スマート区役所推進係長
浜本義之氏
2024年4月より現部署に配属。区役所業務のデジタル化に取り組んでいる。
異動前は福祉施設の監査業務などに従事しており、DX関連部署には初の着任となる。
副業人材に求めたのは、共に悩み考えるプロセス
浜本氏
京都市ではスマート区役所の取り組みとして、「誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化」を念頭に、デジタルデバイド対策に配慮した区役所業務のデジタル化を推進しており、組織の垣根を低くするコミュニケーション環境を整備することや、デジタル化により生まれる余力を福祉やまちづくりに振り向けることなどと合わせて、本市が目指す「互いにつながり、支え合い、生きがいを持って活躍できるウェルビーイングなまち」の実現に向けた柱の1つとして位置付けています。そのなかで私たちは、市民の利便性と業務効率の向上に向け、さまざまなシステムや機器の導入をプロデュースするという役割を担っています。
浜本氏
先ほども申し上げたように、京都市のデジタル化の狙いというのは、直接的にはサービスを導入することではなく、導入したサービスでどのように利便性や業務効率の向上を実現するか、という点にありますが、実際にさまざまなデジタルサービスを提供できるようになってきた今、私たちだけで各種のデジタルサービスの魅力を最大限に引き出すのは難しく、効果をさらに発揮させるにはデジタルに関する深い知見が必要だと感じていました。
また、先駆的な取り組みである職務上請求のオンライン化や証明書のデジタル交付の検討の過程で、ソリューション開発に関する理解が必要になったという事情もあります。
浜本氏
京都市は新しいもの好き、というところがあるんです(笑)。初めての試みにチャレンジしてみたかった、といったところでしょうか。また、私たち内部の職員だけで進めてしまうと、どうしても内向き志向になり、考えの及ぶ範囲で完結させてしまいがちです。そのため、客観的で専門的なアドバイスが必要でした。
最新の知識や経験による提案という点では外部委託でも可能かもしれませんが、今回は職員も一緒に組み立てていくというプロセスを重視しましたので、一緒に悩んで、考えて、提案していただいて、最適解を得る歩みを共にできる副業人材の活用のほうがより得られるところが大きいと考えました。
浜本氏
Oさんについては、多くのステークホルダーを巻き込みながら、RFP(Request for Proposal:提案依頼書)の策定からシステム導入までを一気通貫で進めてきた経験が豊富です。職務上請求のオンライン化のように新しい話を進めるときには、地方自治体、士業者、省庁など多くのステークホルダー間の調整が必要となります。非常に適する人材だと評価しました。
Tさんについては、システム開発、企画、ソフトウェアの開発プロセスコンサルティングなど幅広い経験をお持ちでした。計画立案から開発まで着実に進めていただけるだけでなく、ユーザーインターフェースやユーザーエクスペリエンス(UI/UX)の優れた、使いやすいサービスの実現が効果的に進められるのではないかと期待しました。

副業人材がデジタルサイネージ導入と職務上請求のオンライン化を推進。
浜本氏
京都市が令和6年度に導入するデジタルサービスやデジタル機器を一層効果的に活用するための提案、それから新しいデジタルサービスの構築の検討にあたって、IT技術者の視点での整理をお願いしました。
浜本氏
デジタルサービスやデジタル機器の導入はスモールスタートを予定していましたので、その後どのように拡充していくかを検討する材料として懸念点の整理、提案、ディスカッションを行い、一定の方向性を得ることをゴールとしました。
浜本氏
令和6年度の取り組みのひとつに、区役所へのデジタルサイネージの導入があり、庁舎案内というマストの機能に絞ってスモールスタートをきりました。ハードウェアの能力やインターネット接続できる利点を踏まえ、もっとできることはないか、将来的にどのようなサービスを提供できるか……など、将来の拡充を検討するにあたって、役所の常識にとらわれず提案や検討材料を出してもらっているところです。
また、職務上請求オンライン化の検討を進めているのですが、今はアナログですべて完結しており、デジタルでの仕組みが存在しません。そうした課題に対して、現在のアナログ処理のフローの視覚化やBPR提案などで強力にサポートしてくれています。
それに加えて、民間のベンダーからの提案内容を客観的な立場からかみ砕いて説明してくれたり、ITやDXに関する用語の解説やリスク、機能の活用法などの評価もしていただきました。
浜本氏
定期的な打合せはZoomで行っていますが、どうしても固い感じになってしまうことから、早い段階でお二人からSlack活用の提案があり、すぐに導入しました。クラウドストレージも活用し、情報は基本的にすべて共有しています。また、互いに遠慮なく言い合える雰囲気をつくり、不明な点を不明なまま持ち越さないように気を付けています。
浜本氏
一言で申し上げると、私たちはオンラインでのコミュニケーションに不慣れでした。単にオンラインという意味では、在宅勤務やテレワークで経験しているのですが、事業の推進にあたって外部の方と緊密なコミュニケーションを取りながら、となると、私たちの方で戸惑いや緊張感がありました。
そこで思ったのが、アナログの場面以上に、アイスブレイクが大事だなということです。複数の人間が参加するオンライン会議って開始前に待ち時間が発生しますから、IT関連のニュースや趣味など、雑談を交えながら積極的にコミュニケーションを深めていきました。

内向き志向に、刺激を与える「外からの新鮮な風」
浜本氏
副業人材を活用することで、内向き志向になりがちな組織に外部の新鮮な風を取り込めることかなと思います。とくにデジタル分野は進展が著しく、職員の自助努力には限界があるため、プロフェッショナルとの意見交換は貴重な体験であり、他に代えがたいメリットだと思います。
自治体の職員にもIT関連のスペシャリストもいますし、募集も行っているのですが、全部署のニーズを満たせるかというとなかなか難しい。その点、副業人材は気軽に活用できるメリットもあると思います。業界で最前線を走っている方々と接点を持てるというのは非常に魅力に感じています。
浜本氏
副業人材の活用には、正直不安なところもありました。地方公務員においても兼業・副業を弾力化する考えが示されるなど、副業を取り巻く環境は過渡期にあるのではないでしょうか。そのようななか、lotsfulさんは副業人材の活用支援に関した知見が深く、安心してお願いすることができました。
同業の企業さんは他にも多数ありますが、登録されている副業人材の方のレベルやサポート体制など様々で、どこに依頼するかによって、かえって私たちの負担が大きくなってしまうリスクもあります。lotsfulさんには、とくに最初の導入部分において、こちらが不慣れな部分をしっかりサポートしていただけて助かりました。
浜本氏
今後どのような形で続けるかは、折を見て検討を続けたいと考えています。今回、お二人にジョインしていただいたことによるメリット・デメリット、費用対効果を含めて、京都市の中で検証していく予定です。私自身は、この取り組みは有意義だったと捉えていますね。
(編集・取材・文:眞田幸剛)
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