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副業人材のみで新サービスを開発!?イーデザイン損保が社外連携に取り組むワケ

副業活用ポジション:

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東京海上グループで唯一ダイレクトチャネルに特化し、自動車保険を提供するイーデザイン損害保険株式会社。同社は、副業人材マッチングサービス「lotsful」と提携し、「イーデザイン共創スタジオ」を新たに発足してDXを推進していくことを発表しました。

イーデザイン共創スタジオ」は、多様なフィールドで専門知識を有する人材で構成されたチームとして主に事業構想段階を担い、自由な発想でサービスやプロダクトの企画・開発を目指す組織。特に、東京海上グループの中でもダイレクトチャネルに特化した同社の強みを生かして、AIや先進技術を先取りした「デジタル価値創造」を実現するためのオープンイノベーションを推進していくと言います。

人口減少や若年層のクルマ離れ、サブスク型の自動車購入モデルの登場などの社会的な変化を背景に自動車保険マーケットは今後大きく変動することが予測され、また、あらゆる分野においてデジタル消費が加速し、保険の購入も「代理店経由」から「オンライン」に移っていくなか、ネット保険マーケットはむしろ拡大すると予測しています。なぜ副業人材を活用したオープンイノベーションに取り組もうと意思決定したのでしょうか?

そこで今回は、イーデザイン損保の取締役社長である桑原茂雄氏と、今回の取り組みを牽引する取締役・藤田謙一氏とマーケティング部・竹内隆氏を取材。
――記事の前半では、保険のデジタル化を目指して推進している「DX改革プロジェクト」について、桑原氏にお話を伺いました。さらに記事の後半では、「イーデザイン共創スタジオ」の詳細について藤田氏・竹内氏にインタビューし、今回の取り組みの全容を紐解いていきます。

デジタルの力で、パーソナライズされた保険を提供する

はじめに、イーデザイン損保さんが目指す「DX改革プロジェクト」の概要をお聞かせください。

桑原氏

保険の購入が「代理店経由」から「オンライン」に移っていくなか、私たちはD2Cを加速させていきたいと考えています。具体的には、”ファンクション”ではなく”ストーリー”を訴求して、保険を購入していただくことが重要です。その実現のためには、さらなる保険のデジタル化や新たな顧客体験の創出が必要であり、それらを推進させるために「DX改革プロジェクト」を進めています。

イーデザイン損害保険株式会社 取締役社長 桑原茂雄 氏
桑原さんは2018年に社長に就任されていますが、保険のデジタル化に向けてどんな取り組みをされてきたのでしょうか。

桑原氏

就任後すぐに、社内のメンバーを15名ほど集めワークショップを開催しました。そこで、「自分たちのありたい姿」を改めて考えたのです。さまざまな意見が出てくるなかで、先ほどお伝えした新たな顧客体験の創出やファンクションではなくストーリーで保険を売ることの重要性を認識し、それをデジタルによって推進することに着手しています。

その成果の一つと言えるのが、2月にリリースされた”事故対応で利用する「パーソナライズド動画」の提供”(※)なのでしょうか? 

桑原氏

まさにその通りです。今までの保険対応は電話がメインでしたが、それだとお客様はメモがとりにくく、内容も難しいために覚えることができません。もちろん書面でも情報はお送りしますが、人が説明しているようなパーソナライズ動画があることによって、電話対応後に「説明した内容と同じ動画をお送りします」と伝えるだけで、安心いただけるようになります。
※プレスリリース:事故対応で利用する「パーソナライズド動画」の提供を開始

このパーソナライズ動画は、スタートアップとの共創で生まれたと伺いました。今後も他社などのアイデアを取り入れながら、新しい価値を生み出していくということでしょうか。

桑原氏

保険という商材を長年扱っていると、「保険は特別だ」、「ややこしいのが当たり前」という考えが、染み付いてしまうことがあります。新しいアイデアを作り出そうとしても、いつの間にか“保険の頭”になり停滞してしまうことにつながります。外部の方と一緒に考えることが私たちの学びとなり、会社が変わっていくきっかけになると考えました。

また、「DX改革プロジェクト」の一環として「イーデザイン共創スタジオ」を推進することで、さまざまな企業の現場の第一線で活躍している人材の方がどのように行動するのか?どんな視点で物事を考えているのか?といった部分を、理解することも重要だと思っています。

外部の企業や副業人材との共創で描くビジョンはありますか。

桑原氏

保険の安心感だけでなく、当社が持つデータを活用しながら事故に遭わない、起こさないという世界をお客様と一緒に実現させていきたいですね。保険という分野に閉じこもるのではなく、安心・安全を提供する、前向きな社会を作り上げるお手伝いをしていきたいと考えています。

”保険の頭”では考えつかない、新しいアイデアが続々と

イーデザイン損保さんでは、「イーデザイン共創スタジオ」という斬新な取り組みを開始されています。まず、この取り組みをスタートした背景についてお聞かせください。

藤田氏

社内でお客様の立場に立ってさまざまなアイデアを考えても、どうしても“保険の頭”になってしまいます。つまり、既存の保険の考え方から脱することができないという課題がありました。このような課題を解決するために、外部で活躍している第一線のプロフェッショナル人材のみなさんの知見を取り入れながら、新しいサービスをスピーディーに検討したいと考え、「イーデザイン共創スタジオ」を立ち上げました。

イーデザイン損害保険株式会社 取締役(マーケティング部・商品開発部担当) 
マーケティング部長  藤田謙一 氏
現在、lotsfulから3名の副業人材が「イーデザイン共創スタジオ」に実証段階からジョインしています。その3名を含め、事業開発やデザイナーなど合計で8名の社外の人材がプロジェクトを進めているとのことですが、現在はどのようなフェーズですか?

竹内氏

今年の初めから、新しいサービスを作り出すためのアイデアや企画出しをお任せしています。保険をいかに売るという目線ではなく、お客様の生活を支え、前向きなアクションをサポートできるようなサービスづくりです。

プロジェクトの進捗ですが、キックオフして議論を重ねながら、さまざまなアイデアが出てきています。今はそのアイデアをどうまとめるか、どこにフォーカスするかを考えるフェーズですね。今後、より具体的なサービス・プロダクトに、落とし込んでいきたいと考えています。

イーデザイン損害保険株式会社 マーケティング部 次長 竹内隆 氏
竹内さんはキックオフや定例会に参加していると聞きましたが、社外の方々から出てきたアイデアを見聞きして、どのように感じられたでしょうか?

竹内氏

気づきが多く、自分たちでは出てこないアイデアがたくさんありますね。限られた時間の中で、どのようにアウトプットをまとめていくかまで視野に入れて、議論していただいています。アイデアを取りまとめるPM(プロジェクトマネジメント)のポジションも社外の方に任せていますが、スムーズに進んでいますね。みなさん非常に協力的で、週に1回、1時間だけ全員が集まる定例会を毎週楽しみにしています。

プロジェクトの進捗報告を受けて、藤田さんの感想はいかがでしょうか?

藤田氏

アウトプットをいつも楽しみにしていますし、期待もしています。また、事業開発のプロセスを熟知していらっしゃる方が多いので、論議の進め方や結論までの持っていき方は、とても参考になりますね。こうした仕事の進め方もあるのかと、学ぶ部分が多いです。

今回、lotsfulからジョインした副業人材3名は、どのような観点から選ばれたのでしょうか?

竹内氏

PMのポジションをお任せしている方は、新規事業開発のプロセスを豊富にご経験されている方にしました。アイデアから企画にまとめる能力も、評価させていただきましたね。この方を軸にしながら、金融業界経験者と大手IT事業会社の経験者をアサイン。それぞれのドメイン知識・スキルが被らないように、選抜させていただきました。

通常、PMのポジションは自社の社員が担当するケースが多いかと思います。今回、PMも社外の人材に任せた狙いについてお聞かせください。

藤田氏

論議自体を完全に社外の方にお任せしたかったからです。また、論議の進め方や働き方、スタイルを学びたかったという部分も大きいですね。社員がアイデアを取りまとめると、議論を社内向けにコントロールしてしまうこともあります。そういった危険性を排除するという狙いもありました。

プロの副業人材が、全力でコミットしている

副業人材と仕事をしてみて、印象が変わった部分などはありますか?

竹内氏

PMをお任せしている方からは、フラットに色々な意見をいただきます。保険に対する「問い」のようなものをいただき、会話の中で気づきが多くありますね。ここまで私たちサイドに立って言ってくれるのかと嬉しく思っています。

藤田氏

プロジェクトに全力で関わってくれる姿を見て、正直驚いています。本業がある中で、これだけコミットしてくれるのかと。始める前やこれまでの経験からは、外部のプロフェッショナル人材はもう少しドライに関わる方が多いのかなと思っていましたが、みなさんの熱意は想像以上でした。

副業人材とコミュニケーションを取る際に、意識していることはありますか。

竹内氏

みなさん活発に議論をしてくれているので、自分のレスポンスや判断が遅れないようにしています。また、議論の最中はバイアスがかからないように、なるべく私はあえて発言しないようにしています。「このアイデアは、保険として大丈夫ですか?」といったドメインに関する質問があった際は、必要最低限の情報だけを提示して、議論の方向性を変えないように気をつけていますね。

今後、「イーデザイン共創スタジオ」は、どのように展開されていくのでしょうか。

藤田氏

今回先んじて実証を行い、上手く進んでいる手応えがありますので、他のプロジェクトでも継続していきたいですね。事業構想から次のフェーズに入れば、またそのフェーズに必要な新たな人材のアサインも検討していきます。今回の議論は社外の人材だけで行っていましたが、次の具体化するフェーズからは社員を巻き込んだ座組みも考えています。彼らと関わりながら仕事を学び、社員のレベルアップにもつなげていきたいですね。

(編集・取材・文:眞田幸剛、撮影:古林洋平)

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