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【対談】正能茉優×lotsful田中―これからの働き方は”スラッシュキャリア”!?

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働き方改革関連法の施行やコロナ禍におけるテレワーク推進、ジョブ型人事制度の導入企業が増加するなど、近年はHRに関わる大きな変化が注目を集めました。2021年を迎え、このような変化はますます加速していくと思われます。――そこで今回、「lotsful magazine」では、様々な分野において活躍の場を広げ2020年7月よりパーソルキャリアにジョインした正能茉優氏を迎え、lotsful代表・田中みどりとの対談をお届けします。

新卒で大手広告代理店に入社しながら、大学時代に起業したハピキラFACTORYの代表も務めつつ様々な経験を積んできた正能氏。現在は、パーソルキャリア、ハピキラFACTORY、慶應義塾大学大学院という3つの「場」で仕事をしています。新たな働き方のキーワードである”スラッシュキャリア”(※)を実現させている正能氏に、これからの働き方から副業人材としてどのようにキャリアを歩むべきかなど、自身の経験をもとにお話を伺いました。

※スラッシュキャリア……仕事や活動を複数同時に掛け持ちし、様々な分野・スキルにおいてキャリアを形成すること。SNSアカウント紹介などで、肩書やスキルを記号の「/(スラッシュ)」で区切ることに由来している。

【写真右】正能茉優(しょうのうまゆ)氏

慶應義塾大学在学中に株式会社ハピキラFACTORYとしての活動をスタート。新卒で株式会社博報堂に入社、2016年10月にソニー株式会社へ転職。新規事業・新商品を企画しながら、自社の経営にも携わる。2020年7月にパーソルキャリア株式会社に転職。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科 特任助教や内閣官房 まち・ひと・しごと創生会議の有識者委員なども務めている。

【写真左】田中みどり

新卒でインテリジェンス(現パーソルキャリア)に入社後、正社員の転職支援領域における法人営業に従事。 IT・インターネット業界を主に担当し、ベンチャー企業を中心に採用支援に携わる。 大企業とベンチャー企業の事業開発支援を行なう新規事業立ち上げを経て、副業・兼業のマッチングサービス「lotsful」を立ち上げ、代表として運営。

多様なキャリアで「オンリーワン」へ

田中

まずは正能さんのこれまでのキャリアについてお聞きしたいです。キャリアのスタートは大学在学中からですよね。なぜ、大学生の時に起業されようと考えたのでしょうか?

正能氏

きっかけは大学1年生の時、長野県小布施町でのまちづくりのインターンに参加したことですね。それを契機に、これからの地域のあり方を考える「小布施若者会議」というイベントを2012年に開催したのですが、当時はまだ地方創生といった言葉もない時代で、参加者も男性ばかりでした。でも私は、女性にも小布施町の良いところを知ってもらいたかった。そこで、小布施町の特産物である「栗鹿の子」をかわいくしてみることにしたんです。

その活動の中で、株式会社ハピキラFACTORY(以下、ハピキラ)を設立しました。もともと「起業したい」といった考えは持っていなかったのですが、自分のやりたいことを実現していく中で、結果としてそうなった感じですね。

田中

大学卒業後にハピキラとしての活動をしながら、広告代理店に就職していますが、どちらか1本に絞ろうとは思わなかった? 

正能氏

どちらも選びきれなかったというのが正直なところですね(笑)。ハピキラも大事だったのですが、当時は「大企業に入ること=人生の成功である」という古い考えも捨て切れず…。新卒では博報堂に入社しました。

他にも、私自身は仕事もプライベートもバランスよく楽しみたいタイプなので、どのようにすれば自分の1時間あたりの価値が最大化できるのかも考えていましたね。その時に考えたのは、自分の存在を、社会の中でナンバーワン・ファーストワン・オンリーワンのどこに位置付けるのかということ。自分の道を探っていく内に、「様々な経験を掛け算しながらキャリアを構築していけばオンリーワンの存在になれるかもしれない」と思い、大企業にいながらハピキラを続けようと決めたという経緯もあります。

田中

2020年7月には、転職サービス「doda」などを提供するパーソルキャリアにジョインされました。現在はどのようなプロジェクトに関わっていますか。

正能氏

Salaries.jp」 (通称:サラリーズ)という新規サービスの企画を担当しています。サラリーズは、マーケットデータに基づいたありのままの「ジョブごとの報酬水準データ」を提供するサービスです。今後、ジョブ型雇用が当たり前になっていく社会の中で、マーケットに準拠したフェアな処遇を実現することを目指しています。現在はローンチに向け、サービスそのものの企画はもちろん、マニュアルや動画の企画、法務との調整やプレスリリース作成など、サービス企画以外にも様々な領域に関わっています。この記事が出る頃にはパイロット版がローンチ予定なので、ぜひチェックしてみてください。

違和感のあるキャリアの組み合わせが、価値を生む

田中

近年、副業がとても注目されています。スラッシュキャリアを歩んできた正能さんは、副業に関してどのようにお考えですか?

正能氏

ここ数年で、副業を取り巻くキャリア観が大きく変わってきたように感じます。これまでの「ずっと一つの会社にいることが当たり前」という終身雇用を前提とした価値観から、「それだけでは生き延びることが難しい」「それだけでは面白くない」という新たな価値観が社会に浸透しつつあるのではないでしょうか。

また、副業という働き方が浸透してきた中で、「ただ複数のキャリアを組み合わせれば、価値になる」という時代は終わり、キャリアの組み合わせに新しさや「らしさ」がないと、価値になりにくい時代に突入したとも感じています。

だからこそ、キャリアを戦略的に組み合わせていく人も、これまで以上に増えていくのではないでしょうか?例えば、いい意味で違和感を持つキャリアの組み合わせ。私は「なのにキャリア」と呼んでいるのですが、もしも私が、首都圏のお菓子メーカーで会社員として商品企画に携わりながら、ハピキラで地域のお菓子をプロデュースしていたら、それこそ想定の範囲内だと思うんです。そこをややずらして、人材業界でサービスの企画をしているとなると、「え、なんで?」と興味を持ってもらえるキャリアになってくる。このように戦略的に違和感のある「○○なのに××」という形でキャリアを組み合わせることで生まれる価値や経験が、今後ますます重要になってくると思います。

田中

自分にユニークなキャリアのタグを増やしていくことで差別化し、より自由なキャリア形成を目指すという考えが素敵ですね。同時に私は、副業で新しい経験をすることで、今できることをさらに磨き強化していくことを目指す人も、どちらもいていいと思っています。これまでの副業は、時間を切り売りするお金稼ぎが中心になっていました。そうではなく、今までの経験を活かしながらも、できる領域が広がるチャレンジをする。そうやって自分のベースを膨らませていけると、価値が高められ可能性が広がりますよね。「自分のキャリアは面白みがない」「何か新しいことをしないとこれからの時代は生き残れない」など、漠然とした焦りを感じている方も、できることから一歩踏み出すことで自信にもつながると思います。また、この”スラッシュ”させるキャリアを自分で見つけることができない方もいるので、そのお手伝いをlotsfulがしていければと考えています。
副業サービスの今後の可能性に関して、正能さんが思うところがあればぜひ教えてください。

正能氏

そうですね。組織を越えた働き方というのは、これまでは、飲み会に積極的に参加していくような、自らを売り込む営業力がある人が実現しやすい傾向にあったと思います。自らを売り込んでできたつながりが、お仕事につながる。ただ、コロナ禍で飲み会や会食が激減した今、今後は「仕事のチャンスをつくれる場・サービス」を多くの人が重要視するようになってくるのではないでしょうか。逆に言うと、営業力がある人の独壇場じゃなくなる。そういう意味では、例えばちょっと口下手な、それでも才能やスキルがある人にもチャンスが訪れる面白い時代になるんじゃないかなと思っています。また、外出する機会が減り、娯楽のための選択肢が大幅に減ったことを踏まえても、副業を単なるお金稼ぎの手段ではなく、より豊かな人生を送るためのキャリア実現として考える人も増えそうですね。lotsfulのような副業サービスが重宝される時代がくるんじゃないかなと個人的には考えています。

田中

ありがとうございます。キャリアアップを目指し、やりたい領域にチャレンジすることを後押しするのがlotsfulというサービスです。登録者の中には、素晴らしいスキルや経験をお持ちの方でも、副業で自分が通用するのか不安に思っている方も多くいます。そういった方も一度副業を経験すると、自分に自信が持てるようになり、複数社を掛け持ちしながら活躍するようになっている方もいます。さらに、副業を通して、本業で勤めている会社の魅力を再発見することもあるんですね。

「企業寿命が約23年」と言われている中で、新卒から70歳まで働くとしても3回程度は転職しなければならない計算になります。大企業の場合は10年働いたら課長になれるといったこともあるでしょう。しかし、そこにしがみつくだけでなく、別の経験をまず副業でしてみればいいと思っています。

会社・肩書ではなく、個人のスキル・経験が評価される時代へ

田中

これからの時代において、副業で活躍できる人材とはどのような方だとお考えですか?

正能氏

先ほどもお話した通り、飲み会でコミュニケーションが取れれば仕事が集まるということはもうありません。以前より、ごまかしがきかない世界になっていくのではないでしょうか。大切なのは、「会ったことがない相手にも、自分の能力やスキルをしっかりと言語化して伝えられること」。そういった人材が活躍できる時代になっていくと考えています。

田中

なるほど。自分の強み・能力をきちんと理解していて他者に伝える力が重要ということですね。その力があれば、今までとは異なった環境でも、自分の能力を発揮できる可能性が広がりますね。大それたものでなくてもいいと思うので、自分の能力を活かした実績も伝えられるといいと思います。
それでは最後に、コロナ禍での働き方の変化や気づいた点などもお聞きしたいと思います。

正能氏

コロナ禍以前は、企業や組織を越えて働くには、多くの場合、物理的な移動が伴っていました。しかし、コロナ禍によってそれがなくなった。1つの場所で、いくつもの会社の仕事ができるようになると、会社に所属している、関わっているという帰属意識が薄くなっていくなと日々感じています。業務そのものに関わっているという意識がより強くなりましたね。だからこそ、これからの時代は、ますますどこの会社にいるといった肩書や立場ではなく、やってきた仕事そのものやそこで得たスキル・経験が、その人の名刺代わりになり、評価されていくのだろうと感じています。なんだか厳しい世の中ですよね。(苦笑)

田中

ありがとうございます。それでは対談の締めくくりにlotsfulに対して一言お願いします。

正能氏

企業の目線で考えると、この厳しい経済状況の中、正社員で人を雇うのは非常に大変なことだと思います。とは言え、この状況を乗り越えていくには、時代に合った組織に変化していかなければならない。その一つの手段に、lotsfulをはじめとした副業サービスを活用して、関わる人の幅を広げていくという考え方もあるのではないでしょうか。lotsfulが、はたらく人のみならず、会社や企業にとっても使いたくなるサービスになり、結果、世の中が少しでもハッピーな方向に向かってくれたらうれしいです。

(編集・取材・文:眞田幸剛、撮影:古林洋平)

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