【セミナーレポート】副業の先輩にきく!<DAY1>「副業に忖度はいらない」イーデザイン損保・CMO 友澤氏が語るキャリア副業戦略
“個人と企業がともに成長できる「キャリア副業」の実現”を目指し、サービスを開始したlotsfulは3周年を迎えました。そこで今回、3周年特別企画として、「副業の先輩」から副業を成功に導くアドバイスが聞ける、オンラインセミナーを3週連続開催。
7月6日(水)に行われた DAY1のセミナーでは、ヤフーや楽天など多数の大企業のデジタルマーケティング領域でその力を発揮し、現在はイーデザイン損害保険株式会社のCMOを務める友澤大輔氏が登場。【「できること」で「やりたいこと」を実現した私のキャリア副業戦略 〜DX、大手企業の副業〜】をテーマに語っていただきました。
2019年から副業をスタートさせた友澤氏は、ご自身の豊富な経験をもとに、デジタルマーケティング領域はもちろん、ベンチャー企業の若手経営者のメンターなど、業界を問わずにさまざまなポジションで活躍。また、本業のイーデザイン損保では「副業人材を受け入れる側」として組織をマネジメント。副業をする側、受け入れる側、双方の視点を持って活動を続けています。
友澤氏が本セミナーで語ったのは、「副業に忖度はいらない。専門性を持って、時代を読み、正しいことを言う。本業ファーストで、副業の経験がどう活きるかを考える」というメッセージ。
――本記事では、このように副業に取り組む上で重要となる姿勢・考え方が語られたセミナーの模様を、ダイジェストでお届けします。
自分の価値を客観視するために、継続的に職務経歴書を更新
lotsful・田中
友澤さんは今まで多くの副業を経験されてきましたが、最初の案件はどのように選ばれたのですか。
イーデザイン損保・友澤氏
最初は知り合いからの紹介でしたね。当時、転職を考えていなくても、35歳くらいまでは職務経歴書を毎年更新して、転職エージェントの方などと話しながら壁打ちを行い、経歴の棚卸しをしていました。そうした取り組みの中で、ある企業の社長と話しをしているときに、「こんな案件あるけどやってみる?」と紹介してもらったのが副業のスタートです。
まず、これから副業を始めようと考えている方にお伝えしたいのは、いきなり重い案件に入るのは避けるということ。最初は自分のキャパが把握できませんし、企業側からどんなことを依頼されるか予想もできません。ですので、ライトな案件を経験しながら、自分の向き・不向きがわかるようにしておくのがオススメです。
lotsful・田中
いきなり重い案件に関わってしまうと、本業とのバランスを取るのが難しいですよね。面白いと思ったのが、転職をしようと思っていなくても自分の職務経歴書を更新していたという部分なのですが、詳しく教えてください。
イーデザイン損保・友澤氏
副業や転職する・しないに関わらず、ビジネスパーソンにとって自分を客観視することは大切です。さらに、それらを相手に伝えることは、コミュニケーションの場で活かせます。ですので、自分のバリューを2ページほどの職務経歴書にまとめて、客観視し、行動するといったことを意識的に取り組んでいました。
lotsful・田中
これまでに取り組んできたことを言語化するのは大切ですね。職務経歴書にまとめたことを、転職エージェントなどさまざまな人に話すと。
イーデザイン損保・友澤氏
個人的には、計画的偶発性を大切にしています。副業でも転職でも結果的にはご縁になりますが、アンテナを立てて、もがいていないと優秀な人でもいい出会いはありません。転職エージェントに登録してみたり、経営層の話を聞いたりしながら、自分に合うものを選ぶ癖をつけていきます。これができると本業で上手くいってなくても、軸をブラさずに自分で選択することができるはずです。
副業案件の選び方、判断するポイントとは?
lotsful・田中
副業案件の良し悪しは、どのように判断すればよいとお考えですか。
イーデザイン損保・友澤氏
最初の頃に関わった案件で、報酬は良かったのですが、なかなか本気になれなかった仕事がありました。それは人と人とをつなげるような仕事だったのですが、依頼主は、私をただのネットワークとしか見ていなかったのです。それからは、同様の案件に関わらないようにしています。
良い案件については、現在でもお付き合いのあるベンチャーの話になります。報酬はそこまで高くないのですが、なぜ続けているのかというと、私にしかできない仕事だと思っているからです。主にベンチャーの若手社長の壁打ち相手になっているのですが、今まで大企業の社長直下で働いていた私の経験をもとに、エグゼクティブコーチング的な立ち位置で相談に乗っています。
このように私を信頼して依頼された案件、私にしかできないと思った案件は、積極的にやるようにしていますね。他にも、タスクやミッションが明確であり、情熱を持って依頼をしてきた人は嘘をつかないので、そうした場合もお手伝いするようにしています。
lotsful・寺元
案件の目的などをしっかりと見極めた上で参画するという考えもありますが、「まずは副業を始めてみよう」といった考えもあると思います。まだ副業をやったことがない人は、経験としてまずは第一歩を踏み出してみるのがよいのか。自分に合う副業を見極めて、参画するべきか。どちらがオススメなのでしょうか。
イーデザイン損保・友澤氏
自分に合う副業を見極めて参画することをオススメします。たとえば、転職の場合は生活がかかっていますので、さまざまな要素を考え、妥協する点も出てくるでしょう。しかし、副業であれば、その妥協が必要ありません。副業だからこそ、キャリアアップやスキルアップなど、実現させたいことを明確にし、ポジティブな考えで始めないと長続きしません。
前向きに副業に取り組んでいれば、「キャパがキツいので辞めたい」と雇い主に相談しても、「契約条件を良くするから続けてほしい」といった提案がくることも珍しくありません。なんとか副業をやりたいからと下手に出ると、その後が苦労します。話になかった仕事をいきなり振られたり、予算の関係だからと相談もされずに契約を切られたり。雑に案件を選べば、雑に扱われるようになります。副業はしっかりと選ばないと、本業よりも苦労する場合があります。
「スコープを明確にすること」が大切
lotsful・田中
視聴者から質問がきているのでご紹介します。「自分のコアスキルを活かして副業を行う場合が多いと思いますが、業務経験がない領域にはどのように入り込んでいくか?」という内容です。
イーデザイン損保・友澤氏
私の場合は仕事内容よりも、本業と副業の業界がかぶらないようにして、違う領域を経験しています。同じマーケティング領域であっても、業界が変われば得られる経験もまた変わります。本業ではベンチャー系のSaaSに関わったことはありませんが、副業ではそれを経験し、大企業とは異なる考え方、お金の稼ぎ方、スピード感もまったく異なると感じました。
業界や領域が違ったとしても、コンピテンシーは共通で、自分が持つネットワークを使ったり、コミュニケーションによって課題を解決する。そういったことは、結局は場数が大切です。コンピテンシーを磨くために、副業でちがう領域に関わるのは効果的だと思います。スキルだけだと市場価値は上がりません。コンピテンシーを備えることで、継続性を持って案件に関われるようになります。
lotsful・田中
他にも「大企業で副業をやる上で、気をつけている点はありますか?」という質問がきています。
イーデザイン損保・友澤氏
スコープを明確にすることです。明確にしておかないと、急によくわからない仕事を振られることがあります。ただ、急に仕事を振られるのは、信頼されている証拠でもありますので、やるのであれば報酬をしっかりともらうことをおすすめします。そうしないと、自分の価値やモチベーションを上げることにつながりません。
スコープを明確にするには、場数を踏まないとなかなか対応できないので、最初は副業サービスに支援してもらうのか、何回も確認するなど意識的に行動していく必要があります。
lotsful・田中
私たちlotsfulも企業と副業人材の間に入ってマッチングを行なっていますが、案件にジョインした最初の1ヵ月の過ごし方が大切だと感じています。どんどん仕事を振られると、結局何をするべきかボヤけてしまう。最初にミッションを明確にすり合わせをし、マイルストーンを置いて、取り組んでいくのが大切です。
スコープを決めておけば、企業側と副業人材側で業務の振り返りもできるようになりますね。他にも副業をやる上で、身につけておいた方がよいことはありますか。
イーデザイン損保・友澤氏
忖度しないのもそうですね。意識しないと、どうしても忖度してしまうので、ダメなことはダメと言うべきです。細かい点になりますが、議事録を取るくせをつけるのも非常に役に立ちます。企業側の意見が変わることは珍しくないので、テキストに落としておけば、後でしっかりと意見が言えますから。また、会議の終わりに議事録をもとに「やることは、これとこれですね」とまとめてあげると、「コイツできるな」となります(笑)。
lotsful・田中
今までの副業経験の中で、しくじりと言いますか、上手くいかなかったことはありますか。
イーデザイン損保・友澤氏
いろいろありますよ。かなり規模の大きなベンチャーで、パーセプションフロー・モデルの調査プロジェクトをやることになり、実際に調査する企業を私が紹介しました。副業案件だったこともあり、進捗を追えていなかったのですが、プロジェクトが上手く進んでいなかったことが後で判明。結果、そのベンチャーとも疎遠になってしまったケースがあります。
アドバイザーやコンサル的なポジションで副業に入る場合が多いのですが、そのような時は企業側にコミットできる担当者を置いてもらい、その担当者と私が密に関わりながら進めるべきだったと反省があります。本業と副業で業務の関わり方を切り換えていかないと、副業側も企業側も不幸になってしまいますね。
副業していることを隠す必要はない
lotsful・田中
本業のイーデザイン損保では、副業人材を受け入れる側でもあります。忖度しないなど意識的な部分を含め、副業人材に求めていることを教えてください。
イーデザイン損保・友澤氏
まずは、自分の強みが何かをはっきりさせてほしいですね。仕事をもらうために、「なんでもできる」と言う人もいますが、その“できる”のレベルが低いとお互い不幸になってしまいます。正直にできるレベルを話してくれると、親切な人だなと好感を持ちますね。
lotsful・田中
「友澤さん自身、転職した際に副業をやっていることは会社に伝えましたか?」という質問が視聴者からきています。
イーデザイン損保・友澤氏
伝えていますね。ここで何が大事かというと、副業をやっている理由です。「やりたいことを実現させるため」という部分が明確であれば、隠す必要はありません。あとは本業に迷惑をかけなければ大丈夫かと。他の企業から評価されているのはバリューになるので、副業をやっていることは隠さず言うべきではないでしょうか。
lotsful・田中
他にも、「副業が許可制だが、申請すると会社に居づらくなるのではと心理的ハードルがある」という質問もあります。
イーデザイン損保・友澤氏
副業が許可制の企業なら、申請して問題ないと思います。そもそも、副業で嫌な顔をする企業は許可制ですらないでしょうから。私自身、副業をしていて居づらくなったことはありません。副業をやっていると自ら社内に発信する必要はありませんが、ちゃんと申請して堂々としているべきです。
lotsful・田中
それでは最後に、今後の友澤さんのキャリアについて教えてください。
イーデザイン損保・友澤氏
実はけっこう悩んでいるんです(笑)。副業の数も多くなり、それをメインにする方向も視野に入れるようになりました。現在の本業と副業のバランスを、あと5年続けるつもりはないので、起業を含めて検討している最中です。 “WILL”をどうすれば叶えられるかを、優先して考えていきたいですね。専門性を持って働けるようになれば楽しいですし、忖度せずに戦っていけますから。
(編集・取材・文:眞田幸剛)