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これからは「多様な雇用形態の集合体」が生き残る―”メスライオン”宇田川氏が語る「副業人材」という新たな選択肢

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「lotsful magazine」が今回お話をうかがったのは、一撃必殺のスカウト能力によりHR業界で「メスライオン」の異名を持つ、株式会社Cuore(クオーレ)代表取締役の宇田川氏です。

宇田川氏は、人材会社の人事部長として活躍されている最中に、お父様の介護を経験しました。その中で、仕事と介護の両立に悩み、一旦は介護に専念するために離職することを決意。約1年間、介護を続けた後に2020年9月に人事コンサルティング会社・Cuoreを創業。現在、宇田川氏は同社代表を務めると共に、自身もパラレルワーカーとして、経験豊かな副業人材と共にさまざまな企業の人事支援を手がけています。

介護離職から起業し、パラレルワーカーとして新たな活躍を続ける宇田川氏の経験をもとに、なぜ企業は今こそ副業人材の活用に取り組むべきなのか?――その理由をお伺いしました。

株式会社Cuore 代表取締役
宇田川奈津紀氏

旅客サービスの乗務員経験後、人材会社の営業へ転職。ヘッドハントにより介護会社へ入社するも、2年後に解散となり退職。その後、IT企業へ人事として転職。人事責任者や人事部長として中小企業からメガベンチャーを経験。2020年に人事コンサルティング会社であるCuoreを創業し、代表取締役に就任。IT企業を中心に新卒・中途採用における採用戦略の構築や採用ブランディングのコンサルティングを行なっている。

介護離職からの復帰。そして、パラレルワーカーへ

まずは宇田川さんが起業し、パラレルワーカーとして活躍するに至った経緯について教えてください。

宇田川氏

前職では、人事セミナーの講演で全国を駆け巡りつつ、人事部長としてめまぐるしく働いていました。「ワークライフバランス」ならぬ、「ワークワークバランス」的な働き方でしたね(笑)。

そんなある日、深夜に帰宅すると父が脳梗塞で倒れていて、そのまま入院してしまったんです。そこから仕事に加えて介護もしつつ、何とか1年半ほど頑張っていたのですが、心も体もボロボロになってしまって…。

会社からは「バランスを見ながら働いて問題ない」と言われたのですが、人事部長としてさまざまな物事を決断する立場にいるため、みんなに迷惑をかけたくありませんでした。そして、介護に専念するため、2019年10月に会社を辞めたんです。いわゆる「介護離職」ですね。

働いていたときは、人事部長という経営に直結する緊張感の高い仕事をしていました。しかし、いざ介護で家に入ってしまうと、話し相手がご近所さんしかいない状態となり、抜け殻のような生活になってしまったんです。

そんな時に、あるIT企業の人事責任者の方から「そんなのはおかしい。あなたの代わりはいないのだから、1時間でも2時間でもいいから経験やスキルを社内に伝えてほしい!」という連絡をいただいて。今まで人事セミナーなどで出会った企業の経営者や人事の方からも同じような言葉をもらう機会が増えていき、2020年9月に人事コンサルティングを手がける株式会社Cuoreを立ち上げました。

周囲の人からの言葉が力になったのですね。

宇田川氏

おっしゃる通りです。Cuoreという会社を作った理由は二つあります。自分が人事部長として働いていた頃は「経営陣との交渉とメンバーマネジメント…私が二人いれば…」と思ったことが何度もありました。そうした経験から、人事部長や責任者の影武者となり、現場目線で人事業務を助けていきたいと考えたことが一つ目の理由です。

一方で、超高齢化社会の日本では、今後ますます仕事と介護の両立が必要となります。そうした社会課題に目を向けていくような会社を作りたい、というのが二つ目の理由です。仕事と育児の両立には企業も注目していますが、介護まで目を向けているところはまだまだ少ないと思います。

今後、介護離職をしてしまうのは、経験豊かで責任あるポジションについている働き盛りの年代が多くなっていきます。そうした状況にある方々が介護をしながらも柔軟に働けるようにするために、企業は副業を解禁し、多様な働き方を許容していく必要があるでしょう。そうすれば、労働人口が減っていく超高齢化社会を、乗り越えられるのではないでしょうか。

企業は「多様な雇用形態の集合体」でないと生き残れない

経験豊かな人々が介護離職してしまえば、大きな経済損失になると言えます。そうした”ロス”を軽減するためにも、副業を含めた多様な働き方が必要ということですね。最近では、大企業でも副業の解禁が進んでいます。この流れに関しては、どのような見解をお持ちですか。

宇田川氏

どんどん解禁していくべきですね。日本の人口が減っていく中で、人材確保の対応策を考えていかなければなりません。正社員だけに目を向けていると、求めているポストの採用がスピーディーに進まず、その間に事業は縮小してしまい、ひいては企業の存続自体が危うくなってしまいます。副業が解禁されれば、例えば大企業の優秀な社員が転職をせずとも、他の企業で力を発揮することが可能になるのです。

そうした方々が副業人材として活躍すれば、事業もスピード感を持って推進できます。採用に時間をかけてしまえばその分、事業の成長を止めることになってしまう。そうならないためにも、副業人材を活用していくべきなのです。

しかしながら、副業解禁に二の足を踏む企業も少なくないと思います。

宇田川氏

そうですね。正社員採用で人が集まらないポストに対して、副業人材を募集してみようという発想に至らない企業がまだまだ多いのではないでしょうか。また、人事部が副業人材の活用を提案しても、上層部からなかなか許可が出ないということもあります。しかし、採用が進まなければ、事業がストップしてしまうことを認識するべきです。

宇田川さんから見て、副業人材を上手に活用していると実感される企業はありますか?

宇田川氏

一例として、ある大手IT企業様をご紹介したいと思います。同社はプロダクトベースで事業を考えているため、必要な人材がいれば雇用形態に関係なく採用を行っています。事業成長を第一に見ているので、正社員でなくとも経験豊富で優秀な人材が確保できればよいという考えで、副業人材も積極的に採り入れています。正社員採用では時間がかかると人事が判断したポジションについて、現場への転職市場の説明や交渉を行い副業での募集に切り替えたところ、わずか1週間ほどで求める人物が採用できたケースもありますね。

この企業様のように、これからの企業は「さまざまな雇用形態が集まる集合体」でないと、生き残ってはいけないでしょう。知り合いの人事部長も「今の会社の仕事が面白いので転職する気はない」と言うものの、声をかければ「他でも自身の力を発揮したい」と、私と一緒に副業人材として動いてくれます。こうした人たちが力を発揮できる企業が、成長していくのではないでしょうか。

正社員採用へのこだわりは、事業の加速をストップさせる

先ほど宇田川さんがご指摘したように、まだまだ正社員採用に固執している企業が多いように思います。副業を推進していくために、人事担当者がすべきこと/持つべき視点についてご意見をお聞かせください。

宇田川氏

これからの人事は正社員だけでなく、他の雇用形態の採用を進めていく必要があります。派遣社員や契約社員はもちろんですが、副業の割合も多くなっていくでしょう。ハイレイヤーな人ほど横スライドで転職してしまい転職市場にはなかなか出てきませんので、そういった人材を副業でアサインしていく。そして、彼らにどこまで業務を任せるか、裁量を与えるかといった判断が、これからの人事の介在価値になっていくでしょう。

事業拡大を目指す中で、雇用形態に囚われてしまうのはちっぽけな問題です。見るべき部分は「事業」と「現場」。その意識がHRに向くと、正社員採用に固執してしまうのです。これからはより現場目線で、採用を考えていかなくてはなりません。

現場にどんな人材が必要かという目線を持ち、どうやって人を集めれば事業が加速していくかという考えが、人事に求められています。優秀な人材ほど、本業で実績を上げて年収も充分にもらえるでしょう。その人にお金をちらつかせても、優秀な副業人材は集まりません。その企業におけるやりがいや更なるスキルアップ、介在価値を、しっかり伝えていくのです。

確かに「自分の経験が外でも通用するのか見てみたい」と考えている、優秀な人材は多いですね。

宇田川氏

エンジニアは副業や事業委託が、当たり前の時代になりました。それはIT業界に、エンジニアが不足しているからに他なりません。そして現在、労働人口そのものが減ってきています。

こういった現状の中で、正社員採用へのこだわりは事業の加速をストップさせる可能性があります。そして、労働人口が減っていくことにいち早く気付いた企業が、積極的に副業人材を活用し始めているのです。正社員採用以外の選択肢があることに、他の企業も目を向けるタイミングにきているのではないでしょうか。

それでは最後に、副業マッチングサービスであるlotsfulに関して、お考えをお聞かせください。

宇田川氏

最近よくlotsfulの良い評判を聞いていますよ!企業が副業を解禁させるというフェーズの次の段階として、これからは副業人材に対して、どこまで裁量を持たせるかが、課題になるのではないでしょうか。その中で、副業人材と企業の間にある壁を取り除くのが、lotsfulだと考えています。

副業を希望する人に責任とミッションを伝え、企業とのマッチングを最適化させる。こうした個人と企業をブリッジさせる役割を担っていただき、副業をさらに加速させていく存在になってほしいですね。

(編集・取材・文:眞田幸剛)

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