report

レポート

レポート

【セミナーレポート】TURNING POINT2023<vol.1>元doda編集長・大浦征也が語る「人材マーケット最前線」

Shareする!

個人と企業が共に成長できる「キャリア副業」の実現を目指してきたlotsfulは、サービスローンチから4周年を迎えました。これを記念して、時代の転換点に挑む先駆者たちとトークセッションを行うオンラインセミナー「TURNING POINT2023 〜副業活用の先駆者に学ぶ、新時代の人材戦略〜」を全4回開催。副業のこれからのあり方はもちろん、社内のイノベーション推進やキャリア開発、人材育成・活用といった幅広いテーマを取り上げていきます。

7月5日に開催した1回目のテーマは、「2023年人材マーケット最前線〜データでひもとく中途採用と副業〜」。総合人材サービスを展開するパーソルキャリアのキャリアオーナーシップ エバンジェリストであり、パーソルイノベーション 代表取締役社長の大浦征也がゲストとして登壇しました。

本セミナーでは、dodaの編集長を務めるなど人材業界に長く携わる大浦とlotsful代表・田中みどりが、「優秀な人材を獲得するために企業が行うこと」や「個人のキャリアアップ実現に向けどのような取り組みをするべきか」など、企業・個人双方の目線から意見を交わしました。本記事ではその模様を、ダイジェスト版でお届けします。

【画面右上】パーソルイノベーション株式会社 代表取締役社長 /
パーソルキャリア株式会社 キャリアオーナーシップ エバンジェリスト 大浦征也
2002年、株式会社インテリジェンス(現パーソルキャリア)に入社。一貫して人材紹介事業に従事し、法人営業として企業の採用支援、人事コンサルティングなどを経験した後、キャリアアドバイザーに。担当領域は、メーカーやIT、メディカルやサービス業等多岐にわたり、これまでにキャリアカウンセリングや面接対策を行った転職希望者は10,000人を超える。その後、複数事業の営業本部長、マーケティング領域の総責任者、事業部長などを歴任。2017年からdoda編集長を務め、2019年10月には執行役員に就任。転職市場における、個人と企業の最新動向に精通しており、アスリートのセカンドキャリアの構築にも自ら携わる。2023年よりパーソルイノベーション株式会社に身を移し、7月に代表取締役社長に就任。社外では、公益財団法人スポーツヒューマンキャピタル(SHC)理事にも名を連ねる。

【画面下】モデレーター/パーソルイノベーション株式会社『lotsful』 代表 田中みどり
2012年新卒で株式会社インテリジェンス(現:パーソルキャリア株式会社)に入社。IT・インターネット業界の転職支援領域における法人営業に従事。2016年より新規事業であるオープンイノベーションプラットフォームeiicon(現:AUBA)の立ち上げを行う。Consulting・Salesグループの責任者として従事し、サービス企画、営業、マーケティング、イベント企画、経営管理などを幅広く担当。2019年6月より副業マッチングサービス「lotsful(https://lotsful.jp/)」をローンチ、代表を務める。

「WHY」から導き出す、企業の強み

lotsful・田中

人材獲得は企業の大きなテーマの一つです。優秀な人材に選ばれる企業になるためには、どのようなことが必要でしょうか。

大浦

一言で表すと「WHY」が明確になっているかですね。ゴールデンサークル理論と言われていますが、「WHY」を語ることで、共感を生み出すことができます。採用市場においても、「WHY」によってその企業の存在理由や採用活動を行っている理由、それらを言語化できている企業は優秀な人材から選ばれる傾向にあります。もっと別の言い方をすると、名詞ではなく、動詞で自社を語れているか。何をやろうとしている企業なのかを、示すことが大切です。

lotsful・田中

何を解決するための会社か、何を大切にしている会社か。伝え方はいろいろありますが、動詞で語ることを意識していくのですね。個人(求職者)側が企業を選ぶ視点はいかがでしょうか。

大浦

以前は経営者が語る、大きなビジョンに求職者は注目していました。現在は、もっと身近なものに注目しているのではないでしょうか。たとえばその企業のプロダクトやサービスが、誰の何を解決するものなのか。何のために存在しているのか。ほかにも、リモート勤務は週に何回なのか。副業を解禁していないならその理由は。より個人に身近な「なぜ」に注目していますし、それらを言語化している企業は、採用市場でも一定の成果を出していますね。

lotsful・田中

「当社は打ち出すポイントなんてない」と話す企業もあります。しかし、その企業がなぜビジネスを展開しているのかなど、自社ならではの理由を伝えることが大事だと。

大浦

そうですね。まず認識してほしいのは、「強みの見つけ方は他社との比較ではない」ということです。「当社は週に3回リモート勤務ができる」とアピールしても、フルリモートのIT企業などは多くあるわけで。しかし、例えば製造業等であれば週に3回リモート勤務ができることは、強みになる可能性があります。

このように業界によって変わってきますので、自分たちが持つ強みを言語化して、分類し、組み合わせていくことが必要ですね。また、その会社で社員が働いている理由、会社が好きな理由、そうしたことを掘り下げていくのも、会社の強みの発見につながっていくはずです。

また、日本国内の企業の特徴として、「自社の弱い部分と他社の強い部分を比べて劣等感を感じる」ということがあります。相手の得意領域で勝負するのではなく、自社ならではの得意領域を探していくべきですね。

lotsful・田中

大浦さんは、パーソルキャリアが運営する転職サイト「doda」に長く携わってきましたが、時代ごとに求職者にも変化はあるのでしょうか。

大浦

2000年代の初頭は、企業が過去に何をしていたかを重要視する求職者が多くいましたので、大企業が人気でしたね。その後、メガベンチャーが現れ、強烈な個性を持った経営者たちが未来を語るようになり、求職者はそこに感化されるようになりました。そして、リーマンショックや震災、コロナを経て、最近は企業の「今」を見るようになったと思います。
過去を見てもしょうがないし、未来に賭けてもリスクがある。10年後にどれくらい給料がアップするかよりも、今いくらもらえるのか。将来どんな仕事ができるかよりも、今チャレンジできる仕事は何か。個人の考え方が、より現実的になったのではないでしょうか。

lotsful・田中

今後もこの流れは続いていくと思いますか?

大浦

揺り戻しはあると思うので、過去や未来が注目されるタイミングもあるでしょう。ただし、トレンドが変わっても、本質的な部分は変わらないと思っています。ジョブ型雇用やリスキリング、副業などさまざまな単語がその時々に取り上げられますが、まずは目の前の仕事にコミットしていくことが重要なのではないでしょうか。今ある仕事に集中する。そこから転職などを含め、自分の目指すキャリアが拓けていくと個人的には考えています。

副業(二刀流)には、「橋本聖子モデル」と「大谷翔平モデル」の2種類がある

lotsful・田中

日本企業にマッチする人材獲得・活用についてはいかがでしょうか。最近ではジョブ型雇用を導入する企業も増えています。

大浦

日本の労働環境を考えると、「新卒からジョブ型雇用でキャリアを積み上げる」、「転職しながらキャリアアップを目指す」、「副業を多用してパラレルワーカーになる」といった働き方が主流になるとは思っていません。しかし、過去を振り返ると、日本人はあまりにも自分の人生を会社に委ねていたわけで。今のミドル・シニアが外に出にくい制度になっているので、そこは変えていく必要があります。

また、20代から必ずジョブ型雇用でキャリアを積む必要があるのか。ここにも議論の余地が残っています。日本の教育カリキュラムや採用方法を、短期間で大きく変えることは難しいので、メンバーシップ型雇用で経験を積むという選択肢を残しておくべきです。今30〜40代で活躍している人の経歴を見てみると、多彩なキャリアを歩んでいます。ある一定の年次を超えたらジョブ型雇用に移行するなど、柔軟に制度を検討していくべきではないでしょうか。

lotsful・田中

ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用のハイブリットを考えていくべきだと。

大浦

すべてジョブ型雇用に移行した大企業もありますが、個人の能力開発において、意外なところに才能が眠っている場合もありますので、その対応が正解かどうかは断言できません。重要なのは日々の業務でいかに経験を積ませるか。スキルのタグをいくつ持たせることができるか。そういった部分に注力していくことが大切です。

lotsful・田中

確かに専門性だけでなく、スキルとスキルの組み合わせによって価値が発揮されるシーンが多くなったように感じます。

大浦

私の個人的な意見ですが、副業(二刀流)には「橋本聖子モデル」と「大谷翔平モデル」の2種類があると思っています。橋本聖子さんは冬季オリンピックではスピードスケート、夏季オリンピックでは自転車競技に出場されました。これは、強靭な下半身という強みをいかして、まったく別の競技にチャレンジした結果です。これを副業に当てはめると、本業での強みを他業界で活かしたパターンになります。

一方、大谷翔平選手は野球という競技において、バッターとピッチャーという別ポジションを担っています。副業で例えるなら、自分の強みを同じ業界の異なるポジションで活かしていることになります。一概にどちらが良いとは言えませんが、「大谷翔平モデル」は本業ではメーカーに勤めている人が、同じ業界の卸や販売を行っている企業に副業で入ってみることに似ています。本業ではプランニングの業務をやっているのなら、副業では同じ業界のアウトプット寄りの仕事に挑戦してみるのも「大谷翔平モデル」ですね。こうした副業の方が、得た経験を本業に活かしやすくなると考えています。

lotsful・田中

副業を活用しながら、同じ業界でも今まで経験していない仕事に挑戦する、本業とは違うスキルを磨くということですね。

積極的な情報発信が、キャリア形成に結びつく

lotsful・田中

ここからはセミナーの視聴者からの質問に答えていきます。「転職市場において、若年層の転職理由にはどんなものがありますか?」という質問がきています。

大浦

より挑戦してみたい仕事が見つかったり、そういう仕事ができる企業からスカウトがきたという理由で、転職する若手が多い傾向にあります。「何かに不満を持って転職した」というよりも、ニュートラルな気持ちで意思決定をしていますね。

そこからさらに解像度を上げてくと、給与のことや働く場所といった要素が出てきます。会社の制度として給与を上げる、転勤を廃止するといった取り組みを、若手はしっかりと見ていると思います。

lotsful・田中

ほかにも「副業経験が転職の強みになるか?」という質問もきています。

大浦

田中さんはどうお考えですか。

lotsful・田中

副業では純粋にその人のスキルを求めているので、企業に認められたということは、それらが強みになっていると言えますね。また、本業で経験していない業務があったとしても、副業でチャレンジ済みであれば、採用側もその経験をポジティブに捉えてくれます。

大浦

そこからさらに、どんな成果やアウトプットを出したのかという部分まで言えるとさらに効果的でしょう。また、副業ができるということは、業務効率が図れる人であるという評価も受けやすくなりますね。

lotsful・田中

キャリアの作り方に関して、大浦さんが意識していたことはありますか。

大浦

まずベースとして、インプットは意識していました。例えば私の場合は、毎日50ページ本を読むことを社会人になってから20年続けています。ビジネス書は250ページ程度なので、1週間に1冊、1年間で50冊読むのを20年間行なってきました。もっと多くの本を読む読書家はいますが、継続的に無理の無い範囲で毎日インプットを続ける意識はとても大事だと思います。

さらにインプットだけで終わらず、SNSで情報を発信しています。自ら積極的に発信することでいろいろな人から声をかけてもらうようになり、今までとは異なるコミュニティに参加するようになりました。そうした出会いから思わぬことが舞い込み、自分のキャリアにつながっていくのです。

よく著名人が成功体験を語るときに「たまたまDMがきて」とか「たまたまお会いして」と説明しますが、たまたまなんてあり得ません。みんな考え、情報を発信し、行動した結果ですから。あとは利き腕とは逆のフィールドに挑戦することも、キャリア形成には大事ですね。私の場合は人材系の経験・スキルを持っていましたので、経営のことなどを学びましたね。そうしたスキルの掛け算が、その人のキャリアや強みにつながっていくのです。

lotsful・田中

発信することで、「あの人はこう言っていたな」という印象付けができますよね。そこから誘いがきたりと、人とのつながりが生まれます。自分のキャリアを構築していく上でも、情報発信の大切さを改めて感じました。

大浦

もちろん、SNSだけが発信の場ではありません。誰かに考えや意見を伝えることも発信になります。

lotsful・田中

上司にやりたいこと、挑戦してみたいことをしっかり伝えるのもキャリアに良い影響を与えそうですね。今回のお話が、みなさんの一歩を踏み出すきっかけになればと思っています。本日はありがとうございました!

Shareする!

close close

lotsfulに興味をお持ちの方はこちら