副業から正社員採用へ――オプティマインドが実践したミスマッチの少ない新たな採用方法のメリットとは
今回、「lotsful magazine」が取り上げるのは、名古屋に拠点を構えるスタートアップ・株式会社オプティマインドの副業をきっかけにした、正社員採用事例です。
ラストワンマイルのルート最適化サービス「Loogia」を開発する同社では、ビジネスサイドの専門人材不足を解決するため、lotsful経由でマーケティング領域の副業人材・梅沢氏を採用。ジョインしてから約1年半でさまざまな成果を残した梅沢氏は、オプティマインド 代表・松下氏からのオファーを受ける形で、2023年1月に正社員として入社を果たしました。
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スタートアップにとって、いかにして優秀な人材を採用するのかは大きな経営課題ともいえます。本事例のように、確かな経験を持つ副業人材を正社員として迎え入れるというスキームは、この課題を解決する1つの手段になるでしょう。
そこで今回、オファーを出したオプティマインド・松下氏と、オファーを受けた梅沢氏の両名にインタビューを実施。採用や組織づくりの新たなチャネルとしての副業活用にフォーカスして、お話を伺いました。
株式会社オプティマインド
代表取締役社長
松下健 氏
名古屋大学大学院 情報学研究科 博士後期課程を単位取得満期退学し、現在は同大学大学院 情報学研究科 協力研究員。技術と実社会の架け橋になりたいという想いから、2015年にオプティマインドを創業。トヨタ自動車、三菱商事、などから約31億の資金調達を実施。2020年、 Forbes 30 under 30 Asia 2020 に選出。
株式会社オプティマインド
事業開発・マーケティング
梅沢徳宏 氏
立教大学卒業後、AOI Pro.に入社。その後、BOOKOFFでPR・マーケティング・ブランディング業務に従事し企画開発責任者に。2016年クックパッド入社、MBOしたロコガイドでtoC・toBのマーケティング統括、小会社経営など経験。2021年春よりオプティマインド社に副業で参画し、2023年よりオプティマインドへジョイン。障がい福祉事業スタートアップの経営にも従事。
「フルコミットしたい」と思わせる関係性を構築
松下氏
梅沢さんがジョインしてから早々に1on1をするようになり、マーケティングだけでなく会社の課題感など経営的な部分まで相談するようになっていました。副業という枠を超えて、いろいろと相談できる方なので、正社員として迎えたいとずっと思っていたんです。そこで、lotsfulの卒業制度(※)を使って直接契約に移行しました。
※lotsfulのサービスから卒業し、企業と副業人材間で直接取引ができる制度。
その後しばらく一緒に仕事をしながら、当社に正社員として入社してもらうために、任せたい役割や年収レンジなどを記載したオファーレターを梅沢さんに出しました。それが今から1年くらい前で、このときは「本業でチームを持ってプロジェクトを進めているから」と断られてしまったんです。その後2回ほどオファーレターを更新して、タイミングを見ながら梅沢さんに送っていました。しつこくお誘いしても迷惑だと思ったので、「あくまでこちらからのオファーなので考えてもらうだけでよいから」といった感じでしたね。
それからあるときに梅沢さんとお食事する機会があって、将来のビジョンなどを説明しながら、これからも協力してほしいと対面で話したりもしていましたね。その半年後くらいに、梅沢さんから「もっとコミットするという選択肢はありますか?」と言ってもらえて。2023年1月に正社員として入社してもらいました。
梅沢氏
2021年4月に副業人材としてジョインし、同年の夏頃に松下さんが東京に来たタイミングでランチをしました。別れてすぐに「これからも頑張っていきましょう」と熱いメッセージをSlackで送っていただき、とても熱量のある人だなと感じていました。翌年の1月に事業の構想などを話し合っている中でも、オファーレターもいただいたんです。
そのときはお断りしたのですが、オプティマインドの業務をお手伝いして1年が過ぎたあたりから、これからも続けるならフルコミットしていかなければ逆に失礼かもしれないという思いが強くなっていました。また、新規事業の相談を受けていたのですが、そのビジネスに大きな可能性も感じたので、正式に参画してフルコミットすることにしました。
松下氏
詳しくは説明できないのですが、今まで攻めていなかったターゲットに向けて、現サービスをより発展させてスケールさせるビジネスを梅沢さんと話し合っていました。
梅沢氏
そうした相談を受ける中で、事業を大きくしていく過程でコミットできることがたくさんあると感じていました。そこでバリューを発揮できるのは、私にとって大きなモチベーションになりますから。
副業だからこそ経験できること、磨けるスキルがある
梅沢氏
前職でIPOも経験し、ある程度規模も大きくなってきたタイミングで、再び事業を0→1、1→10にするような仕事に関わりたいと思い副業を始めました。そのときは転職をまったく考えておらず、副業人材として他社で仕事をしつつ、自分の経験値を増やしていくのが目的でした。世の中の役に立つ仕事をしたかったので、社会福祉系の仕事にも関わっています。
梅沢氏
業務量的な面では大変だとは思いませんでした。ただ難しいと感じていたのが、リモートで行うオプティマインドのマーケティング部門のメンバーの方たちとの効率的なコミュニケーションですね。どうすればモチベーションを上げることができるか。そして、結果が出るようにパフォーマンスを引き出す支援ができるか。副業という立場ではありましたが、そのような部分は苦戦しました。
梅沢氏
マーケティング部門の社員が自分たちで気づきを得ながら、自発的に動けるようになることが重要です。そこで、彼らの支援を中心に業務を組み立てました。具体的には、資料のフォーマットや会議体をアレンジしたり、マーケティング部門がさらに頑張っていける土台のようなものを作成の工夫をしました。そうした取り組みが奏功し、マーケティング部門が掲げる数値を倍以上に引き上げることができるなど成果も出たのだと思います。ただ、元々のメンバー皆さんの頑張りが大きいです。
本業のメンバーに対してなら、シンプルに指示を出せば解決するかもしれませんが、副業の場合はそうはいきません。松下さんと話し合いながら、マーケティング部門の価値が向上するように行動していました。こうした取り組みは、良い経験になりましたね。
副業が、ミスマッチを減らす新たな採用手法になる
梅沢氏
事業のことを理解した上でその会社に入れることや、どんな方が働いているかがわかることは、大きなメリットだと思います。オプティマインドに正式に参画するまでに、結果として半年以上かけて仕事を整理していきました。そうした手順の踏みやすさもメリットだと感じています。
松下氏
入社者に対しての「期待値のギャップ」がないのがいいですね。カルチャーが本当に合うのか、パフォーマンスを発揮できるか――そうした部分までは、通常の採用では見えづらいので。
また、CxOクラスやマネージャー候補を採用するにしても、いきなり既存社員の上に置くことは難しいですよね。半年、1年と実績を積んでからでないと、ハレーションが起こる可能性がありますから。それが梅沢さんの場合は、他の社員も彼がどんな実績を持っているかわかっていますので、細かい説明が不要な点もメリットになると思います。
梅沢氏
はい。以前転職を経験したときよりもスムーズだと感じています。オプティマインド入社後のミッションも事前にわかっていたので、迷うことなく業務を進めていくことができますね。普通の転職なら、入社直後はまずは自分で仕事を見つけるといったことも必要になりますが、そういったこともせずに、入社初日から業務を行なっていました。
松下氏
唯一困っているのが、いまだに「副業の梅沢さん」というイメージが抜けないことです(笑)。他の社員も慣れるのに、少し時間がかかりました。
松下氏
今は企業が人を選ぶのではなく、人が企業を選ぶ時代です。企業側は選んでもらうために、小手先の採用手法に頼るのではなく、事業の成長性や組織の魅力で勝負していくべきです。しかし、通常の採用プロセスだと、自社をそこまでアピールするのは難しい。だからこそ、副業がその企業を見極めるためのチャネルになっていくのではないでしょうか。
私たちの会社がある東海地方には、日本有数の大企業があり、優秀な人が多くいます。そうした企業でも、最近では副業が解禁されています。優秀な人が、どんどんスタートアップで副業をして、そのまま入社してもらえれば嬉しいですね。スタートアップ間での人材の流動があっても、大企業からの人の流れはまだまだ少ない。こうした流れを、副業から加速させてほしいですね。
梅沢氏
会社という組織にいると、人の評価もバイアスがかかってしまいます。しかし、副業では純粋な個人の評価になります。まさに個人事業主的な働き方ですね。そうした中で副業は、改めて自分のスキル、レベル感を知る機会になっていくと思います。
また、副業がきっかけで入社を考えた場合、通常の転職活動では得られないような多くの情報をもとに、さまざまな判断ができます。入社後は、スムーズに業務に入ることもできるでしょう。私自身、そうした経験を通して、副業をやっていてよかったと実感しています。
(編集・取材・文:眞田幸剛)
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