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人口1,000人の長野県天龍村が挑むDX改革――副業人材との協働の軌跡を聞く

副業活用ポジション:

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lotsfulは内閣官房「デジタル専門人材派遣制度」の協力企業(※)として、長野県にある天龍村のDX支援を行いました。今回は、その副業人材活用事例をご紹介します。

長野県の南端に位置し、愛知県と静岡県に接する天龍村は、自然が豊かで人口は1,000名ほど。高齢化率が全国で3番目に高い村ですが、デジタルを活用した高齢者支援も手がけています。一方、都道府県や市とは異なり、多くの職員が業務を兼務しているため、日々の業務に追われているという課題もありました。

このような天龍村において、業務効率化を中心としたDX推進のための課題の洗い出しから計画策定のアドバイスまでを、lotsful経由で副業人材のOさんに依頼しました。自治体におけるDX推進の経験が豊富なOさんがジョインしたことにより、どのような成果や変化が生まれたのでしょうか?本プロジェクトを担当する天龍村役場の内藤氏にお話を伺いました。

※副業マッチングサービス『lotsful』、長野県天龍村のDX支援を開始
https://lotsful.jp/news/336

天龍村役場
総務課総務情報係 係長
内藤孝雄 氏

小売チェーン店の本部で業務を経験後、天龍村役場に入職。移住者誘致などに携わる。

2024年より現職となり、天龍村役場のDX推進を担当している。

副業人材が、天龍村を定期訪問

今回、天龍村役場のDX推進として副業人材を活用しましたが、どのような課題があったのでしょうか。

内藤氏

課題というよりも、正直、何をしていいのかもわからない状態でしたね。DXとはそもそもどういったことなのか、整理していく必要がありました。デジタル技術があれば、困りごとが全て解決するわけでもないですし、天龍村のような人口1,000人ほどの村と、1万人の街や10万人の都市では、取り組むことも変わってきますから。

そのような前提のもとで、改善するべき業務を検討しました。同じ組織で働いていると、やってきたことが当たり前になってしまいます。良し悪しも判断できなくなるので、外部の力を借りて改善できるものは改善していく。その取り組みの一環として、副業人材を活用したDX推進に取り組んでいくことにしました。

そこで、様々な事業会社でIT・デジタル系の業務を担当した経験や自治体のDX推進の知見も豊富な副業人材・Oさんを採用しました。Oさんに決めた理由を教えてください。

内藤氏

今回の副業人材募集では、月に1回は天龍村に来て直接話すことができる方を条件の一つにしました。Oさんはその条件をクリアしており、さらに、私と年齢も一緒だったので、考え方などが共感できた点も決め手となりました。

月に1回は天龍村に来てもらうという条件を設定したのは、どのような理由からですか。

内藤氏

オンラインだけのやり取りだと、細かい意思疎通ができない不安がありました。村に来てもらって、役場などを直接見てもらいながら議論したいと考えていたためです。ちょっとした会話の中から解決策が出てくる可能性がありますし、現場に足を運んでもらってから提案いただきたかったという思いもありました。

天龍村は、面積の9割以上が山林。村の真ん中を南北に流れる天竜川と、その支流が造るV字渓谷の中に集落が点在している。

保育や介護の現場にDXツールを導入

2024年7月から副業人材の活用をスタートさせていますが、Oさんには具体的にどのような業務を任せたのでしょうか。

内藤氏

まずは役場の業務課題を可視化することにしました。役場には40名ほどが働いているのですが、各課から数名ずつ協力してもらい、Oさんと一緒に業務に関する課題感をヒアリング。すると、50ほどの意見や要望が出てきたのです。その中からなるべく費用をかけないでも解決できそうなものを選んで対応することにしました。

取り組みが進んでいるものはありますか。

内藤氏

まず一つ目は、保育に関わるDX施策です。2025年2月から試験的に導入予定ですが、保育園の登園時に保護者が保育士に渡していた連絡ノートをアプリ化します。そして二つ目は、介護におけるDX施策となります。介護施設で使っているシステムが、看護師と介護士で違っていたため、介護記録における業務負荷がありました。現在、それぞれのシステムの統合を計画しています。

Oさんがジョインしたことによって、DX推進に関わる具体的な成果が出始めているのですね。Oさんと業務を進める上で、気をつけている点などはありますか。

内藤氏

Oさんが動いて頑張ってくれても、結局は現場がやる気にならないと何も変わらないので、その部分は気をつけています。たとえば、Oさんから保育園でのアプリ導入についてのアドバイスはもらいますが、最終的に実行をするのは保育士になるので、現場に動いてもらうという意識づけをするようにしています。

Oさんとのコミュニケーションについてお伺いします。普段はどのようにしてやり取りをしているのでしょうか。

内藤氏

SlackやWeb会議でコミュニケーションしていますが、定例などは設けていません。「来月はこのようにしましょう」といったように方針を決めておいて、どちらかが話した方がいいと判断すれば、その都度会議を開いています。

先ほど「月に1回は天龍村に来ることが副業人材の条件」というお話がありました。Oさんが天龍村に来た場合、どのようなスケジュールで動くのですか。

内藤氏

お昼頃に天龍村に来てもらって、その日の午後に現場などを見ていきます。1泊してもらい、次の日も対応するので計2日間は天龍村で現場を見たり、会議をしたりしています。オンラインでもなんとなくはお互いのことが理解できますが、月に1回直接会って相談できるのは信頼関係を構築する上で大きいと思います。

ChatGPTを取り入れ、日常業務もDX化

副業人材と働くことで、ご自身の学びや変化はありましたか。

内藤氏

一番の変化は、Oさんとの仕事で活用しているChatGPTを日常業務で使うようになったことです。条件を入れるだけで、文章の草案が作れるのでそれをもとにしています。また、村の広報誌を職員たちで制作しているのですが、文章の書き方の統一などにChatGPTを利用を検討しています。こうして振り返ってみると、少しずつですが役場自体のDX化も進んでいると思います。

今後のDX推進については、どのように考えているのでしょうか。

内藤氏

DX推進の具体的な計画を立てている最中です。計画のたたき台は私が作って、Oさんにアドバイスをもらっています。いろいろと書き過ぎても読んでもらえないので、6ページ程度のシンプルな計画書にまとめました。身近なところからDX化によって、利便性を向上させるのが大方針となります。

それでは最後に、地方自治体が副業人材を活用するメリットについて、考えをお聞かせください。

内藤氏

自治体の職員が何年〜何十年と働いていると、毎日の業務が当たり前になってしまいます。そういった状況の中で、外部人材を招いて「こんなDXツールがあるから、もっと業務を効率化できますよ」とアドバイスをもらえることが、旧態依然とした環境を変える大きなきっかけになるでしょう。そのような外部の視点を取り入れることができる点が副業人材を活用するメリットだと感じています。

(編集・取材・文:眞田幸剛)

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