lotsfulロゴ

ヤマハが挑む新規事業創出―『TRANSPOSE』における副業人材活用の全貌

Shareする!

今回、「lotsful magazine」が取り上げるのは、ヤマハ株式会社における副業人材活用事例です。楽器や音響機器をはじめとする「音」にまつわる事業を展開してきた同社では、新規事業開発部を社長直轄とし、新規事業創出活動を『TRANSPOSE(トランスポーズ)』という名称で推進しています。

同部では、新規事業の立ち上げやグローバルビジネスコンテスト『TRANSPOSE Innovation Challenge』の開催など、さまざまな取り組みを行っていますが、社長直轄という独立した部署のため、既存事業の人的リソースを活用しにくいという課題がありました。そこで、2025年6月からlotsfulを活用し、「PdM(プロダクトマネージャー)」、「UXデザイナー」、「マーケティング」の3ポジションで副業人材がジョインしています。

副業人材を活用することによって、どのような成果が生まれたのでしょうか?ヤマハ株式会社の新規事業開発部の倉光大樹氏・山本雄登氏・土岐菜津美氏の3名にお話を伺いました。

ヤマハ株式会社 新規事業開発部TRANSPOSEグループ
グループリーダー 倉光大樹氏

2004年入社。カジュアルオーディオの商品企画のほか、歌って会話するコミュニケーションロボット「Charlie(チャーリー)」、音声合成技術を活用した「なりきりマイク」など多くのプロダクトやサービスを創出。2025年4月から現職。
新規事業開発やそのプロセスデザイン、社内外から新しいアイデアを集めるビジネスコンテストの開催などを担当している。

       

ヤマハ株式会社 新規事業開発部TRANSPOSEグループ
主事 山本雄登氏

2017年入社。情報システム部門でWebシステムの運用保守などを担当後、『Value Amplifier』への応募をきっかけに新規事業開発の面白さに気づき、同制度の企画運営に携わる。
現在はビジネスコンテスト『TRANSPOSE Innovation Challenge』の企画運営や、同コンテストに関わるWebサイト制作・運用を担当している。

ヤマハ株式会社 新規事業開発部TRANSPOSEグループ
主任 土岐菜津美氏

2020年入社。マーケティング統括部にて、オンライン合奏サービスアプリ「SYNCROOM(シンクルーム)」を担当。その後、ミュージックコネクト推進部にて、AI合奏技術を活用したアプリを企画・開発。サービスづくりに魅力を感じ、新規事業開発部へ。
現在は、新サービスのアプリ開発といったプロジェクトマネジメントなどを担当している。

会社情報

ヤマハ株式会社 楽器事業/音響機器事業/その他の事業
設立年 1897年(明治30年)10月12日
社員数 18,949人(ほか、平均臨時雇用者数:5,704人)
副業活用ポジション

PdM、UXデザイナー、マーケティング

副業人材は、仕様が固まる前段階から柔軟に相談できる

まずは、今回の副業人材活用の舞台となっているヤマハの新規事業創出活動『TRANSPOSE(トランスポーズ)』について教えてください。

倉光氏

ヤマハでは以前から新規事業に取り組んでいましたが、組織的に取り組み事業を育て上げる、という点では課題も多くありました。今年は新しい中期経営計画の1年目で、「Rebuild & Evolve」というスローガンを掲げました。「Rebuild」は既存事業の再構築、「Evolve」は新規事業の推進を意味しています。

既存事業と同じトーンで新規事業が語られているのはヤマハとしては珍しく、新規事業に一層ギアを上げ取り組みはじめていることの表れだと思います。

山本氏

『TRANSPOSE』始動に合わせ、2015年より始まった新プロダクトやサービスの社内公募制度『Value Amplifier』も社外も対象にしたグローバルビジネスコンテスト『TRANSPOSE Innovation Challenge』にリニューアルしています。

私は2021年から企画運営メンバーの一人として、『Value Amplifier』に参加していたのですが、当時は既存事業への比重が高く、新規事業開発が社内であまり注目されていなかったです。今回『TRANSPOSE Innovation Challenge』としてリニューアルし初年度の取り組みを進めていますが、社内の関心の高まりを実感しています。

2025年5月に発表されたヤマハの新中期経営計画「Rebuild & Evolve」。
全社をあげて新規事業を推進していこうという中で、なぜ副業人材を活用しようと思ったのですか。

倉光氏

新規事業開発部の社員は約30名。その内の5名がグローバルビジネスコンテスト『TRANSPOSE Innovation Challenge』の仕組みづくりなどを担当していますが、人手とケイパビリティがかなり不足しています。

既存事業であればプロジェクトマネージャーなど社内のリソースを調達しやすいのですが、新規事業開発部は社長直轄で独立性が強い反面、既存リソースを使いづらい側面もあります。すぐに人員を増やすことも難しいため、その解決策として副業人材を活用することにしました。

「協力会社などにアウトソースする」といった選択肢もあったかと思います。そうしなかった理由は?

倉光氏

副業人材は、プロジェクトがまだ固まっていない比較的早い段階から、柔軟に相談できる点が魅力だったためです。協力会社に依頼する場合、要件定義や見積りをある程度固めてからでないと依頼が難しいでしょう。しかし、副業人材の場合はまずは入ってもらい、相談しながら進めることができます。

副業人材の活躍によって、急ピッチでのサイト公開を実現

グローバルビジネスコンテスト『TRANSPOSE Innovation Challenge』の専用Webサイト制作において、「UXデザイナー」のポジションで副業人材を活用したと聞いています。

山本氏

世界中の企業とともに、音を起点とした新たな価値創出を目指すグローバルビジネスコンテスト『TRANSPOSE Innovation Challenge』を、2025年9月に開催することが急遽決まったという背景がありました。そうした中で、急ピッチで受け皿となるWebサイトを作る必要があったのです。

ヤマハではデザインのレギュレーションがしっかり定まっており、新規事業開発部が制作するデザインもそれに沿う必要がありました。そこで、私たち新規事業開発部とヤマハの社内デザイナーとの間に入る人材が必要だと考え、lotsfulに相談することにしました。

面接を行い、デザイン経験の豊富なTさんを採用しました。実際にプロジェクトに入ってもらうと社内デザイナーからの指摘や要求に対して柔軟に対応いただき、スケジュール通りWebサイトを公開することができたのです。他にも、コンテストで使用するチラシやバナーといったツールのデザインもお願いし、素早く対応してくれて非常に助かりました。現在もデザイン周りの依頼を続けており、継続してTさんと仕事をしています。

グローバルビジネスコンテスト『TRANSPOSE Innovation Challenge』の公式サイト全体のデザインは、副業人材の活躍によってスピーディーに仕上がった。その結果、スケジュール通りにサイトを公開することができた。
副業人材と仕事をして、気づきなどはありましたか。

山本氏

初めて副業人材と仕事をするので、業務のスピード感については感覚がわからず不安でしたが、Tさんの場合は連絡をいつでもすぐに返してくれるので全く問題ありませんでした。規模の大きなデザイン会社などに依頼していたら、ここまでスピード感を持って進めるのは難しかったかもしれません。コミュニケーションもチャットベースでスムーズでしたね。

やり取りをするにあたり、工夫した点などあれば教えてください。

山本氏

まずはキックオフミーティングで、Tさんに情報をしっかりインプットしました。その後も、定期的に会議を設けるつもりだったのですが、先ほどもお伝えした通りコミュニケーションはチャットベースで問題ありませんでした。ただし、依頼は丸投げしないように、可能な限り情報をお伝えし、デザインしてほしいイメージも私の方でモックアップを作って渡すことで、Tさんから解像度の高いデザインが返ってきました。

「PdM」、「マーケティング」ポジションで生み出された成果とは?

「PdM」ポジションにおける、副業人材の活用に関してお聞かせください。

土岐氏

新規事業の検証の一環としてサービスのMVP(Minimum Viable Product/実用最小限の製品)を進めており、アプリ開発を外部に依頼していたのですが、PdMが不在だったため副業人材のIさんに入ってもらいました。並行してゲーム企画の検討も行なっていたため、アプリ開発とゲーム業界の知見がある方を探し、バックエンドエンジニアやCTOとしても豊富なご経験のあるIさんを採用しました。

Iさんは外部の開発会社としっかり連携しながら進めてくれて、MVP開発を遅延なく進めることができました。

副業人材と仕事を進める上で、工夫した点はありますか。

土岐氏

今回のアプリ開発においては、前提として音楽的な要素への理解が必要だったので、その点は積極的にインプットするようにしました。初めて副業人材と仕事をしたため、依頼前は指示通りの業務をしていただければ十分と思っていましたが、Iさんはなんでも自分事として捉えてくれ、期待以上に積極的に動いてくれました。外部の開発会社とやり取りするのも初めてだったので、非常に心強かったですね。また、プロジェクトマネジメントという観点でもIさんから学ぶことが多く、私自身もいい経験になったと思っています。

次に、「マーケティング」ポジションにおける副業人材の活用に関してお聞かせください。

倉光氏

新規事業として生まれた『カバーダ』というサービスのテストマーケティングをすることになり、集客のためのWebサイトのブラッシュアップなどを行うため、デジタルマーケティングの知識を持った副業人材を活用したいと考えていました。そこでジョインしてもらったのが、マーケティングや事業開発の経験を持つCさんです。

Cさんには、Webサイトの文面がターゲットに訴求できているか、検索を優位にさせるにはどうするべきか、Google Analyticsの見方などのアドバイスをしていただき、サイトを改修することができました。

Cさんがジョインしたことで印象的なことがあれば、教えてください。

倉光氏

体系的なマーケティング知識が不足していたので、ステップごとにどの検証が重要か明確に示してもらえたのは非常に助かりました。また、能動的にさまざまな改善案を提案してくれて、こちらからの働きかけがなくてもプロジェクトをリードしてくれました。知識も豊富で、フェーズごとにやるべきことを順序立てて丁寧に説明してもらい、安心感がありましたね。

“歌ってみた”(自身の歌唱を録音・撮影し、カバー曲を制作すること)に活用できる伴奏音源を販売する『カバーダ』。同サービスは2025年11月末にβテストを終了。現在はサイトをクローズしている。

「ほどよい緊張感」が、副業人材活用のメリットの一つ

副業人材を活用して、改めてどんな部分にメリットがあると思いましたか。加えて、lotsfulを活用した感想を教えてください。

土岐氏

新規事業は、フェーズに応じて必要とされる専門知識が変わります。副業人材を活用することによって、各フェーズに合わせてその道のプロから柔軟にサポートが受けられるので、とても良い選択肢になると思いました。

山本氏

副業人材は、新規事業だけでなくスピード感が求められる既存事業の業務でも活用できると思います。また、副業人材の方々のスピード感に応え、最大限に活かせる体制を整えていくことの必要性も、改めて感じました。lotsfulは、コストを抑えながらも優秀な人材を迅速にマッチングしてくれ、期待していた数十倍の満足度でしたね。

倉光氏

メリットは、副業人材だからこその「ほどよい緊張感」が持てることでしょうか。協力会社などにアウトソースする場合は事前に要件をしっかり固める必要がありますし、反対に社内メンバーだけで議論すると内容がざっくりした話になりがちです。しかし、副業人材はその中間で、ある程度“生煮え”な状態からでも相談できる柔軟さがありながらも、外部の方なのである程度の要件定義は必要となり、そのバランスが絶妙だと感じています。

また、外部リソースを活用する場合、業務委託だと契約からすべて私たちが直接やりとりするので負担が大きいです。lotsfulの場合は、契約まわりも含め副業人材との間を取り持ってくれるので、非常に助かりました。

(編集・取材・文:眞田幸剛)

Shareする!

lotsfulのご利用に関して
ご不明な点がございましたら
お気軽にお問い合わせください

初期費用・成功報酬 無料

資料請求・お問い合わせ